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2009年11月14日02:33

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エンバース〜燃え尽きぬものら〜

『エンバース〜燃え尽きぬものら〜』を見てきました。
これから見に行かれる方へ。演出上、長塚さんが目立ち、長塚さんを目で追ってしまいがちになりますが、どうぞ、益岡さんにも注目して下さい。凄く、細かい演技をなさっています。

※以下、『エンバース〜燃え尽きぬものら〜』の感想を書きます。まだお芝居は続いておりますので、ネタばれがお嫌な方は読まれない方が宜しいかと存じます。

それでは、ネタばれOKの方のみいらっしゃいまし〜。

『エンバース〜燃え尽きぬものら〜』
会場:俳優座劇場

原作:シャーンドル・マーライ 脚本:クリストファー・ハンプトン 翻訳:長塚京三 演出:板垣恭一
出演:ヘンリック・・・長塚京三、ニーニ・・・鷲尾真知子、コンラッド・・・益岡徹

ザックリ粗筋。
第一次大戦のさなかのハンガリー。とある古城の一室。
舞台中央に大きな椅子。下手に華奢で美しい椅子。上手にもう1つ椅子。後ろにドレッサーのような机。壁には婦人の絵。壁には、もう1枚、昔、絵が飾ってあったような跡がある。そして、舞台後ろは、一面に窓。

冒頭。ヘンリックはドレッサーを漁り、拳銃と小さな日記のようなモノを出す。

ヘンリックは、41年ぶりに会う友人コンラッドを待っている。乳母のニーニは心配そうだ。ヘンリックは、着替えながらニーニに言う。「さあ、いよいよだ。」 ニーニはヘンリックの着替えを手伝い、本日の夕食のメニューを言う。シャンパンのコトを言うと、ニーニは言う。「クリスティナ様が甘口を全て飲んでしまった」と。ヘンリックは言う。「彼女は、シャンパンが嫌いだったのに。」と。ニーニは、ヘンリックにこう告げる。「初めて伝えるコトですが・・・。クリスティナ様は、最後に、『ヘンリック様に会いたい』と仰いました。コレはお伝えした方が宜しいと思って、お伝えしたのです。」 

古城の庭に馬車の音がする。どうやら、友人・・コンラッドが到着したようだ。ヘンリックは窓から、拳銃を馬車に向けて構える。どうやら狙いはコンラッドのようだ。やがて、拳銃から手を離し、ドレッサーの引き出しにしまう。

コンラッドが到着し、2人は再会の言葉を交わし、アブサンを飲む。
この2人は軍人で、子供の頃からの親友である。
近況を話すコンラッド。どうやらコンラッドは、今はロンドンに住んでいるが、それまでは南方(マレー半島)にいたようだ。
ヘンリックは、昔話を始める。ヘンリックの父親が、士官学校で10歳のコンラッドに出会い、コンラッドに「息子の友達になってくれないか?」と言ったコト。コンラッドは、ポーランド人で、ウィーン生まれであるらしい。どうやら、ショパンの子孫に当たるようだ。その血のせいか、コンラッドは音楽の才があり、ピアノもバイオリンも上手かった。軍隊では、いつも、ピアノを弾いて聴かせていた。ヘンリックの父は言う。「彼に、軍人は向いていない」と。
ポーランド人と知り、ヘンリックの父親は、彼に「我々とキミは違う血が流れてる。」と昔言ったコトも話すヘンリック。
ヘンリックの母親は、パリ生まれ。「ショパンはフランス人だ」と主張し、それを覆したコンラッド。飾られている肖像画はヘンリックの母親らしい。

2人は話す。どうやら、コンラッドは、昔、出奔してしまったらしい。彼は言う「出奔とはあんまりではないか。僕は正規の除隊手続きを取り、軍を辞めたのだ。」と。
ヘンリックは言う。「いや、裏切り者だ。」と。

ヘンリックは裕福な家柄(おそらく、高位の貴族であろう)。コンラッドの家は、当時貧しかった。軍隊学校への資金の工面、ヘンリック家の舞踏会に呼ばれた際の、お金なども大変だったようだ。ヘンリックは言う。「何故、私に資金援助を求めない?私は君を親友だと思っていた。でも君はそうではなかった。裕福な私のコトをずっと恨んでいたのだ。」と。

ある日の出来事。ヘンリックは趣味である狩猟をコンラッドと一緒にしていた。森の中から出て来た鹿を狙うかに見えたコンラッド。しかし、銃口は自分を狙っていた。ヘンリック「私のような、技術に拘る人間が間違えるはずはない。銃口は確かに、私を狙っていた。私は動けなくなった。」しかし、銃は発射されるコトはなく、ゆっくりと下ろされた。鹿は森の中へ。ヘンリックはその時、こう言った。「撃ち損じたな。」 コンラッドは無言だった。ヘンリックは言う。「狩りをしていて撃ち損じたモノは、必ず言い訳をするモノだ。無言というコトはこういうコトだ。『イエス』と。『私を打ち損じた』と!」激昂するヘンリック。
その翌日。彼は、軍を除隊し、出奔する。

ヘンリックには美しい妻、クリスティナがいた。彼女は音楽家の両親の娘だが、両親は病気になり、満足に演奏出来ず、今は、楽譜の写しで生計を立てていた。
このクリスティナと結婚し、新婚旅行に船で欧州を旅した。
彼女に日記帳をプレゼントしたヘンリック。ヘンリックは言う。「何でもキミの思うままに書いたら良い。」彼女は言った。「アナタがこの日記を、いつでも見て下さる・・・と言う約束の上でなら、私は喜んで書きましょう。」 彼女の日記は愛に溢れていた。たまに「我儘な王様」などとヘンリックに愛のあるイヤミを書いたりはしたが。

コンラッドが出奔した日。クリスティナは、彼のもぬけの殻の部屋を見てこう言う。「逃げたのですか。あの、卑怯者は!」
この日を境に、ヘンリックは屋敷から出て、離れに引きこもり、2度と妻に会うコトはなかった。
その8年後。妻は亡くなってしまう。壁にかけられていた絵・・もう1枚は、妻、クリスティナの肖像画だった。
ヘンリックは言う。「そういえば。彼女を連れて来たのは君だったね。・・・そうさ。分かったさ。彼女が私への愛だと思ったモノ・・・。それは、悲惨な境遇から救い出してくれた感謝の念だったのさ。愛などではい。勘違いだったのさ・・・。」
コンラッドが出奔した日。ヘンリックは妻の日記を探したが見つからなかった。「妻は・・・嘘だけはつかない女だった。」

最近のコトである。ヘンリックは妻の日記を見つける。ヘンリックはコンラッドを問い詰める。「ほら。封がしてある。この日記を読むかい?・・・2つ質問がある。1つは・・・あの猟の日、キミが私を殺そうとしたコトを、彼女は知っていたのかい?」 コンラッドは答えない。

コンラッドにもう1つ質問をするヘンリック。「私とキミとが彼女を殺したのではないのかい?彼女から逃げたキミが。彼女を顧みなくなった私が、彼女を深く傷つけ、彼女を殺したのではないのかい?私は、離れで待っていた。彼女の伝言を待っていたんだ。もし彼女が、キミを連れて来いと言えば、どんな手を使ってでも連れて来たろうし、殺せと言えば、どんな手を使ってもキミを殺したろう。離婚もしかりだ!でも、彼女は・・・何も言っては来なかった・・・。」

真実はいずこへ。ヘンリックとコンラッドの関係はどうなる・・・そんなお話。

因みに。コレ、舞台上には、益岡氏と長塚氏がいるのですが、殆ど長塚氏のみが喋ります。コンラッドは、たまに反論したり、ヘンリックの質問に答えたりするだけで。
台詞劇なので、集中して見ないといけないからか、1時間くらいで、1度休憩が入った(^_^;)。

でね。コレ・・・ヘンリックって、“ツンデレ”なんだと思うんだ。・・・いや、ふざけてるワケじゃなくて。結果、ヘンリックは、「俺、コンラッドのコト親友だと思ってたのに、コンラッドは違った。」と、「しかも、どうやら妻と密通してた。キーッ!むかっ(怒り)」って言う感情が、根本にあると思うんだ。で、41年間の煮詰めた怒りの感情で、この告白をしてると思うのだケド、つまりは「俺、愛した分、愛して欲しかったのに〜」ってコトだと思うんだ。コレがデレの部分。
で、ヘンリックは、劇中にも出てくるんだケド、「金持ちコンプレックス」があるのだな。で、コレがツンの部分だと思うんだ。「お金持ちで家柄も良い俺。でも、お金より、本当は愛が欲しかったのに、一夜にして、恋愛も友愛もなくなっちゃったYO!」ってコトだと思うんだ。

で。真面目に言うと(いや、前述も真面目に言っているのだが(^_^;))、ヘンリックのやってる行為って“両刃の剣”だよな・・・と。
コレ、“自傷行為”だよね。相手にこういう告白・・「オマエは親友じゃなかった。」って言うってコトは、つまりは、自分の内面を見て、確認する作業だから。スゲエ辛いはずなんだ、ヘンリック。でも、おそらく、妻への負い目(自分は妻を見殺しにした)から、それを止められなかったのかなぁ〜って。

どうしても、喋るから長塚さんが目立つんだケド、益岡さんが細かい表情の演技をしてるんだ。呆れたり、「それは違う!」って言う顔をしたり。あと、たまに「この電波男、何言ってんの?」ってな顔もする(少なくとも、私にはそう見えた)。

冒頭の拳銃のシーン。
私は、最初、コンラッドを殺そうとしたのかと思ったのだが・・・。ひょっとしたら、ヘンリックはコンラッドの気持ちになりたかったのかも知れない。自分を銃で撃とうとしたコンラッドの気持ちに。

少ししか出てこないニーニ役の鷲尾さんも良いです。最後、疲れきったヘンリックを抱いて「ゆっくりお休みなさいまし。」と言うシーンが好きだ。そりゃ、疲れるよな・・・。こんな自傷行為を延々やったら・・・。
ニーニへ、ヘンリックが「妻の肖像を又、飾ると良い」って言うのも好きだ。途惑いながらも嬉しそうに「はい。」と答えるニーニも良かった。少なくとも、妻への自責の念は和らいだ・・・ってコトだろうか?

コレね。あと、面白いのは、結果、妻の日記は読まないし、ヘンリックの言ってるコトが真実かどうかも良くは分からない。コンラッドは、一応「オマエの言っているコトは正しい」とは言うが、電波男に疲れて適当に返事しただけかも知れない。なので、コレは、ヘンリックの思い込みかも知れない。でも、得てして“真実”なんてそんなモノ。良く言われるように、“真実”など本当はなく、人の数だけの“事実”があるだけ。

そんなコトも思ったりしたお芝居でした。見ながら人間関係について、色々考えちゃったよ。

音楽にショパンを使ってた。最後が“別れの曲”だった。あと、照明が美しかった。
余談だケド・・・。鹿狩りが出来るってコトは、かなり良い家柄だよね。狩猟って、当時の貴族のたしなみなんだケド、家柄(爵位)で、狩れるモノって決まってるんだって。大きな獣は、良い家柄じゃないと狩れないらしい。
あと、おそらくこのお芝居、“差別的”な意味合いもあるのかな?「ポーランド人だから・・・」みたいな言い方をするところ・・とか。

で、最後の最後に物凄い、不真面目な感想。

コレ、絶対、“コンラッド×ヘンリック” だよなっ!!
(ヲタの人だけ、ひっそり意味を理解して下さい(^_^;)。あと、本当にスマン!でも、そう思っちゃったんだもの・・・。)
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