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2026年09月23日11:41

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(映画)ちいかわ、もしくはあらゆる紛争

ちいかわのキャラクターを全く知らない人はいないと思う。
自分も、詳しい設定やそれぞれの名前までは知らなかったが、「ちいかわ」はわかる。

原作を読んでいないので比較はできないが、
映画としてはよくできている。
まず、ちいかわ側は主要キャラクター以外は全部「その他大勢」扱い。
耳やしっぽで区別はあるが、全身灰色で表情はわからないししゃべらない。
さらに、ちいかわキャラでも「ちいかわとうさぎ、古本屋」はしゃべらない。
何か声を出すと周囲が「ああそれは@@だね」と解説する。

しゃべる主要キャラにだけついていけば物語が進むのでわかりやすい。
他のキャラ、特に灰色さんたちが全く邪魔にならない。
物語を上手に単純化するための手法として、こういうのは初めてみた。

「人魚の島」の島民たちも全員灰色ではっきりしゃべらない。
怯えて涙を流す表情だけはわかる。

人魚とその巨大な親分であるセイレーンは、いつの間にか島に住み着いたが、
(こちらもはっきり喋るのはセイレーンだけ、人魚たちはコーラス担当)
最初は共存していたのに、なぜか島民を次々にさらうようになった。
(実は「食われて」いるのだが島民たちの間では「行方不明」扱い)
島民たちは「セイレーンを討伐」してほしいとちいかわたちに依頼する。

正義とは何か。
1)島民たちにとっては仲間、家族がどんどんいなくなるのが困るし悲しい。
2)セイレーンは「3匹」の人魚が1匹減ったのを「島民の誰かが食った」と思っている。
3)人魚を食った島民を差し出せばセイレーンはそれ以外を襲うつもりはない。
4)ヒトハとフタバが人魚を殺して食べた犯人だが黙っている。
5)セイレーンと3匹の人魚が遊んでいるとき、たまたま船を転覆させられた。
6)ふたりは海岸に流れ着くが、フタバはひん死状態。
7)ヒトハは「人魚を食べると永遠の命が授かる」という本の記述を知ってた。
8)セイレーンたちの住処に忍び込み、人魚の1匹を殺すヒトハ。
9)「煮つけ」にした人魚を食べてフタバは一瞬で元気になる。
10)事情を知り、自分ひとりが永遠に生き残るのがイヤだと思うフタバ。
11)ヒトハの口に「煮つけ」を押し込む

ヒトハが「これも運命」とフタバが死んでいくのを見守ればよかったのか?
ただ、もしセイレーンがこの島に来なければフタバがひん死になることはなかった。
セイレーンが悪いと思うからふたりは人魚殺しを告白しないのではないか。
セイレーンが島に来た影響で作物のできがよくなり、生活は豊かに楽になったが、
生活を楽しむには仲間がいなくてはならない。
3匹の人魚はセイレーンにとっては大事な仲間。1匹が食われたなら復讐するのは当然。
殺した犯人に与える罰は
「狭い檻に閉じ込めて暗い深海で永遠の命を味わってもらうよ…」だが
島民たちが犯人をかばって隠しているなら同罪、とセイレーンは考えているのでは?
島民たちは魚を釣ったり作物を育てたりする穏やかな生活を送っている。
狭い島で一緒に暮らす仲間を疑えば、自分がここで暮らせなくなるかも。
「セイレーンを討伐」することも「仲間を疑わない」ことも
島での暮らしを守るためには同じ意味になる。

村を襲撃したセイレーンはちいかわたちが考えた「激辛料理」で撃退される。
「もう島民たちをさらわないで」という願いに「わかった」と叫んでセイレーンは去っていく。
島民はお礼にちいかわたちにごちそうを作り、みやげを持たせて
遠ざかっていく帰りの船を海岸で見送る。
島には平和が訪れる。

これで本当によかったのか?
胸に何かがつかえたような思いがちいかわ(と観客)に残る。
ちいかわは犯人がヒトハとフタバであると知っているのに
誰にも言わないで島を出ていくからだ。
あえて言えば「誰に言っていいか、そもそも言ってもいいのかわからない」状態。
この島の住民でもない自分がセイレーンの討伐を頼まれて、
とりあえず「討伐」したんだからそれでいいんじゃないか?
そんな心の声が聞こえる。

スタッフロールが終わったあとの画面で状況が一変する。

ヒトハとフタバはもといた島をこっそり離れて、別な島に向かう。
その島で手ごろな洞窟を見つけ、新しい家にしようと決める。
沖からその島に向けて、セイレーンと2匹の人魚が近づいてゆく。
‥激辛料理を食べて暴れたとき、セイレーンはヒトハに「犯人」のしるしがあるのを見た。
「わかった」は「犯人がわかった」の意味だった。

ヒトハとフタバはセイレーンたちから逃げ延びることができるのか。
やっぱり捕まって「狭い檻で深海に沈められて」永遠の命を味わうことになるのか。
それとも何かのきっかけでお互いがお互いの事情を知り、
セイレーンが自分にも非があったと気づき、復讐をあきらめるのか。

世界中で起きている軍事作戦、戦争、内紛、民族間闘争と同じく、
始まったことにはお互い理由があるが、終わらせる理由は見つけるのが難しい。
そもそも始めなければいい、もしくは早いうちに誰かが仲介すればなんとかなるか?
始まってしまえば、ある程度持続してしまえば、
「その後の事情」も加わって終わらせることはますます困難になる。

胸に何かがつかえた感じが続いている。
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