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2010年01月02日11:30

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森達也『下山事件(シモヤマ・ケース)』

柴田哲孝『下山事件 最後の証言〔完全版〕』を読んでいたのでこれにも興味があった。古本として購入した。

読んだのは順番通りだが、最初に「文庫版のための付記」や「解説――戦後という次空間の底知れない闇(佐野眞一)」を読んでいたら読まなかっただろうか?いや、俺も「下山病」に感染している(笑)ので読んだだろうと思う。ウインク

最初にウィキペディアからそれに関わることを引用しよう。俺が書く手間が省けて便利です。

森達也 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E9%81%94%E4%B9%9F
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2004年に発表したノンフィクション「下山事件(シモヤマケース)」の中で、ある人物が、事件に関わる自動車の車種など著者である森に詳細に語る部分が記されていた。2005年07月、森の著作の中で「彼」と匿名で登場する取材協力者であった柴田哲孝が、『下山事件 最後の証言』(祥伝社)を実名で発表。書中で森の書いた証言部分は事実ではないと指摘した。森は2006年の『下山事件』の文庫化に際し「付記」の中で、「こんな場合、おおむね語られた人よりも語った人の記憶のほうが正しい」「つまり僕は圧倒的に分が悪い」「この本に記したように柴田から聞いた記憶があるけれど、それは糺されねばならないだろう」(文庫400-401P)と、ほぼ柴田の指摘を認め、あくまでもミスに過ぎず、意図的な捏造ではないとも述べ、記憶通りに書いたことを理由に、本文自体は変更せず「謝罪はしない。なぜなら自分が間違ったことをしたとは思っていない」と述べた。文庫所収の佐野眞一の解説は、初出のPR誌「波」では、「その顛末に関しては、冒頭でも述べたように、著者自らがこれ以上ない正直さで明らかにしているので、もう問わない」と記していたが、文庫本収録時には「それについては、この本の著者がおそらく一番気にしていることなので、もう問わない」と改められている。
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矢板玄の弟である矢板康二のインタビューを引用する。

321、322ページ
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「確かにあの時代はいろんなことがあった。誰もが生き抜くことに必死だった。兄貴だって胸を張って言えないようなことをしたことはあるかもしれない。だけど人を殺めるようなことはしていないと俺は信じている。……仮にもし、仮にだけど下山事件がなかったら、今の日本はどうなっていたと思う? もしかしたらドイツや朝鮮半島のように南北に分割されていたかもしれない。少なくとも今の日本は大きく形を変えていたはずだ。結果としてそれが良かったのかどうか、俺にはわからない。でも少なくとも、今のこの豊かさは望めなかっただろう」

(中略)

矢板康二はゆっくりと視線を僕に向ける。仄かに赤みを帯びた目許が微かに潤んでいる。こんな表情は初めて見た。固く結ばれていた口許が、みるみる左右に伸びたかと思うと悪戯っ子のように綻んだ。まずい言い方をしちゃったな。まるで認めたみたいだ。そうじゃないんだよ。あくまでも仮定の話だよ。
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345ページ
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得をしたのは加賀山。この台詞は、当時の国鉄関係者の何人かが口にした。客観的にもそれは明らかだ。鉄道省から国鉄へとなるときの懸案だった組合員の大量解雇は、下山の死をきっかけに労組内の左派勢力が急激に弱体化したため、以降は順調に進めることができた。しかも空いた総裁の椅子に自分が座る。任期満了後の加賀山は、鉄道省の先輩である佐藤栄作の敷いた政界へのレールを歩むことになる。そして何よりも、加賀山は亜細亜産業とは接点があった。矢板家の後盾である迫水久常とは縁戚関係にあり、矢板玄蕃とは年賀状を交換し合う仲だった。
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この辺りが森が掴んだ自信ではないだろうか?エピローグから引用する。

391ページ
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昭和史最大の謎は解明されたのか? 客観的事実ではなく、主観的真実を掴んだという自信はある。
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「主観的真実」って何だよ(笑)

そう。この本の価値は「下山病」に感染した人間が辿る人生の自白にあると思う。



柴田哲孝『下山事件 最後の証言〔完全版〕』[2007年08月14日]
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=529533414&owner_id=7106525

「森達也 下山事件」でぐぐれ
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E6%A3%AE%E9%81%94%E4%B9%9F+%E4%B8%8B%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6

Amazon.co.jp: 下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫): 森 達也: 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4101300712
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