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2010年01月03日14:34

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立花隆 他『新世紀デジタル講義』

立花隆が著した「はじめに」「序章 サイバーユニヴァーシティの試み」「第一章 情報原論」のみを読んだ。読んでいるのは平成14年11月発行の文庫本。オリジナルの単行本は平成12年7月刊行。10年も前だ。

この辺は一応自分の専門分野なので読む必要ないかなとも思うが、立花隆なのでつい古本屋で買ってしまった。そこそこ面白い。飛ばし読みでも良いだろう。OK

第一章 情報原論;131ページ
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電子式コンピュータしか知らない人は、情報とは電子式コンピュータで処理されるビット列のことだとしか考えず、コンピュータと電子回路と01のデジタル信号とは切っても切り離せない関係にあると思っているかもしれません。しかしそれは、フォン・ノイマン型といわれる現在の電子式コンピュータの持っている性格で、コンピュータが本来持っている性格ではありません。(中略)

今また、ノイマン型の持つさまざまの欠陥から、それを乗りこえるためには、ノイマン型を超えた新しいアーキテクチャのコンピュータが必要であるという考えが出てきて、1980年代から非ノイマン型の研究が広く行われています。(中略)が、なかなか、これというものができていません。まだ当分はノイマン型時代がつづくものと思われます。
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140〜143ページ
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この情報と物質というものの、まか不思議な関係に思いを及ぼすとき、ぼくが思い出してしまうのは、道元禅師『正法眼蔵』の次のくだりです。

「人のさとりをうる、水に月のやるがごとし。月ぬれず、水やぶれず。ひろくおほきなるひかりにてあれど、尺寸の水にやどり、全月も弥天(みてん)も、くさの露にもやどり、一滴の水にもやどる。さとりの人をやぶらざる事、月の水をうがたざるがごとし」

情報とは、この「人のさとり」のようなものだと思うのです。それは、物質的実体がない、人の頭の中にある情報(世界の基本的見方にかかわるパターン)にすぎないのに、確かに、人のあり方を決定的に変えるのです。

それは水に映じた月の像のように、取り出そうとしても、コンピュータのモニター上の光と影のパターン(画像の記号列)としてしか取り出せないのに、この世界の現実のあり方を変えるパワーを持つものなのです。

そういう意味で、先の引用の中にある「情報は物質・エネルギーと並んで自然を構成する二大要素のひとつである」というくだりは、実に含蓄に富んだ表現だということができます。

物質とエネルギーは別々のものと見えるが、相対論によって実は同じものであることが証明されています。物質という視点から見るかぎり、世界は「物質=エネルギー」という唯一の実体のあらわれだということです。しかし、それが世界のすべてというとそうではないわけです。

「物質=エネルギー」の他に、もうひとつ情報というものが必要なのです。世界は物質という視点から以外に、情報という視点から見る必要があるということです。物質のあり方を決定するのは情報だからです。情報は「世界を構成する二大要素の一つ」というのは、全く正しいといわざるをえません。

アリストテレスは、世界は質料と形相にわけられるといいましたが、これを現代風に翻訳すれば、世界は物質と情報にわけられるということでしょう。情報とは、形相なのです。

二十世紀の物理学は、世界の最終構成要素を素粒子とし、素粒子をフェルミオンとボソンに分けました。フェルミオンは物質粒子であり、ボソンは相互作用(力)を伝達する粒子です。物理学から見た世界は、物質と相互作用にわかれるといってもいいのです。相互作用伝達粒子とは、情報伝達粒子といってもいいのです。ここでも世界は物質と情報からできているといっていいのです。

そして、情報伝達粒子(ボソン)の代表は光なのです。光によって伝えられる情報が、世界の根本的な構成要素をなしているという見方は、神の天地創造が「光あれ」の一語からはじまったという聖書の世界観とも一致します。キリスト教にかぎらず、あらゆる神話の世界のはじまりが、光からはじまっています。光(情報)は世界のはじまりであり、世界をかくあるがごとく今も支えている、もっとも基盤的な構成要素なのです。情報原論は、情報というものをこれくらい深くとらえるところからはじめるべきです。
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おおーっ、深い電球



Amazon.co.jp: 新世紀デジタル講義 (新潮文庫): 立花 隆, 橋本 毅彦, 安田 浩, 南谷 崇, 児玉 文雄: 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4101387249

「立花隆 新世紀デジタル講義」でぐぐれ
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E7%AB%8B%E8%8A%B1%E9%9A%86+%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E8%AC%9B%E7%BE%A9

「道元禅師 正法眼蔵」でぐぐれ
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E9%81%93%E5%85%83%E7%A6%85%E5%B8%AB+%E6%AD%A3%E6%B3%95%E7%9C%BC%E8%94%B5

ノイマン型 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%B3%E5%9E%8B

フェルミ粒子 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9F%E7%B2%92%E5%AD%90

ボース粒子 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%B9%E7%B2%92%E5%AD%90
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