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2009年11月07日19:04

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“ねずみの三銃士”第2回企画公演 「印獣」

“ねずみの三銃士”第2回企画公演 「印獣」に行きました。
私、宮藤氏の脚本で特に好きなのが“熊沢パンキース”なのですが、それに並ぶくらい好きな本でございました。

いくつか疑問はあるんです。脚本の穴と言っても良いかも知れません。でも、それをすっ飛ばすほど、面白いお芝居だったのです。そうよね。整合性がどうとか、細かい繋がりがどうとか、そんなの気にしてつまらない芝居になるよりは、そこはすっ飛ばして、面白い本を書いた方が良いに決まってるよね。
私、岸田戯曲賞を取った『鈍獣』より、今回のお芝居の方が好きです。

そして、三田佳子さんは、本当に、心底“大女優”だと思いました。役に自分を合わせるんじゃないのね。最早、力で役を服従させて、役の方を自分に合わせてしまっている・・・そんな感じがしました。この力がないと、“大女優”とは言えないのだなぁ。

※以下、“ねずみの三銃士”第2回企画公演 「印獣」の感想を書きます。まだ上演中ですし、このお芝居はTV放送(おそらく、WOWOW)されるようですので、ネタばれがお嫌な方は、読まれない方が宜しいかと存じます。

それでは、ネタばれOKの方のみ、いらっしゃいまし〜。

“ねずみの三銃士”第2回企画公演 「印獣」
会場:パルコ劇場

作:宮藤官九郎 演出:河原雅彦

出演:三田佳子(長津田麗子)、生瀬勝久(飛竜一斗(ケイタイ小説家)、ぱっつん、中国人、イエロー、浅草)、池田成志(上原卓也(絵本作家)、でっぱ、ひかる、父、出っ歯の妻、婦長、ダース)、古田新太(浜名大介(風俗ルポライター)、母、先生、サーモン、親分)、岡田義徳(児島(編集者)、男、助監督、ツタヤ、タクヤ、子分)、上地春奈(上地(マネージャー)、ハルナ、妻、ピンク)

ザックリあらすじ。
森の中を車が進む。運転しているのは帝王出版の編集者児島だ。座席にいるのは作家らしい(1人づつ登場する。つまり別々に連れてこられている)。ケイタイ小説家の飛竜、絵本作家の上原、風俗ルポライターの浜名。この3人には、こんな内容の招待状が来ている。『夢の印税生活しませんか?』
3人は、山奥の屋敷に連れて来られる。そこには、自称「女優」の長津田麗子がいた。麗子は3人を地下室に閉じ込め、3人にハッピーターンと水しか与えず(笑)、「自分の自伝を書け」と強要する。資料はその都度渡すから・・・と。見張り役は、どうやら児島と、後に出てくる、麗子のマネージャーと自称する、沖縄弁で、意思疎通が殆ど出来ない上地という女性らしい。

ワケの分からない状態の中、少しづつ、個人の状態が分かって来る。
ケイタイ小説家の飛竜は、有名作家、飛竜孝太郎の息子。飛竜は言う「何を書いたって、俺は父親と比べられる。」飛竜は、作家では食えず、アルバイトをしている。先日は、人気ケイタイ作家の夕月ヒカルの家の引越しをしたと言う。「ケイタイ上がりのクセに、偉そうに、足の爪緑に塗って、お茶も出さねえ!」と怒る飛竜。絵本作家の上原は、「自分が本当に書きたいモノを書きたい。」と思っているようだ。絵本は糊口を凌ぐ為・・・と。でも、21年間で本を2冊しか出していないので、糊口が凌げているのか、かなり微妙だが。
風俗ライターの浜名は、借金を抱えている。ヤバイ中国人から金を借りてしまい、返さねば殺される・・と言う。
児島は、麗子に愛娘の舞を攫われ、何処かに監禁されているらしい。自叙伝が出れば、娘は解放するという約束があるらしく、児島は麗子の言うコトしか聞かないストックホルム症候群を起こしている。

3人は、諸々の事情を含み、全く知らない女優、長津田麗子の自伝を書き出す。

長津田麗子の自叙伝の為の資料を読み、自叙伝を書き出す飛竜。彼の書いた自叙伝では、麗子は、何とか頑張って17歳の頃、何言ってるか分からない(笑)沖縄出身の名女優の付き人になり、そこで、とある作家と出会い関係を持ち、その作家が監督する映画のエキストラに抜擢される。しかし、作家との愛人関係が、作家のでっぱの奥さん(笑)にバレ、奥さんは、フィルムをズタズタに切り、映画の話もなくなってしまった。

実は飛竜が書いた小説は、実話であった。作家は飛竜の父親、飛竜孝太郎。実際、当時17歳の新人女優と駆け落ちまがいのコトをし、妻と揉めたらしい。飛竜は頭を抱える。「その頃、その女優は17歳・・・。それなら納得いく。アイツは、その時の女優だ・・・。俺に復讐しようとしてるんだ・・・。」

上地が、隠し戸棚の冷蔵庫のコトを知らせ、3人で開けてみると、冷蔵庫の中から死体が出てきた。その足の爪は緑色・・・。殺されているのは夕月ヒカルではないか?との疑問が浮かぶ。自分達は、その後釜で書かされているのか?

そんな折、浜名が地下室から逃げ出すが、アッサリ捕まり戻ってくる。その時、買って来た新聞に、連載小説として『長津田麗子』の自伝小説が載っていた。しかし、作は長津田麗子。「自分達はゴーストライターじゃないか!」と騒ぎ出す3人。そんな中、上原が、小説の横に載っていた写真に気付く。「あ、コレ、カイセンジャーじゃないか!」 カイセンジャーは、海鮮をモチーフにした(って何だ!・笑)戦隊ヒーロー番組。上原は大ファンで、10歳の頃、とあるオバサンに買ってもらったカイセジャーTシャツを今も着ているくらい好きなのだ。飛竜も勿論知っていて、「あの、適役の毒マグロ貴婦人が怖いんだよな〜」と話に乗る。浜名も思い出したらしい。上原「毒マグロ貴婦人って名前がスゲエんだよな。毒にマグロに貴婦人ってな・・・あれ?」とここで気付く。
写真に載っている毒マグロ貴婦人。そこには『長津田麗子(新人)』の文字。上原「あぁ!長津田麗子って毒マグロ貴婦人だ!」 浜名「え?じゃあ、アイツ、本当に女優なんだ!」

麗子の自叙伝は続く。映画がワヤになってしまったが、麗子は、カイセンジャーの敵役のボス“毒マグロ貴婦人”として活躍していた。麗子はこの役にかけていた。魚市場で日がな一日役作りの為、マグロを見ていたコトもある(って、それ役作りに役立ったのか?・笑)。デパートの屋上のカイセンジャーショーにも出ていた。毎回、どうやって子供達を脅かそうか試行錯誤していた。そんな折、迷子が来る。靴をなくし、親とはぐれた子供だ。麗子は、何故か間違って毒マグロ貴婦人のメイクを先にしてしまい、衣装はTシャツ&チノパンという、オバチャンスタイル。手には食べかけのアメリカンドックといういでたちで、迷子と会ってしまった。麗子は迷いながらも、子供の親を探しに出かける。

その後、カイセンジャーショーが始まり、意気揚々と麗子・・毒マグロ貴婦人が出てくるが、先ほどの迷子の子供が舞台に上がる。「このオバサンは本当は、良いオバサンなんだ。僕のコトも食べなかったし、僕のお母さんも食べなかった。僕に靴も買ってくれたし、新しいカイセンジャーTシャツも買ってくれたよ。スナックコーナーでアイスだって買ってくれた。本当は良いオバサンなんだ!今は仕事で悪いコトをやってるだけなんだ。」 レンジャー達「・・・・あの・・それ、皆知ってるし・・・。」 思いっきりネタばれされた上、舞台はメチャクチャ。その場にクズ折れ、泣く麗子。テンパった麗子はカイセンピンクをボコボコに殴り、警察に捕まり、番組を降板した。

飛竜「オマエがその時の子供か!」 上原「いや・・それは良かれと思って・・・。子供がやったコトだし・・・」
どうやら少しづつ分かってきたコト。ここに連れて来られた人物は、麗子の人生に何某かの関わりがあるモノらしい。

児島が嬉しそうにやってくる。舞が解放された・・・と。しかし、その代わり、この3人の中の娘の1人を誘拐した・・・と。浜名の子供は息子。上原の娘は母親とエアギターの世界大会でフィンランド(爆笑)。・・・どうやら、子供は飛竜の子供らしい。

麗子の自叙伝は続く。戦隊モノも降板になり、途方にくれていたところを、旅芸人一座に拾われる。そこの座長と麗子は肉体関係になる。座長が「男役に徹していれば、妊娠しない!」と言ったから・・・が理由らしいが、勿論、そんなコトはなく、麗子は妊娠してしまう。座長は「うちは男の子がいないから、跡継ぎに男の子を産んでくれ」と言う、かなり身勝手な願い虚しく、生まれたのは女の子。麗子と赤ん坊は、新潟のパーキングエリアに置き去りにされる。
麗子の娘・・・仮に、雪絵とするが・・は、育ち、ステージママになった麗子は、雪絵の意思も聞かず、数々のオーディションを受けさせる。
悉くオーディションに不合格する雪絵。麗子は言う。「ええ。私は娘に愛情なんてこれっぽっちもなかった。こんな何も出来ない娘、死んでしまえば良いと思いました。娘も同じでしょう。連れまわされ、歌や踊りを強要されて、『こんな母親死んでしまえば良い』と思ったでしょう。」

児島が、ここで不安げな顔を見せる。「あの・・・雪絵って・・・架空の話ですよね?あの・・・」 上原「うん。」 飛竜「いや、そうでもなさそうだゼ。コレ、さっき、あそこで見つけたんだケド。」手にはカスタネット。カスタネットには“ゆきえ”と言う名前が書いてある。
壊れる児島。「あぁ!それで分かった、そうか・・・そうか・・・母親かぁ〜。」
資料として、娘・雪絵の日記が落ちてくる。

麗子の自伝は続く。雪絵は、高校の頃の先輩・・・児島に色々相談していた。でも、それは相談と言うよりは、児島のコトが好きで、告白の機会を伺っていたらしい。児島は、麗子と肉体関係をもつも、その後は一切雪絵の連絡には出ず、付き合う気もさらさらなかった。
傷ついた雪絵はAV女優へ。浜名が資料として見ていたAV。それに雪絵が出ていた。浜名の担当編集者だった児島はそれに気付くが、浜名は、そのAVを児島が気に入ったモノと勘違いし、AVを児島にあげる。
児島は、それをネットに流し、高校のOB裏サイトに画像付きで添付し、更に「俺の元彼女がAV女優になった。」と吹聴した。
麗子は言う。「何で、そんなコトなさったの?」 児島「あの・・・分かんなくなっちゃって・・・」 麗子「そうじゃないでしょう?」 児島「あの・・・その方が面白いと思って・・・。」 麗子「付き合ってはいなかったのよね。それを元彼女って言ったのは・・・」 児島「それも面白いかと思って!!」

浜名はAVの記事を書く為、雪絵に会いに行った。そして、浜名は、雪絵の母親が女優だと言うコトを知り、それを雑誌に書く。麗子「なんで、私の名前をイニシャルにしたの?」 浜名「それは・・・」 麗子「その方が面白いからでしょう?だって、長津田麗子なんて誰も知らないものね。その方が面白いからでしょう?」

冷蔵庫の女性の死体。この死体は、娘・雪絵の死体だった。麗子は言う「誤解しないで頂戴ね。コレはね、この子が自分から入ったの。私に怒られると思ったんでしょうね。それで、少し隠れるつもりで・・・。違うのに。誉めてあげようとしたのに。私、娘のAVも見ました。まぁ、お芝居はまだまだだったけれど、絡みって言うのかしら?生き生きしてたぁ。それを誉めてあげようと思ってここに呼んだんです。いつか親子で映画に出られれば良いねって・・・。爪はね、あの子が好きだった小説家と同じ色を塗ってあげたの。そしたら、少しくすぐったそうな顔をした気がしたの・・・。」

上原は泣くも、飛竜は麗子にこう言い放つ「あんた、ダメだね。だって、女優としても、母親としても中途半端なんだもん。そんな中途半端な奴の本なんて書きたくないね。」 
麗子は、猟銃を持ち出し、3人を脅す。「私の話を書きなさい!書かないと元が取れないじゃないの!私の話を書きなさい!」 

果たして、3人の運命は、そして麗子の自叙伝の結末は?そんなお話。

三田佳子さんがとにかく凄い。小学生、女子高生、ドサ廻り役者の男役、毒マグロ貴婦人、そして、謎の女優長津田麗子。全て衣装もそれに合ったモノを着る。
毒マグロ貴婦人なんかコスプレだもんね。それをもう、役の方が服従して三田佳子さんに合わせてるような・・・そんな気すらする大女優っぷり。ただただ圧巻。

いくつかの疑問はあるんです。
実は、飛竜には子供がいなくて、児島が電話した時、電話口で聞いた子供の泣き声は児島の子供、舞ちゃんだった・・・という設定があるのですが、舞を攫ったのは誰なのか?舞の面倒は誰が見ているのか?そもそも麗子には、何でこんなに金があるのか?とか、色々疑問はあるんです。でも、そんなモノ全部吹き飛ぶくらいの凄さと面白さ。

細かいネタも面白い。上原の妻がハマッてるモノがエアギターとか。飛竜に「そこは、嘘でも、ピアノとか、ヴァイオリンとか言えよ!エアギターって・・・。まさか俺の人生にエアギターが関わってくるとは思わなかった・・・。」爆笑。
因みに、上原は空気の読めない人物・・という設定なので、悉くKYなコトを言ったりやったりします。

飛竜だけPCじゃなくて、ケイタイが渡されたり。ケイタイ小説家はケイタイで小説書かないケドな(笑)。上原は絵本作家なので、クレヨンに画用紙で絵を描くとか。
浜名のPNが“蛤舐め太郎”など、エロパロディとか。そういう細かいギャグも好き。

上地さん・・・何処かで見た女優さんだなぁ〜と思ったら。キャラメルクラッチ(芸人トリオ)だよね!ネイティブな沖縄弁が本当に分からない。あと、飛竜に、口移しでコーラを飲ませるのも可笑しかった(何故か小説が書けたお駄賃が、食パン1枚とコーラなのだ)。

あと、思ったのだが。三田さんで、地下室とくりゃ、どうしたって三田さんの次男が三田さんの自宅の地下室で、ドラックパーティーやって捕まった時のコトを思い出すじゃん。
それも、おそらく、宮藤さんの計算の上なんだろうね。
それを計算に入れて、飛竜に「アンタ、女優としても、母親としても中途半端なんだもん。」って言わせるんだ。心憎し。
あの時、マスコミは、散々、三田さんを叩いたじゃん。「母親失格」とかサ。私ゃ「うん。母親失格だと思うケド、それが何?」と思ったモノです。「だって、三田佳子だよ?国民的大女優、三田佳子だよ?女優として超一流なんだよ?そんな人間が良妻賢母のワケねえじゃん。相手、大女優だよ?表現者として一流の人なんて、軒並みキチガイだよ。」と。

長津田麗子は、果たして中途半端な女優だったのかな?って思う。だっていつも一生懸命だったから。一生懸命やっても、上手く行かなくて、歯痒い思いして。それって、中途半端なのかな?ってね。一生懸命の部分は認めてやれよ!と。

あと「面白いからよね。」もイタイ言葉だよね。本当にそうだもん。ネットのブログ炎上なんかもそうでしょ?結果「面白いから」やるだけなんだよね。相手の気持ちなんかお構いなしに。
しかし、その反面「大部分の人は、面白いモノしか受け付けない、下衆野郎でしょ?」とも言いたくなる。それが普通だよね・・・と。

最後、麗子は児島に猟銃で撃たれ、その児島は、飛竜に撃たれ死亡。飛竜は狂ったように、麗子の自伝小説を書き出す。「女優・・・それは優れた女・・・」と。
飛竜は、分かってしまったのだろうね。この女が、「本物の女優」であると。自分のコトしか考えない、自己顕示欲の塊。そして、それは大切な女優の資質でもあると。

最後に、三田さんの毒マグロ貴婦人のダンスが素敵だったのと、「書きなたい!(変なポーズ)」も好きだったコトを付け加えておきます(笑)。
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