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2022年06月10日22:38

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ウクライナ戦争の軍事費は1ヶ月で尽きる(2)

第4部:ロシア石油・ガス輸出金額
(中略)
 今年2022年は原油・石油製品・ガス・石炭等々の地下資源価格が上昇しており、ロシアの天然資源・燃料輸出額は順調にいけば約3000億ドルになる見込みですが、欧米市場向け輸出が大幅減少することも予見されます。

 ロシア連邦統計庁資料によれば、2021年の露天然ガス輸出金額は555億ドルです。

 気体としての天然ガス輸出金額の30%は輸出関税で、露国庫に入ります。しかし、LNG輸出関税は零ですから、LNGを輸出しても輸出関税は国庫に入りません。

 ですから、露財政面から言えば、欧米諸国がロシア産LNGを輸入禁止しても、ロシアの関税収入が減少することはありません。

 一方、欧州諸国が気体としてのパイプライン天然ガスを輸入禁止した場合、ロシア財政は即打撃を受けます。

 もちろん、当然のことながら欧州側にもブーメラン効果が出てきます。

 欧米はロシア産石炭の輸入禁止措置を発表しましたが、石炭は代替供給源が幾つかありますので、石炭価格上昇以外は欧米にとりそれほど大きな負担にならないと思います。

 石油・ガスの輸入禁止は欧州諸国にとり大きな負担になりますが、ロシア国庫予算は石油・ガス税収に依存しているので、ロシア国庫財政と経済は危機に直面すると考えます。

 すなわち、制裁措置の効果大です。

 ちなみに、今年2022年の石油・ガス税収案は露国家予算歳入案38%、1〜4月度実績は49%でした。

「経済制裁は効果ない」と言っている経済評論家もいますが、それは事実と異なります。ボディーブローのように効いています。

 問題は、政府高官はほとんど痛痒を感じないでしょうが、経済制裁の効果で打撃を受けるのはまずロシアの一般国民と民間企業である点です。

 既にデフォルト(支払い不能)となったロシア企業も出てきました。

 ウラル原油のようなサワー原油の場合、製油所では脱硫装置にかけて硫黄を除去する必要がありますので、サワー原油を輸入する石油精製会社には脱硫プラントが必要です。

 ロシア産ウラル原油の輸入量はこの脱硫装置の能力が隘路となるでしょう。

第5部:ロシア経済のアキレス腱
 ロシアのアキレス腱、それは経済です。ロシア経済は天然資源依存型経済構造であり、そのような経済構造を筆者は≪油上の楼閣経済≫と呼んでいます。

 旧ソ連邦諸国の中の天然資源大国は皆、大なり小なり典型的な≪油上の楼閣経済≫にて、もちろん、中東産油国もこの範疇に入ります。

 V.プーチン新大統領は2000年5月7日、故B.エリツィン大統領の後任として、新生ロシア連邦2人目の大統領に就任。

 ロシア経済は大統領就任後の2000年代前半、原油・天然ガスの価格上昇とともに輸出拡大と好調な内需等に支えられて成長しました。

 故B.エリツィン初代ロシア連邦大統領は油価低迷により失脚。後任のプーチン大統領は油価高騰を享受。

 油価高騰に支えられたロシア経済は油価依存型経済構造から脱却できず、逆にますます依存度を高めていきました。

 ロシア国庫歳入案に占める石油(原油と石油製品)・ガス税収案は、プーチン大統領が誕生した2000年は約2割でしたが、油価がバレル100ドルを超える高騰時には、国庫歳入の半分以上とGDPの約1割が石油と天然ガスからの税収になりました。

ロシア国家予算案想定油価と油価実績推移

 ロシア財務省は毎月、露ウラル原油の月次平均価格と年初〜当該月の平均油価を発表しています。

 ロシア財務省発表の2021年通期の露ウラル原油平均油価は1バレル69.00ドルになりました。

 ちなみに、2020年通期のウラル原油平均油価は41.73ドル、2019年の平均油価は63.59でドルした。
(中略)
ウラル原油平均月次油価推移
(中略)
 2022年露国家予算案想定油価は62.2ドル、2022年1月〜5月度平均78.81ドルになりました。

 国家予算案想定油価よりも高い油価になっているので、今年の露国家予算は余裕ある予算になるはずでしたが、実際にはこの増収分は軍事比に転用されているものと推測されます。

 本来ならば増えるはずの国民福祉基金資産残高が2021年11月以降急減しているのはその傍証になります。

第6部:米国のロシア産原油・石油製品輸入割合概観
 米国のロシア産石油禁輸に関して日本では原油禁輸と報じられていますが、正しくは石油の禁輸です。

 繰り返しますが、原油と石油は異なります。
(中略)
原油なのか・石油製品なのか・石油(原油+石油製品)なのか、言葉(単語)を正確に使うことがいかに重要であることかお分かりいただけると思います。

 ただし日本はロシア産原油輸入のみで、ロシア産石油製品を輸入しておりません。

 すなわち、日本の場合は結果として、「ロシア産原油輸入量=石油輸入量」になります。

 この辺から、原油=石油と報じているのかもしれませんが、言葉は正確に使いたいものです。

 なお、日本の2021年原油輸入に占めるロシア産原油輸入シェアは3.6%(2020年3.4%)ですが、最初にご報告通り、日本は露ウラル原油(中質・サワー原油)を輸入していません。
(中略)
 露ウラル原油はベネズエラ産重質油の代替原油です。米国はロシア産石油禁輸に伴い、ベネズエラやメキシコ、ブラジルと重質油輸入交渉を既に再開。

 かくしてロシアは石油・天然ガス市場を徐々に失いつつあり、ロシア経済の衰退は不可避と言えましょう。

 上述の通り、原油と石油製品と石油は異なる概念ですが、日系マスコミ報道は区別していません。

 BCS Global Markets (BCS GM)によれば、2021年通期のロシア産石油(原油と石油製品)輸出額の半分が欧州市場向けとなり、今年第1四半期は55%に増加。

 ただし、今後は減少するとの予測にて、EUが石油(原油と石油製品)輸入を90%削減すると、来年2023年の露国庫予算減収分は300億〜500億ドルに達するとの見立てです。

 この数字に関しては別途検証必要ですが、2月24日以降の北海ブレントと露ウラル原油の価格差が従来の10倍、すなわち1バレル約40ドルの値差が継続すると仮定すれば、露国庫予算歳入減少分はさらに拡大することでしょう。

エピローグ:油価はプーチンの生命線

6月30日のOPEC+協調減産会議に注目

 OPEC+諸国(23か国)の原油協調減産枠はOPEC+協調減産会議にて、その時々の原油需給予測に合わせ調整されています。

 OPEC臨時総会が2020年3月5日、オーストリアの首都ウィーンで開催されました。

 このOPEC臨時総会では、計360万bdの協調減産で合意しましたが、翌6日に開催されたOPEC+(OPEC諸国+非OPEC主要産油国)会議ではロシアがこの追加協調減産に反対したため、結果として4月1日以降の枠組みは合意に達せず、交渉決裂。

 この交渉決裂を受け、サウジアラビアは協調減産合意が切れる4月1日以降は市場シェア奪還を目指し原油を増産すると発表するや否や、油価は暴落しました。

 ではなぜ、サウジアラビアは市場シェア奪回を目指して原油増産に踏み切ったのでしょうか?

 話は1973年の第1次オイルショックにまで遡ります。

 1973年の第1次オイルショック後、それまで1バレル2ドル前後の油価が急騰。1980年には35ドルになり、油価はバブルの様相を呈しました。

 1973年当時は北海油田の原油生産量はまだ少なかったのですが、早晩本格的な生産開始が見込まれ、油価暴落が予見されていました。

 そこでサウジアラビアは油価暴落を避けるべく、自国の原油生産量を大幅削減。

 すると油価は徐々に下落しましたが、ソ連や米国を含む他の主要産油国が減産しなかったため、結果としてサウジアラビアのみが世界の石油市場でシェアを大幅に失いました。

 そこでヤマニ石油相が1985年9月13日に増産転換政策を発表するや否や、油価は大暴落。1980年代後半の油価は1バレル10ドル台で推移、この油価低迷が1991年末のソ連邦崩壊の引き金になりました。

 付言すれば、1999年末の故B.エリツィン大統領辞任の背景もやはり油価低迷でした。

 2020年4月12日に開催されたOPEC+諸国(23か国)とG20 エネルギー相会議にて、原油協調減産に関し最終合意。

 3段階(期間)のOPEC+協調減産量と協調減産後の原油生産量合意内訳は以下の通りです;

��2020年5〜6月の協調減産量:9.7mbd(露とサウジアラビアの原油生産量各8.5mbdとする)

��2020年7月〜年末:8.0mbd (同9.0mbd)

��2021年1月〜2022年4月末:6.0mbd (同9.5mbd)

 当初の合意では2022年4月末までの原油協調減産枠合意でしたが、2021年7月18日に開催されたOPEC+会議にて、協調減産枠を2022年末まで延長することでOPEC+は合意しました。

 2022年6月現在、OPEC+諸国は8月末までの協調減産枠を合意しています。

 次回OPEC+会議は6月30日に予定されており、9月以降の協調減産枠をどうするのか協議・決定予定です。

 次回会議は特に今後の油価動静に対する強い影響力を持つ会議になると予測されており、筆者はこの会議の動向に注目している次第です。

 協調減産枠が大幅緩和されればその分は原油増産となり、原油需給が緩めば油価は急落します。

 結論を繰り返します。欧米の対露エネルギー制裁は効果大です。

 ウラル原油の油価が下落すればプーチン失脚もあり得るので、プーチン大統領は枕を高くして眠ることはできないでしょう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70496
プーチンは間も無く終了ですw
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