ゆかりさん、こんにちは。お元気ですか。
私は、今日も、何故か、ここから出ることが出来ないので、あなたに会いに行くことが出来ません。
実をいうと、ここというのがどこかも、わかりません。
「涼子さん、まだ、昼の薬を飲んでいないので、すぐ飲んで下さい」
今のは、看護師のはるかさんです。私は、何故か、ここから出ることも出来ず、その理由を尋ねても、納得のいく返事をもらえず、しかも、その上、朝昼晩、薬を飲むように、しつこく、強制されるのです。
この薬を飲むと、頭がボーッとして、眠くなってしまうので、とても、イヤです。でも、飲まないと、鬼がやって来て、私をよってたかって、羽交い締めにして、無理矢理、薬を飲ませるのです。
鬼は、3人いて、赤鬼と青鬼、それに、もう1人の鬼は、赤くも青くもなくて、人間の顔をしています。でも、人間ではなく、鬼なのです。きっと、人間の皮を被っているのだと、思います。
鬼が恐ろしいので、私は抵抗はしますが、結局のところ、薬は飲まされてしまいます。
それで、いつも、頭がボーッとしているのです。
私の部屋は、女ばかりの6人部屋ですが、鍵がかからないので、夜、あの平次がやって来るのではないかと心配で、よく、眠ることが出来ません。
平次は、もう50過ぎのオヤジで、食事の時など、誰かに見られていると思って、顔を上げると、見ているのはたいてい、この平次です。とても、イヤらしい目をして、口を半開きにして、こちらを見つめています。時々、そっと近づいてきて、手を握ろうとします。
汚らしいので、平次に手を握られた時は、洗面所に行って、液体石けんで、ゴシゴシ、手を洗います。それで、私の手は、厳冬でもないのに、常にあかぎれが出来ています。
はるかさんには、平次が夜、部屋にやって来たらイヤなので、ここから出すか、せめて、部屋に鍵をつけて下さいと、何度も頼みましたが、はるかさんは「そんなことないわよ、それはあなたの妄想よ」とぃって、全然、取り合ってくれません。私が平次にレイプされてしまったら、それは彼女の責任です。
本当に、イヤです。平次は、汚らわしい。死んで欲しい。死ななくてもいいけど、ここかから出て行って欲しい。
いや、出て行くべきなのは、本当は、私なのです。私は病気ではないし、薬を飲む必要もない。だから、ゆかりさん、どうか、1度、私に会いに来て下さい。そして、私をここから、出して下さい。お願いします。
「涼子さん、これから袋貼りの作業をしますよ」と、はるかさんが、そういいます。
袋貼りの作業なんて、イヤです。私は、ここに入る前は、IT企業のオフィスで、一般事務をしていたのです。ワードだって、エクセルだって、ちゃんと、使えます。そんな私が、何が悲しくて、袋貼りなんかしなくては、いけないのかしら。
それに、袋貼りの作業は、平次と同じテーブルでしなくてはならないので、本当に、イヤ。
ああ、ゆかりさん、今すぐ、会いに来て。何度も手紙を出しているのに、あなたは何故、会いに来てくれないの・・。
(続く)
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