えー、なんとなく歩いていてみつけたポスターです。
右下隅に Victor とあって、画像ではつぶれていますけど作曲や作詞のクレジットもあるので、CDの宣伝ポスターだと思います。
基本的に画面の雰囲気からすると、夜の歓楽街・新宿を舞台にくり広げられる大人の恋愛をテーマにしたバラードかなんかかなと思います。しかし、妙にVシネテイストが強調されてしまった結果、「あてもなく上京してきて水商売をしているけどまだちょっと垢抜けない女性を毒牙にかけようとしているヒモ」のように見えなくもありません。
というわけで、画面だけでも見る側に伝えるメッセージが分裂しかけているのですが、そこにとどめを刺すのが『ラブラブ新宿土曜ナイト』というタイトルです。土曜と表記してサタデーとルビがふってあるのもポイントだと思います。
なんというか、このタイトルのせいで分裂とともにあるズレの深刻さが増しているようでもあるし、それもこれもすべてわかった上でネタでやっているように解釈できなくもありません。ただ、ネタでやっているにしても、画面にはそれを示唆する要素が一切ないので、いっそ不気味ではあります。
もっとも、いろいろネタふりした挙句、結局はその下にある防犯ポスターがオチを担当しているのかもしれません。『ラブラブ新宿土曜ナイト』のイリーガルな雰囲気との対比が見事です。
うまく説明できないので誤解されているのかもしれませんが、別につたないポスターを槍玉にあげて馬鹿にしているわけではありません。
提示された各要素の微妙なぶれが実に多様な解釈を生み出しうるということを追いかけてみたわけでして、それが意図せずになされたことならすごいし、意図してなされたことなら恐るべきことであるということなのです。初めてこのポスターを目にしたときには釘付けになり、しばらく時間がたつのも忘れて見入ってしまいました。
いわゆる「よくできた」ポスターにはそれがありません。もちろん、ポスターの役割は宣伝ですから、スマートに商品の告知をするというのがプロの仕事でしょうけれど。
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