■あらすじ
けんたの元に東京ダイビングセンターからハガキが届いた。
内容は、震災に対する見舞いと、スタッフ一同が無事であるという旨。
けんたは、お世話になった時のことに思いを馳せる。
数年前のシルバーウィーク、
三宅島を舞台に、会社の同期3人と行った二泊三日のツアー旅行である。
昨日の日記では気の向くまま、
二泊三日の旅行を書き綴っていたが、
(あまりの長文に)2日目の終了で打ち切りとなった。
本日は、その続き……旅行3日目の回想がメインである。
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■3日目『声』
朝、06:00頃だったろうか、目が覚めた。
三宅島のとある民宿である。
夕べは21:00という早い時間から寝たにも関わらず、
グッスリと眠ってしまったようだ。
こんな健康的な生活サイクル、小学生以来である。
窓からはサンサンと朝日が射している。
アシの葉の緑と、青い空。
暑いくらいの日を手のひらで感じて、
部屋の畳の匂いを吸い込む。
……良いところだな、ここ。
凄く、健やかだ。
帰るのは名残惜しい。
……こんな時、いつも思い出す事がある。
2007年11月18日
日本武道館
SIAM SHADE "HEART OF ROCK"
シャムシェイドというバンドの、
一夜限りの復活ライブである。
※当時の日記もあります
それぞれの道を歩んでいるメンバーを見て、
それでも、
その瞬間はシャムシェイドと名乗って、
“今のシャムシェイド“として最高のライブをする彼等を見て、
これからも、それぞれに進んでいくんだという彼等を見て、
思った事があります。
『同じ時間を生きてるんだから、また逢える。』
『同じ時間は戻ってこない。
それぞれに生きて
それぞれに変わってく。
それでも、
また逢えることは、素晴らしい。
本気になったら、可能性って色々あるんだから。
せっかく同じ時間に生きてるんだから。』
だから、また来よう。
良いところだから、また来よう。
まだ終わってないし
イルカに会わきゃ
隣で、やはり帰りたくないと凹む同期を励ましつつ、
朝の支度に取り掛かりました。
、
、
、
朝食を食べると、民宿から車で港へ
ここから船で、
野生のイルカに会いに、
御蔵島(みくらしま)に向かいます。
船と言っても、釣り船みたいな感じで
8人ぐらいで固まって甲板に座り、波しぶきを受けて進みます。
上下に2〜3mぐらい跳ねる、
って言葉にすると簡単だけども。
速くって、
ドカッ
と浮いて、
ザパーン
と着水して……
最初、ビビりました(笑)
でも船が好きなので、慣れれば楽しい
楽しいけれど、体が浮くと内蔵がゾクゾクします。
……痩せ我慢じゃないぞ。
小学生の時にやってた器械体操で鉄棒から落ちたのと、
仙台の八木山ベニー○ンドのバードマンスカイコースターのお陰様で、
ちょっぴり高所恐怖症なだけなんです!!
そんなこんなで船で数10分、
御蔵島に到着です。
……と、どこか港を探すでもなく、
島から数10メートルで船を停めます。
ここで、お姉さんから説明。
『この島の周りをイルカの群れが泳いでます。
船が群れを探して走りますから、
群れが見つかったら合図しますので、飛び込んで下さい!!』
そう言って、飛び込み方などの段取りを説明する。
なるほど
イルカの群れを探して、
そこに飛び込んで行って、
一緒に泳ぐわけだ
みんな、出発時にシュノーケリングの装備は整っています。
五分ほど船を走らせると、
『イルカが居たよー
合図するから飛び込む準備して
』
どこだイルカ?
これ見よがしに跳ねたり、背ビレが見えるわけではない。
みな、緊張の面持ちで身構える。
『良いよ
ゴー
ゴー
ゴー
』
とにかく水に飛び込んで、
シュノーケルに入り込んだ海水を吐き出し、
水中を見回す。
『○○さん、目の前だよ
』
なんて姉さんの指示が聞こえる。
とにかく○○さんの方へ向かうか
と、泳ぎ始めたその時
海水のザパザパという音に混じって、
水中のくぐもった……それでいて固い、ギュルルルルという音が聴こえた。
あ、15メートルくらい先の方に白っぽい何か……イルカが居る?
水面を泳いでるわけじゃないな……俺も潜水しよう
両手の平を合わせて頭の上に突き出し、
全身をうねらせてグイグイと進む
あ
今、右に3メートルぐらいのとこをイルカが泳いでった
速いな。ほんと一瞬だ。
と、前を向くと。
遠くから聴こえるような微かな、キュイーーーって音が聴こえた。
次の瞬間。
僕の左斜め下を、
ギューーン
と、
乳白色のイルカが通り過ぎて行った。
……お前、
泳ぐの、巧いな
(当たり前か)
、
、
、
、
、
船の甲板で休みながら思う。
ギュルルルルとか、
ギューーンとか
あれはイルカの声だったんだ。
とにかくイルカに逢いたくて来てみたけど
どっちかってーと、イルカに遊ばれた感じがする
俺の傍から抜き去って、
あっという間に遠ざかった白い背中が、
『どうだい?俺はこんなに速く泳げるんだぜ
』
って言ってる気がしたのだ。
俺は素直に感心してしまったわけだけども。
しかし、あれですな。
停まってる船で、
グイーーン、
グーーンと
ゆったり大きく揺られれてると(2、3メートルぐらい?)
酔います。
(船では初めて)
そして吐(中略)
、
、
、
、
そんなこんなで、
皆様グッタリしつつも満足げで、
無事に三宅島へ帰還しました。
車で民宿に戻り、
風呂を借りたり、帰り支度をする。
庭に出ると
イスとテーブルがテラスみたいになっているのを発見
実はちゃんと持ってきていたアコギを弾く。
風と緑と青空、
まぶたを閉じても、日差しが暖かくて眩しい。
すっげぇ、気持ち良い。
、
、
、
迎えの車が来た。
皆が出てきて荷物を積むまでの間、
今までお世話になったダイビングセンターの方と、
お礼がてら、話をした。
僕らがお世話になったスタッフの方々は皆、三宅島に住んでいること。
民宿と連携して、
こんな素晴らしいツアーを運営してくれていること。
本土の都会には憧れるけど、
やっぱりずっと三宅島が好きで、住んでいくだろうこと。
車には、僕の一歳下ぐらいの、若い夫婦と一緒に乗った。
彼等はダイビングが好きで、
なんと酸素ボンベを持参していた。
奥さんが大の動物好きで、
機会を見つけては、こうやって海に来るらしい。
車窓からは、
山の緑、
少しずつ薄れてく火山の爪痕、
ここで元気に過ごしてる皆さん。
ここは、時間がゆっくりだ。
時計を見なくていい。
ガタガタ揺れる車の中で、
また来るって思いながら
やっぱり今が惜しいと思った。
、
、
、
港から船に乗る。
帰りも一等船室だ。
行きの時は、
部屋の向かい側に女性三人連れ(親子と親戚みたいな雰囲気)が一緒だったが、
帰りの部屋は、僕らだけだ。
まだシルバーウィークは続くから、
戻る便には余裕があるのかもしれない。
お昼に三宅島を出て、
東京の港に戻るのは20:00頃。
アコギを弾いたり、
うたた寝をしながら過ごしていると、
空腹に気付く。
そっか、朝飯食べてから…しかも海で吐(中略)から、ずっと食べてないんだ。
船室の窓から、暗くなってく空を見てると
『なぁ、晩飯どうするよ?』
という声が上がる。
『途中の駅で焼き肉食わねぇ?
俺、良い店知ってんだ』
……なんか急に、
帰ってきたっていうか、
日常の感じが戻ってきたな(笑)
穏やかな時間が過ぎて、
馴染んだリズムが戻ってくる。
うん、
こういうのも、悪くない。
出発点の良さを知るのも、旅のうちなんだろう。
、
、
、
完/三宅島のシルバーウィーク
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長くなったけども、
無事で良かった三宅島。
東京から手軽に行けるし、
また行かなきゃな。
いやしかし、
長くてすみません
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