2年ほど前に退職したシャインさんが、体調を壊して今のカイシャを退職した、と聞いたのは春の頃だったか。
彼女が退職するとき、人が足りなくてかなり困った。
その年、退職する、と言っていたシャインさんは数人いて、新年度の体制づくりにかなり苦慮したものだった。
退職を思いとどまってはもらえないか、と声をかけた人もいた。
あれこれ画策したが、結局最終的にはみなさん退職されていった。
このとき、前述のシャインさんには退職を思いとどまってほしい、と声はかけなかった。
いらなかったからではない。
むしろ、期待していた方なんだけどね。
ただ、センムに、
「彼女に残ってもらえないが、話してみようか」
と言ったら、
「彼女、もう次が決まっているっていってましたよ」
「そうか。それじゃ無理だね」
というやりとりがあったのだ。
で、あきらめた次第なんだけど、後から漏れ聞くところによると、うちが困っているようだったら、新しいところに頭を下げて残るつもりはあったそうな。
その翌年は、案の定ものすごく苦労したから、そのとき声をかけなかったことを悔やんだものだった。
とはいえ、彼女には彼女の人生があるからね。
退職するときは
「ほんとは残ってほしかったんだけど、もう次が決まっていると聞いてたから、声をかけられなかったんだ」
と、声をかけて送り出した。
たまにイベントのときなど、彼女は顔を出してくれたから、元気にやっているようでなにより、と思っていた。
去年のクリスマスのときも顔を出してくれて、その少し後にはじめて
「今のところ、やめるらしいですよ」
「あれ?そうなの?」
「体調を崩したらしいです」
顔を出してくれた時は、とくにかわりはないようにみえたから、疲れちゃったのかな、くらいに思っていた。
年度が替わり、やめた後、うちのシャインさんのところに遊びに来ていた場面にいきあった。
新しく勤めていたところが、あまりよくない環境だったらしいこと。体調面はぱっと見、かわらないようにみえて、実はけっこう重いらしいこと、などの話を聞いた。
そのときは、
「復帰してくれたらうれしいし、しばらくバリバリ働くのが無理というなら、パートでもどう?」
と声をかけると、少し休んで夏前くらいに考えたい、と言っていた。
人手不足でしんどい、とシャインさんたちから言われたこともあって、彼女に電話してみた。
電話に出た彼女は、たとえていえばインフルエンザで高熱を出しているんじゃないか、というくらいしんどそうだった。
「あぁ、ごめん。そろそろどうかな、と思って電話したんだけど、ちょっとしんどそうだね。ごめんなさい。お大事にしてください」
ほとんど慌てて、電話を切った。
センムとも、
「しばらく、無理そうだねぇ」
なんて話していた。
その後、8月の末くらいになって、思い出した。
前に電話をかけたときがすごくつらそうだったから、仕事どう?というのは、はばかられる。
といって、体調崩して仕事辞めてる中、心細さとかないかなぁ、なんて気にはなったのだ。
仕事どう?というのではなく、仕事の方はだいじょうぶになってからでいいから、とりあえずお身体を大切に、とショートメールを出してみた。
前の電話ですごく辛そうだったことを考え、返信もいいから、と添えておいた。
そうしたらセンムから
「どんなメール送ったんですか?」
と、苦笑交じりではあったが、苦情がきた。
どうも彼女は、俺から体よく追い払われた的に思ったらしい。
仕事をたのみたい気持ちはあるけど、体調つらそうだからもういいよ。もう連絡してこなくていいから
的にとらえたそうな。
まぁさすがに本気でそこまでとらえたわけでもなく、でも俺から来たメールは、そういう解釈ができる、いやそうとしか思えないから、在職中の同期に連絡したという。
大笑いして、
「エリ(仮名)は、もういらない、ってことじゃない」
と答えたそうだが、誰もそんなこと言ってないから。
びっくりしってそういうと、センムも苦笑しながら
「shu-1さんのことだから、考えすぎて、へんなメールになっちゃったんじゃない?」
と答えてくれたそうだけど。
まぁ、まさにそうなので、否定はできない。
結局、直で会うことになり、そうは言ってもまだ体調が万全ではない彼女は、週1か2くらいの非常勤から来てもらうことになった。
こんなことなら、あのとき強く引き留めておけば、という気持ちがないといったらウソだけどさ。
でも、それもまた、彼女の人生なわけだし、体験を広げたことは苦労したとしても決してマイナスにはならないと思う。
あとは病気がよくなって、また通常通りの仕事ができるようになるといいね。
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