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2020年01月16日10:07

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「i 新聞記者ドキュメント」映評

ミニコミ誌に掲載した映評です。発行されたので、解禁します。

『i 新聞記者ドキュメント』
森達也監督(二〇一九年、日本、一一三分)

この映画は、話題になった劇場映画『新聞記者』の原作者であり、その主人公・吉岡のモデルとなった、東京新聞の社会部遊軍記者、望月衣塑子の取材活動に密着した、長編ドキュメンタリーである。
森友・加計問題や、伊藤詩織さん強姦事件、辺野古の問題等々で、菅官房長官を定例会見の場で、トコトン追い詰め、安倍政権の「天敵」とされる、あの望月さんの日常の取材活動を通して、この国のジャーナリズムの危機を描くのは、当時、誰も、あえて扱おうなどとは考えてもいなかった、オウム真理教の荒木広報部長らの活動に密着取材した作品『A』を世に問い、文字通り、世間を敵に回した、ドキュメンタリー映画作家の、森達也監督。
望月記者は、権力のウソやごまかしを、許さず、トコトン、追及するという、記者として、ある意味、至極、まっとうな仕事をしているだけなのに、そんな彼女が、報道現場で徹底的に浮いた存在になり、激しいバッシングにも晒される。そんな、今の日本の社会と、ジャーナリズムの有り様自体が、むしろ、異様なのだが、そこを、巷の同調志向を何より嫌う、森監督のカメラは、鋭く暴き出す。
映画の中で、意図的に、くり返し、随所に挿入される、同じ方向に泳ぐ魚の大群。それは、私たちの姿そのものなのではないかと、監督は、そう、問いかける。そして、社会の同調志向こそが、権力の暴政を、下から支えているのではないかと…。
この映画には、前史とでもいうべき、作品がある。それは、権力の闇を描いて、大ヒットした、劇映画『新聞記者』である。
東都新聞に、ある大学の新設計画に関する、匿名の告発情報が届き、シム・ウンギョン演じる同紙の女性記者・吉岡は、その取材を開始する。一方、松坂桃李演じる、内閣情報室の若手官僚・杉原は、自らの仕事に、疑問を抱き始める。そして、杉原は吉岡の取材に協力し、現政権の「闇」が、いったんは暴かれることになるのだが…という、実在の「あの事件」を下敷きに、政権と官僚機構の犯罪を、リアルに描いた社会派サスペンスだが、この程度の作品は、たとえば、お隣の韓国では、ごくフツーに、つくられてきた。それを、よくぞつくったと、諸手を挙げて、絶賛するのは、いささか、どん引きだが、しかし、同時に、そうした作品が、日本では、商業映画として、ほとんど、つくられてこなかったこともまた、厳然たる事実である。
同映画の吉岡も、強い女性だが、実際の望月記者は、もっと強く、その場の空気を読むということを、一切せず、猪突猛進する、正義の人だ。『i』も、『新聞記者』同様、ヒットしているようだが、それらが、一部の人々の、一種のガス抜きにしかなっていない、日本の現状はつらい。

(土方美雄/年金では生活出来ない生活者) 

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