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2019年03月09日10:00

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「特捜部Q カルテ番号64」映評

某ミニコミ誌に書いた、短い映評です。そのミニコミ誌自体をご覧になる方は少ないと思いますので、転載しておきます。

『特捜部Q カルテ番号64』
クリストファー・ボー監督(2017年、デンマーク、100分)

今の読者・観客にとって、北欧ミステリィの代表格といえば、やはり、何といっても、スティーグ・ラーソンによる『ミレニアム』三部作だろう。全作が、本国スウェーデンにおいて映画化され、好事家の間で評判になり、その後、第一作の『ドラゴン・タトゥーの女』は、ハリウッドでも映画化され、全世界的に(もちろん、日本でも)、大ヒットした。
今回、紹介する『特捜部Q カルテ番号64』は、デンマークの人気ミステリィ『「特捜部Q』シリーズの映画化第四弾である。一昨年一〇月に本国で公開され、デンマーク映画の歴代興行成績NO.1を記録する大ヒットとなっているというが、日本では前三作同様、テアトルシネマグループの「未体験ゾーンの映画たち」枠での、しょぼい特別公開に、とどまっている。著者は、一九五〇年、コペンハーゲン生まれのユッシ・エーズラ・オールスンで、現在までに七作が上梓され、いずれも早川書房から邦訳出版されている。
同シリーズは、過去の未解決事件を専門に捜査する、コペンハーゲン警察の特捜部Qの活躍を描くミステリィで、かつては有能な刑事だったが、勇み足で同僚を半身不随にしてしまい、窓際族になった主人公のカールを中心に、シリア出身のイスラム教徒のアサド、とても優秀だが、どうやら多重人格者であるらしい女性のローセという、実に、個性豊かな面々が、集まっている。
その個性豊かなチームが挑むのは、優生保護思想に基づく、女性への強制不妊手術という、人権侵害行為の首謀者たち。彼らは今も、極右政党「明確な一線」を組織し、そのメンバーは、政財界はもちろん、警察内部にも拡がっている。カールたちの捜査が進むにつれ、次々と関係者が謎の死を遂げ、やがて、その毒牙は特捜部Qの面々にも…。
結論からいうと、映画は原作とは、かなり決定的に違う、ストーリィ展開である。ネタバレになるので、詳しくは書けないが、しかし、そうすることで、悲惨で、何の救いもない原作に比べ、悲惨だが、一筋の光明も見える、ラストになっていて、まぁ、これはこれで、ありかなぁ…と。
本の著者であるユッシ・エーズラ・オールスンによると、一九六七年までに、一万人を超える女性が強制不妊手術を受けており、デンマーク王国は、その被害者に対し、一切、何の謝罪も、賠償も、行っていないという。
映画では、現在のカールたちの捜査と、ニーデという、被害者女性のひとりの過去とが、交互に描かれ、女性への性暴力や、強制収容所での凄惨な虐待行為の実態が、実にリアルに、描かれている。思わず、目をそむけたくなる、唾棄すべき現実。そして、差別は、女性たちだけでなく、アサドに代表される少数者にも、もちろん、向けられている。

 

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