mixiユーザー(id:3470849)

2010年08月22日08:44

6 view

あらすじ「おたまケ池のニョロ」

明日と同じ理由で、先日書いたあらすじ(長篇バージョン)を掲載します。
全編を読んだ事がない方も、お楽しみ下さい。


あらすじ「おたまケ池のニョロ」

 荘厳なまでに綺麗な池の水底に、胸びれで
丁寧に、水ゴケを撫でている小魚が一匹。
 それは、この殿さま池のお城の庭には、似
つかわしくない、ドジョウのニョロでした。
 このニョロ。以前は池の端にある診療所で、
赤ヒゲ先生の手伝いをしていた、見習いの小
僧です。それがなぜ、こんな高貴な場所に居
るのかと言うと、あの「迷子の金魚事件」の
解決を手伝ったご褒美に、白い大鯉の殿さま
から直々に、お城の「お庭番」と言うお役目
を頂いたからなのでした。
 誰もがうらやむ大出世、ですが庭掃除にも
キリがあります。恵まれた単調過ぎる仕事に、
ニョロにはいつの間にか「飽きる」と言う、
贅沢な悩みが芽生えていたのでした。
 と、そこへ、殿さま側近の、目付けをして
いる錦鯉が現れます。そしてニョロは、殿さ
まに見込まれた「お庭番」本来のお役目を、
するよう言いつかったのでした。
 実は「お庭番」は、庭掃除をする係りでは
ありません。陰に隠れて、殿さまの知りたい
事を調べる「007」のようなお役目です。
 この、タニシに摘まれたような、降って湧
いた話に、一旦は喜ぶニョロでしたが、その
探る先が「おたまケ池」だと聞いて、恐れお
ののきました。
 なぜなら、その池は、オバケや怪物が出る
とか言われる、恐い、怖〜い池だからです。
しかし、殿さまの言う事には逆らえません。
 ニョロは、今後の身の振り方も含めて、赤
ヒゲ先生を訪ねる事にしました。そして、懐
かしい診療所で、「おたまケ池」に流れる水
の世のウワサは、本当だと確信するに至りま
す。つまり、人間達が流した毒が過去の災い
を招いて、今では『水の世』とは別の、ウワ
サの絶えない『別世界』となっていたのです。
 ニョロは、とまどいながらも、その事実と
現状を調べる為に、まずは同行する仲間を集
めようと、ご城下の五色池へと下りました。
 活き魚の目を抜くと言われる大都会の五色
池で、右も左もわからない魚のいいニョロは、
危うく騙されそうになりますが、ザリガニの
与力に出世したガニジと、その手下のハヤに
助けられます。そしてやっと、ニョロに同行
する、妙ちくりんな仲間達が揃うのでした。 
 仕事にあぶれた、赤腹イモリ夫婦のモリオ
とイモコ。缶詰めの空き缶を背負った、ガニ
ジの弟ガニゾウ。そして、道案内はガニジの
手下のハヤです。おまけに、何を考えている
のかわからない、ミドリガメのガメオまでが
加わって、総勢六匹で「おたまケ池」への冷
たい川を、登り始めるのでした。
 一行の道中は、艱難辛苦を極めます。いろ
いろな苦労をしながら、六匹は六匹なりに、
各々の役目を信じて旅をするわけですが、や
がて一つにまとまって、そしてようやく、そ
の恐い池に辿り着くと、そこには、信じられ
ないような生き物達が、静かに悲しく暮らし
ておりました。   
              
 一方、「殿さま池」のお城の武道の指南役
に大抜擢された、一本ヒゲのなまずのバズー
には、「おたまケ池」の毒で全滅した魚達の
オバケが取りついて、大騒ぎ。白い大鯉の殿
さま・鯉白丸と、血を分けた紅姫・鯉千代丸
を筆頭に、その家来達みんなの怨念が、バズ
ーを使って山を動かそうとします。
 山とは、川岸の大きな岩山の事ですが、幾
ら大なまずのバズーとは言え、動かせるわけ
がありません。
 しかし、切羽詰まったバズーに、不思議な
出来事が起こりました。子供の頃に生き別れ
た、母親と祖父が、バズーを心配して夢に出
てきたのです。そして、今や権現山の神さま
になった「爺っちゃん」に、バズーは不思議
な呪文を授かるのでした。
 そして、恐る恐る教わった呪文を唱えると、
あろう事か、大きな岩山をグラリと動かし、
川をせき止め、そして流れを変えた濁流が、
「おたまケ池」の下の「丸池」のあった湿地
を襲います。そうして、浮かばれなかった魚
達の骨を割子川に流して、さまよえるすべて
の霊を成仏させたのでした。

 ニョロが、青く青い世界の「おたまケ池」
に潜った末に、池の毒水を飲んで、わけがわ
からなくなってしまった頃。ニョロを追って、
池に飛び込んだ一行が、ニョロをつかみ上げ
た所で、湿地を襲う濁流に襲われます。
 ニョロは、白く清らかな世界で、目を覚ま
しました。そこは、自分たった一匹しかいな
い静かな世界だと知ります。そして、自分が
死んでしまった事に気がつくのです。ニョロ
は、「殿さま池」のみんなや、診療所の赤ヒ
ゲ先生や看護士のタナちゃんの元に、戻れな
くなった事を後悔しました。すると『世界』
は、ニョロを誉め、ある道筋を示したのです。
 そこには、歩きながら目覚めたバズーとモ
リオとイモコが、極楽に行く順番の列に並ん
で泳いで(歩いて)いました。ニョロが、三
途の川を渡る列の先頭に立った時、係りのカ
ニをうっかり怒らせて、『極楽払い』となっ
てしまいます。気がつくとみんなも生き返っ
て、五色池の側まで流されているのでした。
 最後に、お役目の報告をするために、お城
に上ったニョロは、はるかな年月の末に、鯉
千代丸と紅姫が、殿さま・鯉白丸の夢枕に立
った事を知ります。
「おたまケ池」の毒は、消えたわけではあり
ません。今でも恐いままでした。しかしそこ
にも、植物や小さな生き物達が、健気に生き
ているのです。そして、限り無く青く綺麗に、
穏やかな時間が流れる、『平和』な池だった。
と、ニョロは殿さまに報告するのでした。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する