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2010年01月13日10:50

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「ウキペディア」 という言い方。

  




湯のみ 新しいコトバが出てくる。どういう経緯で出てくるにせよ、

   必ずしも、うまく発音できる音の並びになっているとはかぎらない

のですね。だから、

   シミュレーション → シュミレーション
   フィーチャー → フューチャー

となってしまう。

湯のみ 軽度の 「言いにくさ」 のコトバだと、

   エレベーター → エベレーター

のように、その “危機” が表面的に隠れてしまっている場合もあります。

   …………………………

湯のみ 中国の女優 「章子怡」 が売り出したころは、

   チャン・ツィー

という発音をよく聞きました。今でも、

   チャン・ツィイー → チャン・ツィー

となることが多いと思います。

   …………………………

湯のみ 最近、よく聞く “キミョーな発音” が、

   Wikipedia (ウィキペディア) → ウキペディア

というヤツです。

湯のみ おもしろいですね。たとえば、

   ウィッキーさん −×→ ウッキーさん

とはならない。

   任天堂ウィー −×→ 任天堂ウー

とはならない。しかし、

   ウィキペディア → ウキペディア

となる。

   …………………………

湯のみ ある言語のネイティヴが、どうしても獲得できない音、というのがあります。日本語のネイティヴ、すなわち、日本人の場合、歴史的には、まず、ナニより、

   母音や / t, d, n / などに先行されない [ n ]

でした。ムズカシイ言い方ですが、カンタンに言えば、

   ten の語末のような -n

ですね。

湯のみ 中世の教養人 ── 僧侶など ── のあいだでは、おそらく、正しい中国語を話そう、という動機で [ n ] が発音された痕跡があります。たとえば、

   輪廻 りん+え → りんね
   因縁 いん+えん → いんねん
   銀杏 ぎん+あん → ぎんなん

など。仏教用語がほとんどですし、「銀杏」 などは僧侶が中国から持ち帰ったものです。

湯のみ こうした読みをするものは、多くても数十語に限られ、これが日本語の発音として一般的ではなかったことがわかります。

湯のみ たとえば、「陰陽」 の読みを 『日本国語大辞典』 から、すべて拾ってみませうか。

   ■書紀 720年 …… 陰陽師(をんみゃうし)
   宇津保 970〜999ころ …… 陰陽師書(おんやうじぶみ)
   枕 10世紀終 …… 陰陽師(おんやうじ)
   平家 13世紀前 …… 陰陽頭(をんやうのかみ)
   太平記 14世紀後 …… 陰陽寮(おんやうれう)
   どちりいなきりしたん 1592年 …… 陰陽交会(いんやうきゃうくゎい)
   元和本下学集 1617年 …… 陰陽頭 ヲンヤウノカミ
   浮世草子・傾城色三味線 1701年 …… 陰陽(おんやう)者
   浄瑠璃・当流小栗判官 1714年ごろ …… 陰陽(いんやう)
   ■物類称呼 1775年 陰陽師 をんみゃうじ

湯のみ ヨミガナが付いている例は、これで全部です。「陰陽」 を “おんみょう” と読むのが、まったく一般的でなかったことがわかりまさぁね。まあ、これは、音節末の音が -m の場合ですが。

   日葡辞書 1603〜1604 …… Rinye (リンイェ) シタ コトヲ ユウ
   浄瑠璃・出世景清 1685年 …… ゑゑりんゑしたる女
   浮世草子・諸国心中女 1686年 …… 輪廻(りんえ)し
   浮世草子・傾城禁短気 1711年 …… 輪廻(りんゑ)
   浄瑠璃・薩摩歌 1711年ころ …… りんゑふかくいふ
   談義本・田舎荘子 1727年 …… 輪廻流転(りんゑるてん)
   苔の衣 1771年ころ …… りんゑのきづなにまとはれて
   浄瑠璃・艷容女舞衣 1772年 …… 輪廻(りんゑ)
   読本・椿説弓張月 1807〜11 …… 輪廻応報(りんゑおうほう)

湯のみ この場合、「りんゑ」 と書きながら 「りんね」 と読んでいた可能性があります。(文字は “ゑ” ですが、実際の発音は ye)
湯のみ しかし、江戸の初めの 『日葡辞書』 の発音は 「リンイェ」 なんですね。連声を起こしていない。もし、当時の発音が 「リンネ」 だとしたら、見出し語の綴りは、

   Rinne もしくは Rinnhe

でなければならない。たとえば、『日葡』 では、

   Vonna 「ウォンナ」 …… 女
   Iennhonin 「ジェンニョニン」 …… 善女人
   Tennho 「テンニョ」 …… 天女

ですわ。だから、Rinye は 「リンイェ」 です。「リンネ」 でもないし、「リンニェ」 でもない。

湯のみ おそらく、江戸以降のどこかで、「リンネ」 という音にスリ替わったんでしょう。

   …………………………

湯のみ 明治以降、日本語のネイティヴが獲得した音には、

   ティ、ディ

があります。また、意外なことですが、近世に失った 「シェ」 と 「フィ」 が、外来語の影響で、きわめて最近に復活しています。

湯のみ 戦前までの世代は、 film, Philippines を、一般に、「フイルム」、「フイリッピン」 とか 「ヒルム」、「ヒリピン」 と発音していたようだし、また、「シェパード」、「シェイク」 を 「セパード」、「セーキ」 と発音していました。
湯のみ 「フィ」、「シェ」 という音は、近世に、日本語から消滅した音でした。

湯のみ 「クヮ」、「グヮ」 という音も、近世に、日本語から消滅した音ですが、これは、復活していません。

   グヮテマラ (日本語の発音は、グワテマラ or ガテマラ)
   クヮルテット (日本語の発音は、クワルテット or カルテット)

湯のみ NHK はしきりと、

   200 cc 「ニヒャクスィースィー」

と言いますが、こんな発音をする日本人はいないでしょう。 sit ski は、いつまでたっても 「シット・スキー」 です。この発音は、英語のネイティヴに聞かせたくない。

   …………………………

湯のみ 最近、

   絶望的だな

と思ったのは、

   ツイッター

という発音です。

   Twitter 「トゥウィッター」

とすべきなんでしょうが、「ツイッター」。

湯のみ これはね、

   ベタベタの昭和の発音 「ツイッギー」 Twiggy からまったく進歩していない

ことを示すものです。
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