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2025年10月24日20:16

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<国立天文台三鷹キャンパス 2024年10月19日(土)特別公開レポート> 重力波天文学 LIGO(ライゴ)について 私と第一線で活躍する本間希樹教授との会話

10月25日(土)東京都三鷹市国立天文台を中心に周辺施設が開催する「三鷹宇宙の日2025」にあわせて、電磁気学の解説、また2024年のイベント開催時の模様をレポートした。本日は2024年10月19日(土)の国立天文台三鷹キャンパスの一般公開レポートの第2章と第3章である。アインシュタインが相対性理論で予言した重力波の検出方法、またブラックホールの性質について迫っていく。第3章では、私と一線級の研究者本間希樹教授との会話内容を紹介する。

 電磁気学(1)
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 電磁気学(2)と国立天文台2024年10月19日(土)一般公開レポート 第1章 JASMIN計画
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 以下 重力波をテーマにした日記

� �2019年10月25日国立天文台一般公開 重力波天文学の幕開け
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973489656&owner_id=32437106

�◆�2019年10月25日国立天文台一般公開 本間希樹教授との会話
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973512522&owner_id=32437106

�� 2022年10月22日(土)JAXA相模原キャンパス見学 第2章 宇宙創世記に迫る原始重力波 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983677133&owner_id=32437106

�ぁ�2022年10月29日(土)国立天文台・三鷹キャンパス一般公開レポート 第2章 本間希樹教授との会話
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988535013&owner_id=32437106

�ァ�2023年9月29日付日記 1 最新天文ニュース 巨大ブラックホールの回転運動 より
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986024054&owner_id=32437106


 目次
第2章 電波望遠鏡でナノヘルツ重力波をつかむ
(1)L字型レーザー干渉計LIGOの仕組み
(2) 重力波の性質について
(3) ナノヘルツ重力波とは
第3章 本間希樹教授との会話 ブラックホールから相対性理論を語る
(1)EHTプロジェクトとは、ブラックホールシャドウ撮影について
(2) ブラックホールの歳差運動が明らかになる


       第2章 電波望遠鏡でナノヘルツ重力波をつかむ

 国立天文台の岩手県水沢VLBI観測所のコーナーでは、不思議なプロジェクトを説明するパネルが展示されていた。その名も「SKA企画」という。国立天文台水沢VLBI研究所が参加する国際プロジェクトである。南アフリカ南部のカルー盆地やオーストラリア大陸のマーチンソン平原にパラボナアンテナを設置する。街中を飛び交う電波による妨害を避けるため、土地が広くて、人里離れた砂漠が真っ先に候補に上がった。

詳細 SKAプロジェクト PDFファイル
https://www.miz.nao.ac.jp/veraserver/info/pamphlet/pdf/SKA2023_Final.pdf

 以下 参考記事 現代ビジネス 2024年12月4日
https://gendai.media/articles/-/142637

 観測に挑むのは、ナノヘルツと呼ばれる電波である。周期は1年、または数年から10数年スパンに及ぶ。その目的は、銀河中心に居座る太陽の数百億倍になる長巨大質量ブラックホールからの重力波を検出することにある。ブラックホールは、半径が小さいほど、密度が高く、周回速度も速い。密度が高いブラックホールほど、高周波の電波を出す。2010年代以降、ブラックホールから宇宙を探るプロジェクトが本格化した。


    (1)L字型レーザー干渉計LIGOの仕組み

 天文学者の間で歓喜に沸いたのは、初の重力波の検出イベントである。2015年9月14日に、アメリカのワシントン州とルイジアナ州に設置された2基のレーザー干渉計「LIGO」がとらえた。13億光年先で太陽質量36倍と29倍のブラックホール連星の合体に伴う重力波が、地球に届いた瞬間だった。衝突した2つのブラックホールは、日付にちなみ、「GW20150914」とカタログに記録された。LIGOの仕組みから、重力波イベントについて迫っていく。

 以下 詳細記事 写真掲載元 重力波の性質について 重力波イベント 大阪公立大学 重力波天文学・天体物理学研究室より
https://www.omu.ac.jp/sci/gwpa-lab/reading_materials/GW150914/index.html

 アインシュタインが相対性理論で予言していた、時空による小波を意味する「重力波」を検出するべく、装置が開発された。2002年に当時アメリカ合衆国のワシントン州とルイジアナ州にLIGOと名づけられた装置が、2台稼動していた。ワシントン州の方はハンフォード、ルイジアナ州の方はリビングストンという。当初成果が上がらず、改良を重ね、アドバンスライゴとして2015年に再稼動する。計2台のアドバンスライゴはL字型干渉計と呼ばれる。直径4kmに及ぶ2つの腕が交わる構造である。

 世紀のイベントは、日本時間2015年9月14日18時50分45秒頃に起こった。ルイジアナ州のリビングストンの検出器(LIGO Livingston Observatory: LLO)に到達、その約7ミリ秒(0.007秒)後、3000kmほど離れたハンフォードの検出器(LIGO Hanford Observatory: LHO)がキャッチした。低遅延重力波探索ソフトウェアがこの信号を3分ほどで検出する。観測を見守る研究者のパソコンには、アラートが鳴る。

 当時、太陽質量の36倍と29倍のブラックホール同士の連星が衝突合体した際、重力波が放出されたのである。リビングストンの方がわずかに到達が早かったことで、方向性はおおよそ明らかになった。波形を示すグラフにおいて、横軸が強さ、縦軸が距離であることを踏まえると、発生源は13億光年と特定された。ただし、視直径10,8度にも及ぶマゼラン銀河の方角とわかったものの、正確な位置まで特定にいたらなかった。一方で大きな成果が上がった。2つのLIGOの距離は、光の速度で10ミリ秒かかる。実際0,7mm秒の時間差があったことを踏まえると、重力波は光の速度で到達していることが判明した。


 写真=LIGOがとらえたGW20150914の波形
フォト

 もう一つ大きな進歩があった。アドバンスライゴの稼動に向けて、相対性理論から予想される連星系ブラックホールの衝突時の波形をシミュレーションしていたのである。実際信号は0,2ミリ秒にとどまったものの、一般相対性理論から期待される波形と観測された重力波波形が符合したのである。

 「成果」と発表するには、研究者の間でももう一つ大きな作業がある。2基のLIGOが、わずかなノイズを拾ったことで、重力波到来時に似た信号を示す可能性が捨てきれない。専門用語では、煩わしい雑音をフォールスアラーム(false alarm、偽警報)という。そこで、研究チームは、2015年9月12日から10月20日までに、2つの検出器が同時に稼働していたデータ16日分を解析した。その結果、ノイズによって、2015年9月13日のブラックホール合体時のイベントに似た波形が出現する可能性は、20万年に1回以下の頻度と明らかにした。2015年9月14日に拾った信号は、重力波由来と確定したのである。アインシュタインの相対性理論が、観測によって証明した瞬間だった。

   (2)重力波の性質について

リビングストンとハンフォードの2台は、重力波到来により、わずかに腕の長さが縮んだのである。重力波源となるブラックホールは、回転運動しながら衝突した。その際太陽3つ分の欠損質量が重力波として放出されたのである。後に太陽質量の62倍の一つのブラックホールになった。一連の衝突した天体イベントを日付から「GW20150914」と命名された。さて重力波の検出のメカニズムについて、その性質を理解する必要がある。例えば惑星地球と衛星月の間には潮汐力が働いている。潮汐力について、地球では目に見える形、潮の満ち引きで顕著に現れていた。地球の中心と月を結ぶ直線上の波を隆起させる。逆に地球の裏面では、潮が引いていく。

 重力波も潮汐のメカニズムと同じように時間変動を起こす。重力波は垂直な方向に伸び縮みする性質がある。たとえばデスクトップパソコンのモニターに、垂直な方向から入射すると、時間の経過にともなって、平行線上、例えばx方向に伸縮していく。モニターを基点に、x方向と直交するy方向では伸縮運動を繰り替えす。ここで直交する方向で伸縮の順番が逆転していることが潮汐との違いだった。重力波の検出は、この差動運動による2点間の距離の変化をレーザー干渉計によって精密測定する。

 レーザー干渉計では、レーザー源から発射された光がビームスプリッター(Beam Splitter, BS)で強度にして50%ずつに分かれていた。数km先の鏡(鏡1、鏡2)で反射されて戻ってくる。重力波信号が入射する前、干渉計の2本の腕の長さ(BSと鏡1もしくは鏡2の間)が等しい場合、戻って来た光は互いに破壊的に干渉し打ち消してしまう。重力波が入射すると、腕の長さが変化していく。すると、光検出器に到達するのである。光検出器はその微少な時間変動をとらえる。

 図2:レーザー干渉計による重力波検出の概念図。重力波が紙面に垂直に入射すると鏡1や鏡2の位置はビームスプリッター(BS)に対して相対的に運動する。重力波によって鏡1がBSから遠ざかるとき、鏡2は近づく。干渉計は鏡の位置の差動変動を、光検出器に到達する光の強度変化として捉える。図の構成はマイケルソン型干渉計と呼ばれる。改良型LIGOが採用した現実に近い構成については、7節の補足説明を参照。

写真左=改良前
写真右=改良後 advance LIGO
フォトフォト


問題は重力波が引き起こす2点間の距離の変化である。GW150914では改良型LIGO検出器のビームスプリッターとそれから4km離れた鏡との2点間の距離の変化は、実に陽子の大きさの200分の1程度にとどまった。このような極微の変動を捉えようとする重力波検出器は、およそ鏡の振動を引き起こす全ての雑音処理が欠かせない。熱による振動も取り除くうえで、鏡は冷却した。改良型LIGO検出器では、よりノイズを除去し、重力波を拾ったのである。

写真=ハンフォード(左側)とリビンストン(右側)にある2台の重力波検出器の鳥瞰図
フォト 

ハンフォードの検出器は、重力波信号GW150914の周波数が、0.2秒ほどの間に30Hzから、300Hzほどに高くなっていったことを示している。合体直前にある連星からの重力波の周波数は、連星の公転周期の逆数の2倍になる。つまり、GW150914では、150Hzの周波数を放射しているとき、1秒間に75回、ペアの星の周りを回っていたことになる。

写真=ハンフォードの検出器が検出した重力波信号GW150914のスペクトログラム。
フォト

合体直前には、光速の半分以上の速度に達していた。とてつもなく速く運動する物体は、ニュートン力学では適応できない。ニュートン力学によれば、公転周期の2乗は公転半径の3乗に比例する。150Hzの重力波を放射時、光速の半分を超える運動速度まで上昇する要因は、連星系のペアから与えられた運動エネルギーに他ならない。天体間の距離はおよそ350km程度であったことを示している

詳細記事 写真掲載元 詳細 PSR1913+1916について 重力波はファンタジーより
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kcy05t/nigrawave.html

 重力波の検出により、宇宙への理解が大きく深まる。なぜなら、重力波は透過力が高く、全ての物質を貫通するからである。いわゆる「マルチメッセンジャー天文学」と呼ばれる分野の確立にいたった。LIGOの開発に携わった米国の研究者3名、レイナー・ワイスバリー・バリッシュ、キップ・ソーンは、2017年にノーベル物理学賞を受賞した。


 重力波については、実のところ半世紀前に理論どおりに発生していることが突き止められていた。1974年、マサチューセッツ大学アマースト校のラッセル・ハルスとジョゼフ・テイラーが、2万1000光年離れた距離から、過剰接触中性子星の連星の動きに目を留めていた。質量は太陽の1,4倍程、推定半径は10km。それぞれの中性子星の密度は、太陽の10の15乗倍。1秒間の回転数は17回に及ぶ。一般相対論によると、 軌道周期が 1年で 76.5 マイクロ秒 減少していると予測する 。
二人は 唯一の手がかりである 電磁波パルスのみから 連星系の2つの質量、スピン速度、軌道半径、速度などの すべてのパラメーターを決定した。間接的に重力波の存在を確認した功績により、1993年にノーベル物理学賞を共同受賞した。


 (3) ナノヘルツ重力波とは 

 次にレーザー干渉計のLIGOと異なり、1年間で1回の振動、または30年に1回の振動にとどまるナノヘルツ重力波を掴むには、気の長い時間を要する。実際はパルサータイミングアレイと呼ばれる方法を利用する。中でも1秒間に1000回転以上する「ミリ秒パルサー」に候補が絞られた。長周期の重力波が通過すると、規則的に回転するパルサーの速度が落ちる。パルサーを時計代わりに利用し、周期性のずれから間接的に超大型ブラックホールの動きに伴う重力波を掴む。

 ナノヘルツ重力波は、我々の日常生活では感じられない。日々使用する電気において、東日本は50ヘルツ、対して西日本は60ヘルツの発電機を使用する。なぜ同じ日本国内で東西で別れたのか、明治時代に関東地方はドイツから関西地方は米国から輸入したことにある。スピーカーの音においては、10ヘルツから10キロヘルツまで拾う。キロヘルツとは1000ヘルツのことを差す。パソコンの演算処理速度を表示する単位となるメガヘルツは、100万ヘルツのことである。高速インターネットの周波数ギガヘルツは、10億ヘルツを意味する。キロ、メガ、ギガのような呼び方を「接頭語」という。

 写真=日常生活に使われる周波数 ドローンジャーナル 2024年10月7日12時12分
https://drone-journal.impress.co.jp/docs/words/1186173.html
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 反対にナノヘルツは、1回の振動までにかかる時間が極端にかかる。1ミリヘルツは、1000分の1回、さらに1ミリの1000分の1回は、マイクロの単位を使う。1マイクロヘルツは、1秒間に振動する回数は100万分の1回、100万秒は11日と13時間46分40秒かかる。

 さてナノヘルツは、マイクロの単位の1000分の1、「10億分の1」を表す接頭語だ。1回の振動に30年の月日を要する。

 2023年6月29日付で学術誌Astrophysical Journal Letters」に掲載された一連の論文によると、「北米ナノヘルツ重力波観測所」(NANOGrav)の研究者グループが、ナノヘルツ重力波をとらえたと発表した。68個のパルサーの残骸の信号を継続的に観測した結果、重力波由来の特徴的な信号をとらえたと成果を主張している。

 詳細 2023年の学術誌の掲載内容について ナショナルジオグラフィック 2023年7月7日付 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/070400344/

 LIGOの重力波イベントでは、わずか0,2秒にとどまった。北米ナノヘルツ重力波観測所のとらえた重力波は、約1ナノヘルツ、距離にして数光年に及ぶ。

 LIGOがとらえた重力波と比べると、途方もなくスケールが異なる。ナノヘルツ重力波は、太陽系から4,2光年離れたケンタウルス座アルファ星までの距離に及んで振動していたのである。

 写真=グリーンバーグ天文台のパラボラアンテナ 出展:(PHOTOGRAPH BY ANDREW CABALLERO-REYNOLDS, AFP/GETTY IMAGES)
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 なぜ、ナノヘルツ重力波の検出に挑むのか、既にLIGOによって、ブラックホール同士の衝突に伴う重力波は検出されていた。ナノヘルツ重力波は、遠方宇宙を探る手がかりになる。なぜなら、ビッグバンの名残となる原始背景重力波の存在を示唆しているからである。

 もっともナノヘルツ重力波と原始背景重力波を結びつける理論はない。密度が軽い、超巨大質量ブラックホールの兆候を探るうえでは役立つ。

 重力波で宇宙を探る「マルチメッセンジャー天文学」は、急速に進歩している。

  第3章 本間希樹教授との会話 ブラックホールから相対性理論を語る

 写真=2023年11月岩手県奥州市で撮影された本間希樹教授 掲載元 一般社団法人 共同通信社 https://www.kyodonews.jp/news/domestic/2024/post-72.html
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 ナノヘルツ重力波を捕えるSKAプロジェクトを紹介する同じ一室内で、テレビにも出演する天文学者本間希樹教授の姿があった。私とは2019年10月26日(土)と2022年10月29日(土)に、一般公開時に顔を合わせている。その際、私から振った話題をしっかりした口調で答えてくれた。2019年は、地球外生命について語り、恐竜絶滅後の世界に姿を消した動物達が主要テーマだった。2022年は、コロナ禍によるオンラインと直接交流の違い、またブラックホールシャドウの写真から相対性理論について語った。詳しく紹介する。

    (1)EHTプロジェクトとは、ブラックホールシャドウ撮影について

 初めに、本間教授の横から、お断りしたうえで挨拶する。「2022年にもお話をさせていただきました。ナノヘルツ重力波で宇宙を探るSKAプロジェクトについて初めて学びました」

 本間教授は物腰が低く、頭を下げてくれた。

 写真=世界6場所8台の望遠鏡をリンクさせたEHTプロジェクトの解説図 掲載元 日経新聞 2019年5月10日
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44577110Z00C19A5TJN000/
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 本間さんといえば、世界6場所8台の電波望遠鏡をつなぎ合わせて、ブラックホールシャドウを撮影する国際プロジェクトの日本人のチームリーダーを務めていた。プロジェクト名は「イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope: EHT)」という。観測波長は1,3mm帯(230ギガヘルツ)。一つのケーブルに世界に散らばった8つの望遠鏡をつなぎ合わせた。いわゆる干渉計として利用した。解像度は最大展開力に依存する。北米、ヨーロッパ、オーストラリア、南極を含め、幅広い地域に設置することにより、口径は地球サイズの1万キロメートルに及んだ。もっとも技術的に簡単ではない。8つの望遠鏡で観測する際、天候にも違いが生じる。いくら大気を通過できる電波とはいえ、微細な観測精度を要求すると、雨による水蒸気でも障害になってしまう。24時間で自転している地球において、観測天体からの光の行路にも差がある。一つ一つの望遠鏡の設置場所に届く波の位相を計算したうえで、観測後に得られたデーターを補正する作業を伴う。

 位相差については下記のサイトで書かれた式で求められる。

詳細記事  高校生から味わう 理論物理入門 位相
https://manabitimes.jp/physics/1824


 EHTのプロジェクトは、実のところ拡大を遂げていた。望遠鏡は世界6場所8台から、8場所11台へと増加したのである。望遠鏡の数が多ければ多いほど、位相差も生じなくなる。

 2019年と2022年の会話時にも、本間教授は、定常的にブラックホールを観測し、動画作成を目標にすると語っていた。

 私は、2022年時と同じく質問した。プロジェクトが撮影したブラックホールシャドウは、M87銀河中心と天の川銀河中心のいて座Aスターの2天体のみだった。「他にも巨大なブラックホールが存在します。一番有名なのは、2億1000万光年離れたかみのけ座銀河団の中心NGC4889銀河の巨大ブラックホールです。太陽質量の210億倍になりますが、対象にはならないでしょうか」

 本間教授は次のように答えた。「6000万年離れたM87銀河のブラックホールの質量は推定60億倍です。かみのけ座銀河団の方は3倍以上重いわけですけれど、距離も大きく伸びます。撮影対象にする価値はありますが、今は2つのブラックホールの継続観測が中心です」

 コロナ禍において、国際プロジェクトも一時中断を余儀なくされた。科学的にブラックホールの性質を調べる上で、観測対象が増えることに越したことはない。そのためには予算が必要だった。

 2022年10月29日(土)の会話から2年が経過して、その間大きな発見があった。当時「ブラックホールは回転していると思いますか?」と質問した。本間教授は「まったく動かないということはありません。宇宙に存在する物体は不変ということはないですからね」と答えていた。ブラックホールの回転は理論からも示唆されていた。いかに観測でとらえられるか、科学技術次第だった。


      (2)ブラックホールの歳差運動が明らかになる

 2023年9月28日に、国立天文台はホームページ上で、M87銀河のブラックホールが、歳差運動に伴い、11年周期で回転したいたことを明らかにした。本間教授自身、EHTとは別に参加する東アジアの国々による「EAVN」プロジェクトの観測により判明したのである。波長は7mm帯、EHTの波長1,3mm帯より長い分、分解能は確かに落ちる。観測実績はEAVNの方が豊富で、過去20年以上にわたるデーターから170枚の写真を取り出して、自転の向きがずれていることが分かったのである。

 2023年の特別公開時に本間教授に話す予定だったものの、私自身抽選に外れて、特別公開に参加できなかった。

 私自身も予想した出来事が、観測で証明されたことにより、達成感を味わえた。

 2024年10月19日(土)EHTが撮影した画像を見ながら、回転運動について解説してくれた。「下側が光っていますね。時空を引きずる込むように回っているのです」


 写真=M87銀河のブラックホールの姿 私には左側の第1回目2017年の撮影時の写真から解説していただいた 出展 国立天文台 2024年1月18日付
https://www.nao.ac.jp/news/science/2024/20240118-eht.html
フォト

 いわゆる慣性系の引きずり、英語では「レンズ・サーリング効果」という。アインシュタインが相対性理論で予言していた現象でもある。質量を有する物体が回転する時に周囲の空間が引きずられるように歪むと説いていた。高密度の物体により、その効果が顕著に現れる。時空を歪ませる現象を「フレーム・ドラッキング効果」ともいう。

 本間教授は「たった1枚の写真ですが、相対性理論が検証できることに魅力があります」と述べていた。

 2022年の特別公開時は、人数を大きく絞って開催し、比較的室内スペースが開いていた。今回は沢山の人が室内に待機している状況からゆっくり話している余裕はなかった。

 私は、本間教授にどうしても聞きたいことがあった。「2022年の開催時と同じく、ロシア軍によるウクライナ侵攻は続いています。新たに2023年10月7日にはガザ紛争が勃発しました」

 本間教授は黙って話を聞き、パネルを見ながらうなづく。私は続けた「コロナ禍以降、民族の分断が進んだともいわれています。実際感じることはあるでしょうか」

 本間教授によると、西欧諸国とロシアの分断は感じられたという。

 「アラブ人とユダヤ人の間はどうでしょうか。エジプトとイスラエルは確かに和平があります。その他イスラエルと国交がないアラブ諸国は数多くあります」

 ユダヤ人は、アメリカを中心に天文学会で活躍しているものの、アラブ諸国の参加はないとのことだった。

 天文学会では、国際協調が欠かせない。民族や宗教の壁を越えて、一致団結してこそ、成果が現れるのである

 私は、「来年もまたお話ができることを楽しみにしています」とお礼の言葉を述べて、その場から去っていった。

 本間教授と出会い、お話する目標を抱いて、個人的に天文学を勉強してきた。その成果を現すことができたいつになく達成感があった。

 研究者にとって喜びの一つは、自分の理論を観測によって明らかにされることにある。まさにアインシュタインの相対性理論が、科学技術の進歩によって、検証できるようになった。先代の理論を、現代の学者が受け継ぎ、応用発展させることにより、謎を解き明かす。実に学問の奥深さを感じることができた。

 写真=アインシュタイン 掲載元 sciencingstyle.com Vol.07 アルベルト・アインシュタイン・理論物理学者 2024年4月2日付
https://sciencingstyle.com/column/innovation07/ 
フォト

 文教費の削減を含め、天文学会には逆風が吹く。本間教授は、声に出して訴えることにより、研究の継続を続けてきた。世界各地で、天文学者は、好奇心を持って、今日も夜空に望遠鏡を向けている。

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