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2010年03月24日06:32

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斎藤貴男『機会不平等』;終章 優生学の復権と機会不平等

293ページ
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終章 優生学の復権と機会不平等

日本の生命保険業界団体の内部向け報告書に「(今後)遺伝子情報に基づく査定を求めていくべきだ」との記述がある。「機会不平等」を是とする優生学的思想はなぜ、復権しつつあるのか。「社会ダーウィニズム」の視点から、日本の全ての「改革」の文脈を捉えなおすと――。
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295〜297ページ;“ジーンリッチ”が支配する近未来
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本書の第一章でも一部を引用した『すばらしい新世界』のテーマは、権力が人間の生殖をコントロールする近未来絵図だ。(省略)この作品は、しかし、未来を半分だけしか言い当てていないと、シルヴァー教授は指摘する。

彼によれば、人間が生殖をコントロールする力を持つという点は、まさにハックスリーの想像通りになった。だが、コントロールの主体は小説に描かれたような独裁者でも政府権力でもなく、一人一人の人間であり、カップルなのだ。

(省略)

〈実際、個人の自由を何よりも重視する社会では、生殖遺伝技術を制限する法的根拠を見つけるのはむずかしいだろう。そこにジレンマがある。それぞれの人にとっては、ごく個人的な選択であり、それで社会全体が変わるとは思えないが、いっせいにおこなわれれば、思いもよらない劇的な結果を引き起こすかもしれない。〉
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300、302ページ;ヒトゲノム計画と遺伝子差別
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すでにアメリカでは、社会生活のさまざまな局面で、個人の遺伝子情報が差別の対象にされてしまっている。

特に保険と雇用の場面で顕著に見られる。(省略)文明評論家ジェレミー・リフキン氏の『バイテク・センチュリー』(鈴木主税訳)から、アメリカの現実の一端を引く。

(省略)

ゲラー博士らの調査は、職場における遺伝子差別の現実も浮き彫りにした。それまで高い評価を得ていた労働者が、遺伝病の因子を持っていることを理由に解雇された例は枚挙にいとまがなかった。また、ノースウエスタン生命保険会社が89年に行った調査によると、400人の企業経営者のうち15%は2000年までに従業員や就職希望者に定期的な遺伝子検査を実施したい意向を示していた。
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ひえーっ、恐っげっそり


日本での遺伝子検査の例:

309ページ;十兆円市場へ
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個人を対象に遺伝子検査を行う医療機関が増えてきた。発症前診断、保因者診断、出生前診断……。
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310〜311ページ;十兆円市場へ
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信州大学の福嶋教授の言う“自己責任”、あるいは“自己決定”と呼ばれる概念が、ここで重要な意味を持ってくる。出生前診断などによって重い障害児の出生をあらかじめ回避することは、それが権力による強制でなく、各人の自由な意志の結果である限り、ナチスのイメージとともにタブー視され、口にすることも憚られた従来の優生学思想と同列に捉えるべきでないとする声が、にわかに高まってきているのだ。

“自己決定”であるからには、当然、ビジネスの対象になる。出生前診断のレベルまではいかないが、日本でもすでに、遺伝子病の因子を持っているかどうかの検査を受け付けるビジネスが展開されている。
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これは子供を作ろうとしている夫婦の遺伝子を調べるという“ビジネス”か。


313ページ;十兆円市場へ
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DNA親子鑑定ビジネスは、資料を提供した個人にとどまらず、家族全体の遺伝情報に踏み込む結果を必然的にもたらす。ここまでくれば、出生前診断も時間の問題で企業化されていくのではなかろうか。
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うーん、確かに…。

それも「優生学」なのだろうか…。

ちょっと、まともに思考できなくなってきた。ふらふら


317ページ;レッセフェール優生学
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金森助教授は、しかし、こうした批判や懸念も、新優生学が掲げる個人の“自由意志”“自己決定”のロジックを突き崩す力としては不十分であるという。新優生学の場合、ナチズム式の優生学とは反対に、批判する側が個人の自由を奪う役回りになってしまう。少なくとも現在の日本社会において、「すべり坂理論」を楯に、子供が重度の障害を持って生まれてくる可能性の大きい夫婦の出生前診断を止めさせる権利は、おそらく誰にもない。

だが、背景にあるのがアメリカの新自由主義だろうと、ナチスドイツの国家社会主義だろうと、優生学は優生学である。もたらされる結果の広がりは、ヒトラーに相当する特定の顔が見当たらない、しかし強力この上ない市場という原動力が動かす新優生学の方が深刻かもしれない。
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…。なんか寒気がしてきた。げっそり


321ページ;ノブレス・オブリージュ
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遺伝子操作と優生学をめぐる大問題に踏み込んでみたのは他でもない。私が本書で扱ってきた現代日本の機会不平等の諸相もまた、このような世界的潮流と無関係でなく、むしろ同じ目線で論じられるべきテーマではないかと考えたのである。
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うーん、確かに。。。そんな気がしてきた。


334〜335ページ;上流階級は立派な人々か
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戦争を進めた側の人々が自ら最前線に赴く行為など、人間として当たり前のことである。自らと自らの身内だけは安全圏にいて、他人を駒のように戦地に送り込んでいれば済む前提でしか物事を判断しないほうが異常なのだ。

他人には自己責任や自助努力を強いておきながら、ノブレス・オブリージュの精神を発揚してもらいたかったら見返りを寄越せ、と言わんばかりの態度にも納得しかねる。政府や自治体、政治家との距離や親譲りの土地資産など、本人の努力とは関係のない要素が成功と不成功を隔ててしまっている現実をことさらに無視し、すべてが努力の賜物のような言い方で成功者にへつらう経済学者は本当に困りものだ。既得権益が侵されるのを恐れて規制緩和に反対する人々を彼らは非難するが、甘えているのはどちらだろうか。
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ズバリ言っちゃって、かっけぇーなぁ指でOKぴかぴか(新しい)


337〜338ページ;上流階級は立派な人々か
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アメリカ人はすぐに、アジアはネポティズム(縁故主義)の社会だなどと言って軽蔑したがる。日本人でも新自由主義の“改革”論者の多くは同じようなことを言い、ただし、小渕恵三前首相の選挙区をろくに社会人経験もない26歳の次女が世襲したような、個別具体的なケースについては口をつぐんできた。

だが、アメリカの実態もこれと何ら変わらない。2000年のアメリカ大統領選挙で対決した民主党のアル・ゴア副大統領は故アルバート・ゴア上院議員の、共和党のジョージ・W・ブッシュ・テキサス州知事はジョージ・ブッシュ前大統領の、それぞれ二世議員である。彼らの娘や甥も政治家志望で、20年後には再びゴア対ブッシュの大統領選になるとさえ囁かれているのだそうだ(ルイーズ・ブランソン著、金子宣子訳「世襲化するアメリカ政治」「フォーサイト」2000年9月号)。

それもまた、「自己責任による選択の集積である自由な市場が下した最も合理的な社会の進化」だというのだろうか。
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「世襲」も「進化」…。バッド(下向き矢印)


最後に「あとがき」からも引用する。

353ページ
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以前、新聞にコラムを書いた時、あるご婦人から頂いたお手紙が、今、私の手元にある。長野県の農家に生まれたその方は早くにお父様を亡くされ、六人兄弟とともに、お母様の女手ひとつで育てられた。12歳の頃戦争が始まり、上の兄弟が次々に出征していく。

すると村の人たちに、「あの家は貧乏だ」「貧乏だ」と囁かれたそうだ。逆に金持ちの家の子にはいつまでも赤紙が来ず、それどころか絹の着物を着て“ちゃらちゃらと”村内を闊歩していたのだという。

戦時下にあっても楽しく遊んで暮らした人々がいる。片や、彼らの利益のために、生きる機会さえ奪われた人々がいた。

恨み節でもひがみ根性でもない。この手紙に綴られた究極の機会不平等こそ、むしろ人類史のほとんど全部を貫いてきた愚かすぎる価値観だった。

どれほど物質的に豊かになろうと、あんな時代にだけは戻してはならない。
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本当に酷い時代だったのだろう。俺もあんな時代は嫌だ。今のほうがましだが、本書のようなものを読んだりすると、やっぱり嫌な臭いも感じてしまう。恐ろしい。。。
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コメント

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