朝、仕事でカイシャの門の前に立って、オキャクサンを迎えていると、受付事務をお願いしているAsmさんが電話の子機を持って走ってきた。
神妙な顔で、
「近隣の方からお電話です。クレームとのことです」
立場上、そういうのを受けるのは仕事だ。
出ると、俺と同世代以上の雰囲気の女性が、怒気をはらませて話した。
うちのカイシャの空調設備がうるさい。
去年の12月から、急にうるさくなった。
管理会社を通じで連絡しているし、自分も電話したことがある。
ここしばらくは暑さで窓を閉め切っていることもあったが、いっこうにかわっていない。
どういうことか、という話。
何もしていなかったわけじゃないんだけどね。
声に聞き覚えはあったし、そのときも、管理会社さんにも俺からお詫びしていた。
業者さんの方にみてもらうと、たしかに古くなっている室外機はやや音が大きくなっているが、こればっかりは個人の感覚のちがいもあるし、とあまり具体的な対応にはのってくれなかった。
なにもしないわけにもいかず、といって、予算も立てていないのにエアコンを替える算段もたたず、音が大きいエアコンは使わないという方向で対応していた。
何もしていなかったわけではなく、できる対応を探しつつ、一部は稼働させない対応もしている旨、話したんだけどね。
相手の女性はけっこう激しく怒っていて、訴える云々の話も出てきた。
「ほんとにうるさいんです。嘘だと思うなら、マンションの駐車場か、裏の畑の方に出てきて、聞いてみてください」
「え?裏の畑ですか?」
うちのカイシャ、古くはあるが、敷地はそこそこ広い。
2階から3階だての建物が3つあり、これまでクレームの対象となっているのはマンションと隣接している新館と呼ばれる建物だと思っていた。
でも、電話の相手が言う畑が近いのは、本館の方だ。
「ちょっと待ってください。うるさいのは、マンション側とくっついているところじゃないですか?」
話をしていくと、どうもクレームの対象だったのは、別の建物だったようだ。
そちらの建物は、先方のおっしゃる12月に、全館のエアコンを入れ替えていた。ただ、機械を新しくしている以上、音が大きくなっているとは考えづらかったのと、その周辺は決して建物が隣接している状態ではなかったので、そこだとは思わなかった。
話をしていると、最初のうちけっこう温度が高かった先方の語調も、落ち着いたトーンにかわっていった。
「おたくのエアコンの音としか思えないんですけどね。勘違いかもしれませんけど。もう少し、調べるようにはしてみますが・・・」
「いえ、疑っているわけではないです。こちらが認識していたのとは別のところだったようなので、あらためて対応させてもらいます」
電話を切ってから、建物の裏に行き、あれこれみてみたら、たしかに高周波っぽい響きが耳障りになることがあった。エアコンの稼働が高まったタイミングとかかなぁ。ずっと、高周波が鳴り続けているわけじゃないんだけどね。
さらにいえば、少し離れたときの方が、音は耳障りになっていったのだ。
前は、室外機の音って、気にし始めると・・・と思ったものだけど、これはそうもいっていられない。
個室用のものではなく、大規模施設の大きい機械だからね。
察するに、機械を新しくしたときに、周辺のガラクタを整理してきれいにしたため、かえって音が反響するようになっているように思われた。
機械をいれてくれた業者さんにみてくれるよう連絡すると同時に、いつも施設内の修繕とかみてくれているKさんに相談してみた。
しばらくあれこれ調べたあと、Kさんは
「室外機のまわりにウレタンの防音壁、衝立にしてみるんで、それでちょっと様子をみてください」
とのことだった。
以前は大丈夫だったわけだから、反響を抑えることができれば、なんとかなるんじゃないかなぁとは思った。
ふぅ。
今回のことをふりかえってみて思った。
もちろん、問題は問題としてあるんだけどさ。
困っているのでなんとかしてくれ、と言っても相手が無視していると思うと、腹も立つだろう。
でも、話をしながら、まがりなりにも努力していることが伝われば、感情的な部分はある程度抑えてもらえるんじゃないかな。
対応しているつもりで、相手が求めているのとは別のところで努力していたわけだから、それは向こうも腹が立っただろう。
話しているうちに、もういいとは言わないにしても、感情的な部分である程度、大人の対応をしてくれたことは、やはりそのあたりの伝わり方というものがあったんじゃないかな。
仕事って、大なり小なり、そういった細かいずれをちょっとずつ調整していくものではあるんだろうけどね。
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