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2010年02月01日06:04

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斎藤貴男『機会不平等』;第三章 労組はあなたを守ってくれない

129ページ
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第三章 労組はあなたを守ってくれない

市場化する雇用環境を積極的に受け入れよう――。年俸制、リストラが進む電機・情報関連産業の労組「電機連合」の急進派委員長は「被害者的運動から創造的運動」への脱皮を唱えた。だが、その彼が、東芝の労使による非公式組織「扇会」の出身であったのが私にはきになった。
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139〜141ページ;労組が推進する“解雇のためのルール作り”
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会(電機連合)の中央委員長である鈴木勝利氏に会った。彼は日本労働組合総連合会(連合)内部では急進的改革派として知られるが、母体が現代のリーディング産業であるエレクトロニクス業界でもあり、近い将来の労働界の方向性を先取りしているとの評が専らである。

(省略)

鈴木委員長が続ける。

(省略)

「私はワークシェアリングの導入にも賛成なんです。百人の職場で一人だけ辞めさせて、残った者は賃上げするなんて時代じゃない。雇用を守るためなら、少しずつ我慢して仕事を分かち合うのも仕方ありません。

ここで問題とされるのがサービス残業ですが、僕らはそんなものはないと考えているんです。時間で働くだけなら、チャップリンの『モダン・タイムス』じゃないけど、ロボットにやらせればいい。人間の仕事である以上、こうしたい、ここまでやらせてくれといった裁量は当然でしょう。改正労働基準法で適用範囲が拡大された裁量労働制を、個人的には工場のベルトコンベアにも取り入れたいぐらいなんですよ。

そういうと悪のりする経営者が珍しくないのも事実ですが、物事すべて、光と影があります。僕に言わせれば影の部分はレアケースなので、それをもって光の部分まで否定しないでくれという気持ちです。
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「改正労働基準法で適用範囲が拡大された裁量労働制を、個人的には工場のベルトコンベアにも取り入れたいぐらいなんですよ」ってどういう意味でしょうか?意味が解りません。誰か説明していただけないでしょうか?


142〜144ページ;経営責任を追及できなかったヤマハ労組
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ヤマハは99年4月にグループ社員の役7%に当たる600人の人員削減計画を決め、7月から8月にかけて希望退職者を募っている。(省略)

電機連合傘下にあるヤマハ労組は、このリストラ計画に合意した。宮本達雄・中央執行委員長が語る。

(省略)

そこで希望退職の条件はかなりのものになった。

(省略)

思わぬボーナスを懐にして第二の人生に船出できた人々が多いということだから、希望退職募集への合意は、退職していった労働者の大方の利益になったとは言える。

(省略)

宮本委員長の物言いが鈍った。

「名誉会長の件に関しては違和感を覚えた人が多い。いやヤマハのコップの中でも通用しないと、私も受け止めています。ただ、上島さんが業績を伸ばしたのも確かな事実なんです。(省略)」

トップの経営責任が曖昧にされたままでのリストラは、展望のない、安易な人減らしでしかない。人件費の削減効果が現れるまでには時間がかかる。短期的に割増退職金の支払いコストがかさむだけでなく、中長期的に社員のモラルが低下していくようなら、最悪の結果になりかねない。
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残念ながら、モラルなんてないんじゃない?

少なくとも俺が持っているモラルとは異なる気がするな


147ページ;日経連報告と労働組合
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日立製作所のある課員が、労働組合の現状を嘆いていた。彼の危機意識は絶望に近い。

「今の組合は、経営の補助機能に成り下がってしまいました。若い人たちの大部分は、組合専従の仕事も会社人事の一つと捉えているのではないですか。かつての社会党と同様、組合は敗走を続けたあげく、経営側に完全に取り込まれ、自己崩壊への過程をまっしぐらに辿っているとしか思えないのです」
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俺もそんな風に感じたな。阿呆らしかった。


150ページ;公安警察と労働組合
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日立が「消防隊」なら、東芝は「扇会」だ。74年4月、全国の工場や事業所を網羅する非公式な労使横断結社として誕生している。

関係者たちの証言や内部資料を総合すると、「扇会」は東芝本社の勤労部が、社内の職場管理者教育を修了した“良識派”“健全派”を事業所単位で組織。“育ての親”として外部の労務コンサルティング機関「近代労使研究会議」の協力を仰ぎつつ、組合活動を誘導してきた。

東京大学の山本潔教授(後に名誉教授、労使関係論)が、内部資料をもとに「扇会」に関する詳細な論文をまとめたことがある。それによれば、件の労務コンサルティング機関が民社党(当時)右派系の民主社会主義研究会議と深く関わっていたのは明らかだとされた。
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152〜153ページ;公安警察と労働組合
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職場を左翼勢力の牙城にしたくない企業側の事情はわかる。だが、こうした“徴候”をもって、従業員を“問題者”と捉えるのでは、そこはすでに人間の働く場所ではなくなっているのではないか。自分では何も考えず、何も言わず、自らを会社と同じ価値観に染め上げて滅私奉公する“人間”だけが、好ましい労働者ということになってしまう。

80年代前半、“問題者”として扱われて上司や同僚、組合幹部らの執拗ないじめを受け、ついには暴行されて入院するまでに追い詰められた東芝の一労働者が、会社とその上司を法廷の場に訴えた事件があった。原告は府中工場(東京都)の上野仁氏で、東京地裁八王子支部は90年2月に原告勝訴の判決を言い渡した。東芝側はただちに控訴したが、翌々92年秋には取り下げ、一審判決が確定している。この間の事情を、事件に取材した「東芝府中○缶(マルカン)第四ライン」で90年の第9回潮賞ノンフィクション部門を受賞したフリー・ジャーナリストの小笠原信行氏が、次のように書いている。

〈控訴の取り下げは、社内に暗躍する会社側の秘密組織「扇会」の、憲法さえ踏みにじる非合法な活動記録が証拠資料として提出されたため、その暗部が明るみに出ることを嫌ってのことと推測されている。上野さんへのいじめ、排除の背後にどす黒い動きがあったのだ。〉(『職業としてのフリージャーナリスト』91ページ)

この権をめぐっては小笠原氏自身も嫌な体験をしていた。受賞作は慣例で潮出版社から単行本として出版される運びとなるのだが、タイトルを『塀の中の民主主義』へと変更させられ、また初版七〜八千部が通例なのに、なぜか異例の三千部に抑えられたのである。

〈そして、いよいよ奇怪なのは、私の本に限ってほとんど宣伝が打たれないことだった。(省略)

ここまで来れば、はっきり言わざるをえないかもしれない。私は大企業の圧力を感じている。〉(同書97ページ)
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アンタッチャブルですか…

権力は強力ですね…


153〜154ページ;鈴木勝利・電機連合委員長の経歴
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「扇会」を運営する一方で、東芝は警備・考案畑の警察出身者を積極的に採用し、労務担当者に登用してきた。京浜地区の7工場だけで少なくとも8人、中には盗聴法(通信傍受法)をめぐる99年の国会審議で争点の一つになった「緒方靖夫・日本共産党国際部長宅盗聴事件」に直接関与した元警察官も含まれていると、「人権を守り差別のない明るい職場をつくる東芝の会」のビラにあった。

(省略)

かつての鉄鋼産業のように、おそらくは今後、エレクトロニクス産業での労使関係が、日本労使関係全体に色濃く反映されていくに違いない。そして、電機連合の鈴木勝利委員長は、この東芝労組の出身だった。
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158〜159ページ;鈴木勝利・電機連合委員長の経歴
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鈴木委員長は率直に語ってくれた。だがどうしても解せないのは、彼の電機連合が労働者の自立を謳いながら、源泉徴収と年末調整の連動から成るサラリーマン税制の問題には頬かむりしたままでいることである。

(省略)

日中戦争が本格化した1940年に開始された所得税の源泉徴収制度は、その後の戦時体制、さらには戦後の官僚統制を支えることになる、同時期に制定されたさまざまな社会政策とともに、いわゆる“40年体制”の中核を構成している(野口悠紀雄『一九四〇年体制』など)。終戦直後の占領時代、税制にもデモクラシーの表現を求めてきたGHQ(連合国総司令部)の意向を受け入れ申告納税方式の採用に踏み切った大蔵省は、ただし源泉徴収制度は残し、また給与所得者の申告手続きは勤務先に代行させる例外を設けて、47年の改正所得税法に盛り込んだ。

これが年末調整である。(省略)日本がグローバル・スタンダードを本気で進めるつもりなら、真っ先に改めなければならないのが、このサラリーマン税制なのである(詳細は拙著『源泉徴収と年末調整』など参照)。

徴税する側にとっては効率的でも、日本でだけ異常な発達をとげた特殊な税制がどれほど個人の精神的自立を妨げ、身も心も会社に捧げる会社人間ばかりを増殖させてきたことか。納税者としての権利を自主的に失わせる効果の点で世界有数の徴税システムにメスが入れられない限り、終身雇用の崩壊は、自分では何もわからない赤ちゃんを高速道路に放り出すに等しい残酷な所業となる。
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おおっ、手厳しい意見だ。

「納税者としての権利」か…。俺も「自分では何もわからない赤ちゃん」か…


164〜165ページ;客観的評価などあり得ない
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何もかもを会社に同調できない人間は、結局、いじめられる。そして企業内労働組合はいじめられた人間を守ってくれない。管理職ユニオンのような外部の組合に相談が集中するのはこのためだ。

成果主義をどこまで論じても、結局はやはり評価の問題にたどり着く。大手企業はどこでもその認識を十分に持っていて、たとえば松下電器産業なら、「コミュニケーション・プログラム」と題された一枚のシートを年度始めに各人に配布して記入させ、本人と上司の間できり結びつつ、前述の目標管理評価制度の考課資料としている。

(省略)

いずれにせよ、年功序列だからと部下の生活を左右する人事考課に管理職がさほど頭を悩ますこともなく済まされていた時代は終わりを告げた。成果主義の下では、評価される立場以上に、評価する側もすさまじいプレッシャーに苛まれる。それに耐えるのもまた管理職の才能ということになる。
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ひえ〜っ。そんな才能、俺にはないだろうな…

客観的評価などあり得ないよ


171〜172ページ;本質的な矛盾
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日経連が両立を謳った二つの思想は、本質的な部分で矛盾している。日本的経営の基本理念なるものは、終身雇用などの制度・慣行が存在してこそ成立した。制度は解体するが理念は残し、すなわち生活の安定の見返りとしてあった滅私奉公的な忠誠心をなお従業員に求めようとする態度は虫がよすぎる。

しかも、日本的経営を支えてきた諸要素のうち、どんな場合でも経営側に有利な企業別組合だけは維持されようとしている。財界よりとされる電機連合でも、産業別組織であるだけ一定の客観性を担保されるが、個々の企業別組合は経営と一体と形容しても過言ではなくなっている。
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173〜175ページ;人らしく生きよう
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JR中央線高尾駅から徒歩で数分。沖電気工業八王子工場の正門前で、今朝も田中哲郎さん(51歳)が、ギターを弾いて、自作の歌を歌っている。

(省略)

80年6月、御用組合にしてはいけないと考えた田中さんは、組合の役員選挙に立候補した。人員合理化反対派の得票率は数%に抑えると会社側が公言しているのは承知していたが、はたして彼が立会演説会の壇上に上ると、集まっていた千人もの組合員が一斉に立ち去った。

共に闘った労働組合の仲間たちが次々に寝返り、会社に尻尾を振った。労組委員長が関連会社の社長に収まるような人事が、当たり前のようになっていた。

抵抗し続けた田中さんは、81年、営業部門への異動を拒否したことを就業規則違反に問われて解雇された。職場復帰を求める裁判も起こしたが、一、二審とも敗訴。会社や労働組合によるいじめの事実をいくら主張しても、まったく顧みられることがなかった。最高裁でも棄却されて、法的には決着してしまっている。
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労働組合が労働者を守ってくれないのは、最近始まった話ではないのだろう

仲間と思って信じちゃいけないよ…



「田中哲郎」でぐぐれ
http://www.google.co.jp/search?q=%E7%94%B0%E4%B8%AD%E5%93%B2%E9%83%8E&lr=lang_ja

田中哲朗、沖電気工業、沖電気、根津公子、東芝、人権、日の丸、君が代、差別、ギター教室、森の会、田中哲郎
http://www.din.or.jp/~okidentt/

田中哲朗 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E5%93%B2%E6%9C%97
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