薬剤使用に関しての「禁忌」とは
「こういう使い方をしてはいけない」の意味。
「こういう」の中身は薬によって結構違う。
…年齢とか、体重とか、過去の病歴とか、今現在かかってる病気とか、
今現在使用している薬剤とか、妊娠や授乳の期間かどうか、とか。
ただし、「禁忌」のほとんどは「医師がどうしても必要と認めた場合」は使用可。
多分これが「ミソ」なんだよね。
今回の事件に関してネットで検索すると、とある医者が
「自分ならこんなプロポフォールの使い方はしない」と言ってる文章が出てくる。
それに対して「ええそうでしょうね、それがあなたのやり方」って答えて
自分は全然別なやり方をしても、実は問題ないのよね。
100人医者がいたら100人別なことをやってる可能性がある。
同じ患者の主治医になったとして、あの医者とこの医者では治療方法が違うことがある。
それが「医者の裁量権」。
たとえばさ、センナ、っていう便秘薬があってね。
センナを含む下剤はたくさんあるぞ、アローゼンとかプルゼニドとか。
実はセンナは妊婦投与禁忌、妊娠してるときは使ってはいけない。
子宮収縮から流産、早産の恐れがあるとされてるのね。
大腸収縮させる下剤は同じ理由で妊婦禁忌、ラキソベロンとか。
でも実際には、妊婦にアローゼン出しちゃう産婦人科医は多い。
そのココロは「実際に流産、早産した話を聞いたことがないから」。
つまり自分の狭い経験範囲でものを言ってるわけ。
確かに妊婦の便秘はけっこう多いし、安全性の高い酸化マグネシウムは効果が弱い。
…効果が弱いからこそ安全なんだけどさ。
きかない薬を出せば医者の評判は悪くなるからね。
今回の事件は、小児に禁忌とされる麻酔剤プロポフォールを投与された2歳児が
「プロポフォール注入症候群」という副作用で亡くなった話。
プロポフォールは投与するとすぐに患者が眠り、
やめるとすぐに目が覚めるという非常に使いやすい薬。
通常麻酔の導入(呼吸器をつなぐ前)によく使われる。
小児への投与も、投与量と投与持続時間を限って行うぶんには禁忌でない。
今回の事件では「投与量多い、持続長い」なんだけどさ。
そういう場合にプロポフォール注入症候群を起こす可能性は、文献によれば1.1%。
決して高い数字じゃない。むしろめったにそんなことは起きない。
でも「めったに起きない」は「絶対に起きない」じゃない。
どんな文献にどういう数字があっても、起きてしまえば100%だ。
今回でた高裁の判決は、上司であるICU責任者は執行猶予つきの実刑。
研修医は無罪。
業務上過失致死なら妥当な判決と思う。研修医は上司の指示に従っただけだし。
でも、母親にとっては「子が死んだから殺人罪」で死刑にしたいんだろうな。
重過失致死とかね。
気持ちはわかるけど無理ですな。
ちなみにおそらく、プロポフォールを小児患者に長期間投与することは
この事件の前にも女子医大でずっと行われていたはず。
だからこそこの2歳児にも使われた。「これまで危険なことはなかった」の理由で。
どうです?妊婦にセンナ投与する産婦人科医と同じ発想じゃないか?
そしておそらく、女子医大以外でもこういう使い方をする医者はけっこういたと思う。
日本全国に。
この事件のあとは、プロポフォールの売り上げはかなり減ったはず。
これまでたくさん使ってくれた「お得意さん」からの注文が減ったと思うので。
「こういう使い方をしてはいけない」は、医師の裁量権で変更できる。
だからそれはいいの。
でも、もし禁忌に当たる使い方をして思い切り副作用なり合併症が出たら、
その医者は自分の医師免許を失う。
覚悟の上で使うんだよね?たぶん大丈夫としか思ってないだろうけど。
たぶんで済めば医者は、警察はいらない。
妊婦にセンナや大腸刺激系の下剤使ってる産婦人科の先生方!
覚悟はできてますよね?!
禁錮刑になった医者は、おそらく医道審議会で2年間の医師免許停止をくらう。
最高裁への控訴が棄却されなければ最高裁判決が出たあとになるだろうが。
追記;実刑と有罪
有罪とは刑事裁判の結果「犯罪である」と認められた状態。
罰金、拘禁刑、執行猶予付き拘禁刑のどれかが言い渡される。
「実刑」とは罰金以外の刑罰を指す。
■亡くなった2歳男児の母親「判決を息子に報告できない」 東京女子医大病院の医療事故 麻酔科医に有罪 元研修医は無罪
(TBS NEWS DIG - 05月30日 05:48)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=266&from=diary&id=8806215
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