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2022年12月08日08:43

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「こどもホスピス」の話

本。著者は田川尚登さん、NPO法人こどもホスピスプロジェクト代表。

二女はるかちゃんを「脳幹部グリオーマ」という難病で亡くした。
6歳になったころに発症し、1年たらずの闘病の末だった。
1998年2月。

闘病の記録も書かれているけど、この本の主題は
著者が「こどもホスピス」が必要と感じた理由とその後の努力の軌跡だ。
「横浜こどもホスピス〜うみとそらのおうち」は2021年に完成した。

この本に書かれていることで、わたくしがこれまで気づかなかったことは
「こどもは死の瞬間まで成長」しているということだった。
好きなこと楽しいことうれしいことに向けて、全力で進む。
進む先に限りがあってもそれは、変わりがない、
普通の子の成長と同じだ。

だからこそ、周囲の人たち、特に親御さんにとっては大変な負担だ。
病気で弱って枯れていく老人とは違う。
エネルギーのかたまりのまま死んでいくのを見守るのは、かなりつらい。

それを手助けするのが「こどもホスピス」である。
死の瞬間までのこどもの成長を親とともに見守る。
そのための場所と知識と手段を提供する。
学校に行きたい、おともだちと遊びたい、旅行をしたい、を実行するため、
計画をたて必要な人員と設備や手段を準備し、
親ごさんやきょうだいに心理的なカウンセリングをし、
ときには「死ぬってどういうこと?」と聞いてくる子のために答えを準備する。

経過中に新しい治療や何かの奇跡で生き延び、大人になる子もいる。
イギリスの施設は16歳まで利用できるが、利用者が生き延びれば
(施設は変わるが)その後もずっと支援を受けることができる。
親が年老いても安心できる。

日本の「こどもホスピス」はまだ始まったばかりだが、
いずれイギリスのような進んだ福祉施設として発展してほしい。

文章の内容を思い出すと泣いてしまって日記が書けなくなるのだが、
この本に書かれているエピソードをひとつ、紹介する。
このプロジェクトにかかわった医師のひとりが
まだ「在宅医療」の形で死病の子たちに関わっていたときに
18トリソミーの赤ちゃんのお世話を手助けした。
生まれてすぐ死んでしまう子も多いのだが、
この赤ちゃんは生後2か月でなんとか状態が落ち着き、
ご両親は自宅に帰ることを希望し、この医師が担当した。
お母さんが「箱根に家族旅行がしたい」と希望した。
スタッフ全員でサポートし、旅行は実現した。
ずっと病院のNICUか、NICUのように整えた自宅の部屋にいた赤ちゃんは、
旅行によってはじめて「おそとのそよ風」に触れた。
箱根の旅館で「生まれてはじめて朝日」を見た。
見た瞬間のはっと驚いて両手両足をひろげてのけぞる姿、
目を見開いて朝日を見つめる姿の写真が本にある。
お母さんはそのとき「この子を産んでよかった」とつぶやいたそうだが、
この赤ちゃんもきっと「生まれてきてよかった!」と叫んでいたに違いない。

わたくしも、脳腫瘍で余命わずかな弟を連れて何度か家族旅行をしたので、
明日をもしれない病人連れの旅行がどれほど大変か、わかる。
わたくしと末の弟と医者がふたり家族にいたからこそ実現したことだ。
最後は蔵王に近い旅館の部屋でけいれん発作を起こして搬送され、
それきりとなった。

こどもに限らない。にんげんは死ぬ瞬間まで生きている。
生きている限り、やりたいこと見たいもの行きたい場所がある。
それをできればできるだけかなえてやりたいと思うのは、
家族なら、親しい人間なら当たり前ではないだろうか。
ホスピスは死にゆく場所ではない。
死ぬ瞬間までにんげんらしく生きる場所だ。
そのことばが、一番よくわかるのが「こどもホスピス」の立ち位置だ。

考えてみれば、にんげんはいつか必ず死ぬ。
死ぬ瞬間まで生きている。
どうぞ、死ぬ運命のひとたちがみんな、死ぬ瞬間まで人間らしく生きられますように
…と今年のクリスマスはお祈りしようと思う。

追記:横浜こどもホスピスのご案内
https://childrenshospice.yokohama/ych/institution.html

■NICUで聞いた「小さい服が少ない」、18トリソミーの娘の経験を形に 2500g未満の赤ちゃん肌着
(ウィズニュース - 12月07日 07:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=220&from=diary&id=7215032
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