監督は是枝裕和。
作品で思い出すのは「ワンダフルライフ」「誰も知らない」「花よりもなお」。
ドキュメンタリーをやってた人なのできれいな風景に音楽を合わせたり、
人間の自然な表情で画面をつくるのがうまい。
この作品も、海や空、秋田の祭りや雪景色、わたっていく白鳥の群れ、
そして何より若い2人の女の子の様子が美しく、悲しい。
自分は原作まんがのあらすじは知ってるが、読んだことはないし、
数年前にアニメ化されたものも見ていない。
この映画の中で、主人公(藤野ちゃん)がプロ漫画家になって、
ずっと夢だった作品のアニメ化が決まったとき、
中学時代の初作品が漫画雑誌新人賞準優勝したときからの担当の編集者が言う。
「寂しいでしょう。自分の作品がどんどん手を離れていくようで」
このセリフ、たぶん漫画原作者に対して是枝監督が言いたいことだと思う。
「ごめんね、こんなふうにして。でもこういう映画にしたかったんだ」と
もしかしたら是枝監督は実際に原作者に言ったかもしれない。
つい先日見た「時には懺悔を」では障害のある赤ん坊を誘拐して
9年間育てた「父親」役で出ていた宮藤官九郎。
「あまちゃん」の監督、脚本をしたときに「すごい人だ」と思ったが、
この映画では藤野ちゃんの小学校の担任を演じている。
東北出身だからだろうけど、秋田の言葉をわかりやすくしゃべるのが上手。
漫画編集者は菅田将暉。
持ち込まれた漫画を丁寧に熱心に読み込む姿で「漫画が好きなんだな」とわかるし、
あまりクチを開かずぼそぼそとしゃべる内容が優しい。演技上手だ。
「サンセット、サンライズ」で都会から来てリモートワークしながら
釣り三昧の生活をするクリエーターを演じたときとはまるで違う役作り。
この二人がいなかったら、この作品は映画としては成立しなかったかもしれない。
ベネチアはこれをどう評価するかはちょっと気になる。
追記;
是枝監督作品は、そういえば「箱の中の羊」も最近見たんだった。
評価が分かれる映画であるが、「ルックバック」と並べてみると
「是枝さん、最近なんか変えた?」って感じ。
いい方向にしろ悲しいつらい方向にしろ、
心の奥がぎゅっと動く映画をとる人だと思っていたのに、この二つは
「こういうの見たいでしょ、考えさせられるでしょ」みたいな
操作というか技巧というか、ちょっとうんざりする感じがある。
菅田将暉についての追記;
菅田将暉は「黒牢城」で黒田官兵衛を演じているが、
原作と「地下牢」の設定が違うし、
自分が原作で一番好きなシーン(息子との再会)がなかったので、
ちょっと不満、菅田将暉のせいじゃないから申し訳ないけど。
「アルキメデスの大戦」では戦艦大和を数学的に検証する学者役だが、
実際に「数学大好き」なので映画の中で黒板にどんどん書いていく数式は、
きちんと理解した上で書いていた、とあとで知った。
数学どころか数を数えるのが苦手なワシにはうらやましい話である。
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