ワシが医師免許を取ったのは平成元年。
4年間研修をした病院は某国立病院であるが、
分娩などで大出血して病院保存の血液パックがなくなったときは、
「なまけつ」と呼ばれる「全血輸血」をしていた。
今も血液足りなくなるとやってるとは思うけど、あんまり聞かない。
たぶん手術で出血しやすそうなときは自己血貯血とか、
手術に使う機器、手術方法そのものの進化とかで、
輸血パックの消費を少なくできてるんじゃないかな?
まあとにかく「なまけつ」である。
家族とか兄弟とか知り合いとか、呼べるだけの人を集めてもらって
血液型確認してかたっぱしから採血する。
自衛隊の方々に協力してもらったこともあったが、
太くて立派な血管に輸血パック用の太い針を刺したとたんに
意識を失ってしまったお方もいたっけ。
で、いそいで輸血するわけだが、これが効く!
ものすごく効く!
同じような患者さんで病院の輸血パックを使ったときより、
回復するのがものすごく早い。
上の先生は「なまけつはすごいんだよ」としみじみ言っていた。
今回のニュースは「なま」ではなく冷凍。
普通は「濃厚赤血球液」「濃厚血小板液」に分けるものを
分けないでそのまま冷凍するので手間がかからず、
大出血したら当然血小板も足りないはずなので、二度手間がない。
「赤血球」と「血小板」を別に使う場合、必ずしも同じ人のものでないが、
いっしょになってるならひとりの人のものだから、
アレルギーなど起きる確率も低くできる。
ここでちょっと知識確認。
血液型が違うとなぜ輸血できないか?といえば
たとえばA型の赤血球の表面にはA抗原がある。
そして血漿の中には抗B抗体がある。
だから凝集反応は起きない。
A抗原は抗A抗体と反応して凝集するものだから。
同じことで、B型なら赤血球はB抗原で血漿中には抗A抗体。
AB型なら赤血球はA抗原とB抗原で血漿中には抗体がない。
つまり表面の抗原の種類で赤血球の型が分かれているんだが、
O(おー)型というのはつまり「ゼロ型」ということ、表面抗原がない。
血漿中には抗A抗体と抗B抗体がある。
輸血というのは本人の血液が足りないとき行うものなので、
「輸血したほうの血液が凝集しちゃダメ」なのだ。
O(おー)型赤血球は表面抗原がないので、
どんな血液型の人に輸血しても、O(おー)型血液は凝集しない。
‥ということだ。
そういうわけで、自衛隊はO(おー)型全血を冷凍して使うことにした。
血液型には他にも種類があるが、凝集反応を一番強く起こすのがABO。
(Rh型も違うと強めに反応する)(血液型は他にもたくさんの種類がある)
さらに血液型には国によってどの型が多いかに違いがあるが、
日本国民はA型とO型が多い。
さっき書いたRhについては、日本人はRhマイナスが非常に少ないし、
本人がRhマイナスなら知ってる場合が多いので、問題になることが少ない。
追記;輸血が生理食塩水だの海水だので代用できるというデマについて
以下の文章はNATROM先生(尊敬するトンデモ医学キラー)による。
(以下引用)
生理食塩水どころか海水が血液の代わりになるという主張すらあります。「ルネ・カントン」という人物が「犬の血液を、希釈した海水に入れ替える実験をした」という逸話に基づいていますが、あるのは逸話だけで詳細な情報は不明です。生理食塩水と違って海水はさまざまな不純物が混じっていますので、静脈内に入れると大変危険ですが、「母なる海」というイメージもあって一部の人たちに信じられているようです。
循環する血液量が減っても、生理食塩水なり希釈した海水なりを輸液すれば血圧は保たれますので、カントンの犬の実験自体は行われたのかもしれません。輸血も輸液もしないよりは、海水を輸液するほうがマシではあるでしょう。血液を一度に全部生理食塩水に入れ替えてしまえば、赤血球も血小板も凝固因子もなくなりますので犬は死にますが、少しずつ入れ替えれば希釈されるだけですので、ある程度は耐えられます。が、一定を超えれば死にます。
海水や生理食塩水が輸血の代替になることを証明するためには、たとえば、血液を抜いた実験動物に対し、海水や生理食塩水を輸液する群と輸血する群とを比較して、輸液群が輸血群と少なくとも同等の成績であることを示す必要があります。もしそのような実験に成功すれば医学の進歩に大きく貢献しますので、ぜひとも論文として発表していただきたいものですが、決してあり得ません。
(引用終わり)
ちょっと考えたらわかりますね。
血液はただの塩水ではなく、いろんな成分を含む「臓器」ですから
海水でも生理食塩水でも「代用」はできない。
一時的に血圧を上げたりはできても、
一定以上の出血なら全く役に立ちません。
■全血液型対応の製剤、製造へ=防衛省、薬事「例外化」調整―有事の輸血、混乱回避
(時事通信社 - 02月11日 08:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=7745830
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