先日の医師会主催講演会で眼科の先生に来てもらったが、
この先生が公演中に「結膜下出血」の話をしていて
「生後間もない赤ちゃんの結膜下出血は虐待の証拠」と言った。
ん?どこかで聞いたことあるぞ??と思ったら、
8月末にもと職場であったお産関係の会議の話題であった。
小児科からの話題が児童(赤ん坊)の虐待の話だった。
いくつか症例が出た中で、1年違いのきょうだいの虐待があった。
上の子が4か月のとき心肺停止で搬送され、小児科医が診察したところ、
肋骨に古い骨折のあとがいくつかと、明らかな結膜下出血があった。
まだ寝がえりもしない赤ん坊が転んで骨折したり目をぶつけたりするわけがない。
虐待疑いとして法医解剖に回されたが、解剖結果は「乳幼児突然死症候群」であり、
虐待死ではないとされたので、以後は追及されなかった。
その子の弟がちょうどまた4か月のときに、熱が下がらなくて救急外来受診。
脱水から腎盂腎炎を起こしており、かなり危なかったとのこと。
上の子と同じく結膜下出血があり肋骨骨折のあとがあり、さらに
「胸椎の前面」がつぶれている所見があった。
寝かせた状態でオトナが踏みつけでもしなければ胸椎前面はつぶれない。
虐待症例として保護された。
上の子が虐待死と判断されていたら、もっと早く手の打ちようがあった。
今回は死ななくてよかったが、5人の子の末っ子なので
(4番目は死んだ子)その他の子も虐待されている可能性がある。
最近は虐待死を疑って司法解剖されても「虐待死でない」と判断されることが増えた。
とある外傷が「絶対に虐待の結果」と決めるのは難しい。
特に歩くようになったあとの子なら、自分で転んだり転落したり、があり得る。
たとえ「きちんと子を見てない」結果の外傷としても「虐待」とまでは言えない。
法医学の医者も裁判に呼ばれて詰問されるのはかなりキツイ仕事らしく
「虐待でない」と判断したいのではないか、という話があった。
法医学の先生が困っているのもわかる。
「@@の可能性」があっても「絶対@@である」とは言えず、
そこを追及されても困るのだが、相手が知りたいのはそこだから。
白黒つける裁判と、生き物の生き死にを扱う医学は方向性が違う学問で、
相容れない部分があると思う。
以前「子は無事に産まれて当然」だから死産や障害児を産婦人科のせいにするのが流行った。
おかげさまで産婦人科医の数が激減、
さらにお産を扱う施設の数も激減。
お産の数も減って結果的に産婦人科相手の裁判は減った。皮肉なものだ。
お産もそうだが、すべての医療は不安定なものなのだ。
同じ病名でも同じ治療が効果があるとは限らないし、
治療すれば必ず治るとも限らない。
人間という生き物の生命力が不安定なのだから、機械の修理とはわけが違う。
生まれて半年たたない赤ん坊はさらに不安定で生命力に個人差が大きい。
同じ扱いをしても壊れてしまう場合がある。
「うつぶせ寝」でよく眠る子もいれば、窒息する子もいる。
「@@ならみんな大丈夫」とは絶対にならないので、
「うつぶせ寝で窒息する子がいるならうつぶせ寝はさせない」が正解だ。
でもやる。子に寝てほしいという保護者の気持ちがよくわかる。
結果的に窒息しても、保護者は悲しだけで痛くもかゆくもない。
それも、わかる。
それにしても、上の子が虐待死と認められていたら、
もしくは「死因でない」としても虐待されていた可能性が高いと判断されていたら、
下の子はもっと早く、こんなに状態が悪くなる前に保護されていたのではないか、
という思いは消えない。
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