会社で不祥事があった場合、謝罪会見を行ったり謝罪文を掲載したりしています。だが、その謝罪内容がまた批判の対象となり、さらに炎上が起こる事も多々あります。少し前、自動車ディーラーの従業員が障害者を揶揄した動画をSNSに投稿して、炎上しました。
動画は、会社のロゴが入っている作業服姿の男性が、舌を出して頭を傾けながら電動車椅子を操作する様子とともに、周囲数人から笑い声やもう1回とリクエストする音声も録音されていたものでした。それに対して、企業がアップした謝罪文は以下のものです。
「従業員が撮影、SNSに投稿した動画について、ご覧になられた皆様に大変不快な思いをさせてしまったこと、またお客様ならびに関係各位には、ご心配ご迷惑をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます。」
「本動画を撮影しSNSに投稿した従業員、動画に映っている従業員、および撮影時に周囲にいた従業員に対して事実確認を行ったところ、決して障害者を揶揄するつもりはなかったと申しておりますが、会社としては軽率な行動に対して厳重注意を行い、当該従業員も深く反省しております。」
「弊社は、本件を真摯に受け止め、本社および関係グループ会社も含め、本件の内容を周知するとともに、再発防止に向けた取り組みを行ってまいります。」(HPより引用、社名省略)この謝罪文により、この事件に対する批判より一層炎上しました。
1980年Schonbachによる研究分類によると、弁明は以下に分けられるとしています。謝罪、自分に責任がある。非を認め、許しを請う。
弁解、やむを得ない事情があった。不適切だが自分に責任はない。「自分」と「自分が行った悪い行為」との結びつきを弱めようとする。
正当化、関連はあるが、不適切ではない。その行為の否定的な意味合いを弱めようとする。
拒否、関連していないし、不適切でもなく責任もない。自分の非を一切認めない。
この4つのうち、謝罪だけが非を認めて責任を負い、他の3つは自分の責任を回避・軽くしようとしているものです。では、前述の謝罪文はこの4つのどれにあてはまるのか。
SNSで一番多くあがった声は「決して障害者を揶揄するつもりはなかった」に対する「他の意図があるなら説明してほしい」という類いのようでした。従業員の言い訳を企業がそのまま引用したことで、謝罪文が「謝罪」になっていないため、この批判が起こったのだと思われます。
さらに、「不快な思い」という言葉と合わさって「そもそもそのような意図はない。(そう思ったのはあなた方の勝手だが)不快に思われたなら、そのことは申し訳ない」という「正当化」が全体的に感じられる文章となっています。
つまり、暗に「これはそんなに大きな問題にすることないだろう」というメッセージになってしまっているため、「会社は問題を歪曲化している」という印象を与えています。また、「会社から厳重注意されて当該従業員は反省している」とありますが、何を反省しているのか、何が問題なのかわかっているのか、という批判も出ていました。
これは、「なぜ炎上したのか?」についての本質を見誤り、正しい「謝罪」ができていないと解されてしまったから起きたものです。もしも、ふざけてしまったという事実があって、自分たちの無自覚な行動の重大さに気づいて反省し、正直に「謝罪」して、再発防止に向けた具体的な対策や方針を示していたら、効果的な謝罪文となっていたかもしれません。
会社として不適切な動画投稿を未然に防ぐためには、就業規則にソーシャルメディアの利用に関する規定を明確に定め、徹底的に社内で周知する必要があります。しかしこの問題に対処するためには、単に不適切な動画のデメリットについて話すだけでは不十分です。
むしろ、従業員が無自覚な差別意識を持つことなく、自らの行動を認識できるような教育と啓発が不可欠です。また、万が一不祥事が起きてしまった時には「拒否・正当化・弁解」に終始するのではなく、問題に向き合い、真に「謝罪」をすることが重要だと思われます。参考図書:「弁明過程の日米文化比較」島田拓司著
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