ずーっと前だが、自宅でちょっとぼけたお母さんを介護してる人に
「先生んとこをかかりつけ医にしたいんです」と言われた。
そろそろ自宅介護が無理になって施設に入れないとダメな感じのお母さん。
ときどき少し出血あるから診察してたが、がんでなく「おむつかぶれ」であった。
このお母さんに対してワシができることはせいぜい消毒くらいなので、
「かかりつけ医にはなれないと思う」と返事した。
最近、厚生労働省から書類がきた。
「かかりつけ医を引き受ける登録をすると保険点数を高くします」
…そんなものいりません。
日本の医者の20%ちょいしか登録してないもんを、
なんで説滅危惧種産婦人科のワシが登録しなくちゃならないか、意味わからん。
そしたら直接電話連絡がきて、
「引き受ける気持ちはなくても登録だけお願いします」と言う。
かかりつけ医は実は専門の研修を受けないと登録できないんだが
「(まだ受けてないけど)これから受ける気持ちがある」だけでいいと言う。
仕方なく承諾した。
書類には「かかりつけ医」「かかりつけ医研修の受講」と
「総合診療専門医(の資格あり)」のみっつの項目があって
一つ目だけに丸をつけ、「ただし研修は未受講」と書いた。
そしたらまた連絡がきた。
「残りのふたつにも丸をつけて書類を出し直せ」という。
丸つけるもなにも、受けてない研修やもってない資格を書くわけにいかないぞ。
…で、ちょっとわかった。
今、日本政府は「とりあえずなんでも診療する医者」を作りたがっている。
医学部には「総合診療」の教育があり、総合診療科があるところが増えた。
たとえばイギリスは、どんな病気になっても
自分の「かかりつけ医」に受診しなくてはならない。
その医者で対処できるものはそこで治療を受ける。
でも、産婦人科とか脳外科とか、明らかに専門性の高い診療が必要な場合、
「かかりつけ医」が書く紹介状がないと受診できない。
産婦人科医が足りないの小児科医が減ってきたの、
外科医が大きな病院にしかいなくて開業医がいないの、
街の総合病院に受診しても小児科と産婦人科はない、とかね。
最近はまあ、ちょっとしたど田舎なら当たり前の風景です。
日本国は「そうだ、総合診療医を増やせばいい」と考えたんだね。
専門が産婦人科だろうが皮膚科眼科だろうが、
保険点数を高くしますよ、という餌を目の前につるして、
とにかく「この病院はかかりつけ医になれます」と厚生労働省ホームページに書く。
書いてしまったらこっちのもの、しめしめ。
…医者(の専門性)をバカにするのもいい加減にしろ(怒
かかりつけ医は実は休日夜間も対応できることになっているし、
自宅療養の患者に往診ができることになっている。
大病院で24時間365日呼び出され働かされて燃え尽きて開業したワシに、
そんなもんを引き受けられるわけがない。
ええいいです。
保険診療点数は低いまんまでいいです。
かかりつけ医研修は受ける気がないし、
総合診療専門医資格をとるつもりもありません。
あんまり言うならワシはクリニックを閉める。
もちろん「厚生労働省がやりたくないことを強制」するので続けられない、と
いろんなところに太字で表示し、あちこちのSNSに投稿する。
数少ない産婦人科医が厚生労働省のごり押しでまたひとりいなくなるぞ。
それでいいのか、医療行政w
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