mixiユーザー(id:8729247)

2026年03月27日09:16

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「禁忌」の話

今回はわりとまじめで真剣な話。

「禁忌」と言うと言われた状況で意味がいろいろあるが、
ワシら医療業界では「やってはいけない」こと。
たいていは「絶対」がつく。
この状態ではこの治療をしちゃダメとか、この薬はこの使い方以外はダメとか。
やらかすと、患者さん死亡の可能性も含め大変な不利益が起きる。

しばらくぶりに受診した患者さんがいる。
家族の転勤か何かの事情で、数年前に遠い地方に引っ越して
またこっちに戻ってきた。
転勤前の病名は「子宮筋腫」。
子宮にできる筋肉のこぶですね。
女性ホルモンの刺激で大きくなり、月経量を少しずつ増やす。
症状のないままとてつもない貧血になって突然倒れることがある。
これで心肺停止で緊急搬送された患者を知ってるので、
自分的にはわりと用心してみている疾患。

数年の間にこの患者さんは更年期がはじまっていた。
更年期ってのはホルモンが下がってくるから当然筋腫は縮小する。
ついでに生理の回数減って量も減る(ことが多い)ので貧血も起きなくなる。
よかったよかった…と思ったら。

なーんとこの患者、引っ越す前に「2週間に1回ホルモン注射」を受けていた!
うわー、筋腫患者はたとえ更年期症状が出ても女性ホルモン投与は
禁忌の一種なんですけど?!
医者の治療が患者の疾患を悪化させてはいけない、という原則があるからさ。
しかも、女性ホルモン注射しかしてなかった!!
女性ホルモンは単独使用すると子宮内膜の異常増殖から
子宮体がんを起こす可能性があって、かならず黄体ホルモンとセットで使う。
昔は黄体ホルモンの注射剤もあったが、数年前に発売中止になったので
ウチでは黄体ホルモンは飲み薬にしている。
でもこの患者さんの「お薬手帳」のどこを見ても、
黄体ホルモン剤の処方歴がないんだよね…。

なんかもーめちゃめちゃ。
ホントに産婦人科医なのか?

ワシは嘘はつけないので、患者さんに上に書いたまんまを言った。
黄体ホルモン不使用に関しては、超音波検査で内膜異常増殖がなかったので
言わないことにした。(がんになるかもとかあんまりちょっとアレなので)
幸いなことに、ワシが最後に見たときよりも筋腫は縮小してた。
でもこのまま女性ホルモン注射を続けていたら、どうなったかわからない。

禁忌その1「子宮筋腫患者の更年期治療に女性ホルモン剤を使用してはいけない」
禁忌その2「子宮がある女性に女性ホルモン剤単独での連続使用をしてはいけない」
どっちも「直接命に関わる」ものじゃないけどやっちゃダメなやつ。

医者の裁量ってやつもあるんだけど、
それでもし何かあったら言い逃れできない。
最近でも「小児麻酔に使用禁忌の薬」を小児に使ってた某大学病院で
小児に麻酔によるひどい事故が起きて大騒ぎになったよね。
(https://www.yomiuri.co.jp/national/20210624-OYT1T50252/)
ワシはそういうのはイヤなのよ。

もちろん患者さんもそういうのはイヤでしょ?

こういう使い方はこれまでもしてたけど何もなかったので
たぶんまあ大丈夫でしょう…ってなるのかもしれないけど
「たぶん」で済めば医者はいらない。

追記;
女子医大プロポフォール事件では民事訴訟で賠償金6千万。
刑事訴訟では麻酔科トップ2人に執行猶予付き禁錮2年の実刑判決が出た。
(実刑判決が出ると数年間医師免許停止処分をくらうことが多い)
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