『チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ』読了。
キングの中編集。二編が収録。
『ハリガンさんの電話』は、ちょっとヘンクツな金持ちのおじいさんと9歳の少年クレイグの交流の物語。前半はおじいさんとの交流。後半からちょっと不穏な雰囲気にかわります。
ハリガンさんは引退した大金持ち。ふとしたことで気に入られたクレイグは、ハリガンさんに本を読み聞かせるバイトを提示され、交流がはじまります。ヘンクツながら律儀なハリガンさんは祝日にはメッセージと福引のようなくじをくれるんですね。金持ちなんだから、現金をプレゼントしてくれてもいいのに、なんて父親は言ったものですが、あるときその福引でけっこうな金額があたり、そのお金でクレイグはハリガンさんに出たばかりのiPhoneをプレゼントします。
テレビやインターネット、デジタル機器は人を奴隷にする、と忌避していたハリガンさんですが、それが自身の株取引に大きな力となると知り、クレイグに感謝して使うようになりました。
その後、ハリガンさんは亡くなり、クレイグはこっそりハリガンさんの棺にそのiPhoneを忍び込ませます。
寂しさと、自分に起こったちょっとしたトラブルの憂さ晴らしにハリガンさんに電話します。
かからないとは知りながら・・・
でも、電話はかかり、ハリガンさんの留守電メッセージが聴こえてくる。想いがこみ上げ、電話に向かって自分のトラブルについて語るクレイグ。
そしてそれからしばらくして、クレイグは自分のトラブルのもとが「排除」されたのを知りました。
前半のあったかい交流に対して、後半のやや不穏な雰囲気。
なんとも引き込まれました。
物語の結末も、ちょっとほっとするところでとめられていて、余韻もよかったです。もうちょっとイっちゃってたら、ハートウォーミングなキングではなく、怖い方のキングになっていたでしょうね。
もう一篇が、表題作となっている『チャックの数奇な人生』
こちらは映画化された、という話を先に聞いていました。
本書のどちらも、実は映画化されているとのことで、いずれ両方観たいところではあるんですが。
ただ、なんでしょうね。
『サンキュー チャック』という映画になった『チャックの数奇な人生』というお話は、読後、これをどういう映画にしたんだろう、と、ちょっと頭がぐるぐるしました。
小説がつまらなかったわけでは、ありません。
これが映画として、一本筋のとおった物語になるのか、というあたりの見当がつかなかったからです。
これがどういうお話だったのか。
それはもちろん、ご興味のある方は、読んでみてくださいね♡としか、言いようがありません。
ただ、まぁ私なりの読んだ印象を言えば、
人が一人、死を迎えるというのは、ひとつの世界が終局を迎えるくらいに大きなことなんだよね。
その人には、その人の、平凡かもしれないけど、その人なりの充実した時間があったんだよね。
さらには、実はその中に少し不思議なスパイスもあったかも。
なんて、展開に思えました。
まったく説明にはなってませんが。
ただ、スティーブン・キングという作家さんは、とにかく怒涛のように言葉を重ね、物語を紡ぐ人だというイメージはあります。
その中で、ひょっとしたら、誰か親しい人の死に出会ったんだろうか。
キングも、そこそこのお歳ですから、それはあるでしょう。
そのとき、ふと脳裏をよぎった感覚から、ここまでのお話に膨らませた。
そんなふうに思いました。
本書は、『イフ イット ブリーズ』という4編からなる中編集のうち2作を収録したものです。
のこり二篇も、翻訳されているので、そちらも近いうちに読みたいと思います。
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