mixiユーザー(id:68725005)

2026年07月15日22:11

39 view

いずれくるそのとき

 父が入院したのは、もう二週間ほど前だったか。

 ベッドからトイレにたって、動けなくなり、俺が呼ばれて行って、あれこれあったあと、救急車で病院に搬送された。

 顔色も悪くないし、しゃべれないわけでもないから、これくらいで、と言われるかもしれないとは思ったんだけどね。

 ただ、今でこそずいぶんやせたけど、身長は175センチ、体重も以前なら80キロオーバーだった父は、170センチ、68キロの俺よりもだいぶ大きいのだ。体調を悪くしているのに、そーっと運ぶのは無理だった。

 結果としては脳に小さな出血が見つかり、救急車の判断は決して間違いではなかったと思う。

 小さな出血だけど、嚥下に障害が残るかもしれないので、リハビリの病院に移りましょう、と週がかわってから病院を移動した。

 移動した翌日、入院したリハの病院から電話があり、食事が進まず、CTで検査したところ、たぶんがんであろう影が見つかった。この場合、リハ病院では対応できないので、移動するかもしれない、とのことだった。

 リハの病院は二泊して元の病院に移動になった。

 検査の結果、かなり大きながんがみつかり、しかもほかに転移している可能性もあるという。

 年齢や本人の体力から考えて、手術は難しく、化学療法も負担が大きいという話だった。

 最初の段階で父とは話をして、あまり大きなことはしたくない、自然のままがいい、ということだったので、そのように主治医の先生に話す。

 ホスピスとか緩和ケア病棟を探すことになった。

 その後、すぐに状態が悪化したとの連絡があり、現状では移動も難しいので、もう少し様子をという話になったり、ここ数日はちょっとばたばたしていた。

 今は落ち着いているという。

 仕事の方も、ここしばらくは中抜けしてはあとでもどって、ということを繰り返している。

 ちょっと落ち着いたので、少しずつ父が懇意にしていた人に電話で連絡もはじめた。

 現状でお見舞いにきてもらうのは難しいが、いきなり、というのもなぁと考えたうえでのことだった。

 父ももう、82歳。

 老衰というには早いのかもしれないが、決して若いわけではない。

 いずれ、くるときではあるんだよね。

 入院になったばかりの頃、ベッドに横たわる父のそばにいると、父は少し話しづらそうに、

「長生きしても、あんまりいいことはないぞ」

と言っていたっけ。

 カイシャのあとを継いだ俺からみて、父の人生はけっこう充実したものだったろうと思う。

 最近はめっきり口数も減ったが、もう、やりきった感はあったんじゃないかな。

 あれこれ手続等をすませ、帰る前にちょっと父の手をにぎり、

「じゃあ、帰るね。またくるから」

 声をかけると父は、

「ありがとう。ありがとう」

と繰り返し言っていた。

 それは、入院のこととか、このとき俺がしたことに対してではなく、いろんなこと、これまでのすべての時間に対していっていたのかもしれない。

 ゆったりとした時間が、もう少し続いてほしいな、とは思う。
2 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年07月>
日 月 火 水 木 金 土
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 

最近の日記

もっと見る