<ロシア軍とウクライナ軍の戦い(13)中篇 第3章から第5章>
初めにロシア軍によるウクライナ侵攻は、ヨーロッパの安全保障環境を変えた。ドイツでは14年ぶりに徴兵制を復活させる動きが高まり、すでに志願兵を募集している。命を落とす危険性から好待遇を打ち出して、若い兵士を集める。福祉予算を削り、国防に力を入れた。今世界中で軍拡競争が進んでいる。
前編 第1章と第2章 9月24日付
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目次
第3章 ロシアの攻撃は続く。サッカーのウクライナ代表スダコフが自宅を破壊される
第4章 ロシア軍による領空侵犯 ポーランドの新大統領ナヴロツキ氏の政策
第5章 国連安保理でロシアの非難声明が採択される
第1章では、8月15日の米ロ首脳会談の様子を紹介した。プーチン大統領は、停戦を求めるトランプ大統領を交わすかのように、ウクライナ側が呑めない条件を突きつけた。結果的に停戦の方向へ進んでいない。第2章ではロシアと中国が牛耳る上海協力機構(SCO)の首脳会談の様子を紹介した。同機構に加わるインドが、ロシアとも経済的につながり、戦闘能力を支えているとの見方も否めない。第3章はサッカーのウクライナ代表のスダコフ選手の視点にも立ち、キーウで続く空爆の被害状況を公開する。第4章は、ウクライナ支援へ鍵を握るポーランドのナヴロツキ新大統領の政策について検証していく。第5章は、ロシアの領空侵犯に伴う国連安保理決議の詳細である。
前回 第12回
・第1章 2025年8月26日 ベラルーシの強健体制
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・第2章 2025年8月28日 アゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノ・カラバフ問題が決着する
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第3章関連日記 サッカーウクライナ代表スダコフ選手が日本に来日し、アビスパ福岡と対戦
・2023年12月21日付 12月19日に国立霞ヶ丘競技場で行われたシャフタール 対 アビスパ福岡戦レポート
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写真=スダコフ選手 撮影者:著者の私 2023年12月19日(月)シャフタールの一員として、アビスパ福岡戦を戦う際、メインスタンド側で整列時の様子

第3章 ロシアの攻撃は続く。サッカーのウクライナ代表スダコフが自宅を破壊される
ロシアは、ウクライナとの停戦交渉に乗る気はなく、ゼレンスキー氏を正当な大統領と認めていない。なぜなら、非常事態宣言を機に2024年に行うはずの大統領選挙戦を延期しているからである。8月15日のアメリカとの首脳会談についても、2回目の日程については触れていなかった。9月初旬の中国訪問を機会に、ウクライナへの攻勢を強める。9月7日朝方、ロシア軍によるミサイル13発と800機を超える無人機が飛来した。首都キーウでは中心部にある政府の庁舎に初めて被害が出た。各地の住宅などにも損壊が確認されている。ゼレンスキー大統領はSNSへ被害状況を報告した。一連の攻撃で、4人が死亡、40人以上が負傷したと書き込んだ。「意図的な犯罪で、戦争を長引かせるものだ」と糾弾した。トランプ大統領は、停戦に応じる気のないプーチン大統領に対する態度を決めかねていた。2度目の会談へ持っていくには、静観する必要がある。ただし、このまま放置すれば、ウクライナの国土が一方的に荒れて、罪のない市民の犠牲者が増えていく。西欧の国々の視点に立てば、ウクライナが屈服すれば、自国の安全保障が脅かされる。7日、ホワイトハウスの報道官から追加経済の可能性について「YES」と答えたという。ベッセント財務長官は7日、SNSで反応した。トランプ大統領とバンス副大統領が、EUのフォンデアライエン委員長と会談したと、報告する。ヨーロッパのパートナーと共に、対ロ制裁へ足並みを合わせる必要があると、同調していた。
写真=攻撃を受けて煙が立ち上るキーウ庁舎 出展先と詳細記事 2025年9月7日のキーウへの攻撃、アメリカの対応 2025年9月8日午前7時21分 NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250908/k10014916111000.html
ウクライナの制空権を握るロシアの相次ぐ遠隔ドローンやミサイル攻撃について、有名人も被害を訴えた。その一人、サッカーのウクライナ代表に選ばれている現ポルトガルのベンフィカに所属する2002年生まれのスダコフ選手だった。ウクライナメディアによると、9月6日から7日未明にかけてのロシア軍のドローン攻撃により、自宅が破壊されたと訴えた。骨組みが残るマンションの一室の様子をSNSで公開する。彼は、2025−2026シーズンから、キーウに本拠地を置くシャフタール・ドネツクからポルトガルの首都リスボンに拠点を構えるベンフィカに移籍していた。先日9月17日、ホームで開催されたUEFA CHAMPIONS LEAGUE 2025-2026の初戦、カラバフFK(アゼルバイジャン)戦では、幸先よくチームがあげた先取点をアシストし、2点目のゴールにつながるスルーパスを送った。彼一人は、パッサーとして能力をアピールしたものの、前評判に反して、カラバフFKに試合をひっくり返され、2対3で初戦を落とした。
写真=カラバフFK戦のスダコフ 出展:Getty Images ホームページ
https://www.gettyimages.co.jp/detail/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E5%86%99%E7%9C%9F/georgiy-sudakov-of-sl-benfica-during-the-uefa-champions-league-%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E5%86%99%E7%9C%9F/2235271429
詳細日記 2025年9月18日付 紛争の最中のフットボール 第2章 ベンフィカ 対 カラバフFK戦レポート
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990730347&owner_id=32437106
ポルトガルへ単身赴任したスダコフだが、家族は故郷に残していた。爆撃された日、妊娠8ヶ月の妻や娘は、引き続きキーウの自宅にとどまっていたという。妻リザさんは「恐ろしい夜だった。自宅が爆撃された。神に感謝。みんな生きていて本当によかった。現実とは思えない」とSNSにて心境を打ち明けた。妻と娘と共に自身の母親も在宅中だったとのことである。
詳細 スダコフの家族の安否 Quoly 2025年9月9日付
https://qoly.jp/2025/09/09/almcnvxw-iks-1
写真=スダコフ選手の破壊された自宅 掲載元上記のリンクより
振り返ると、2023年12月19日に、シャフタール・ドネツクの一員として来日し、日本の国立霞ヶ丘競技場にて、アビスパ福岡とチャリティーマッチを行った。2024年の夏には、代表チームの一員として、UEFA EURO2024(欧州選手権)ドイツ大会に出場している。足元が柔らかくて、ドリブル力があり、パッサーとして定評がある。有望なサッカー選手の未来を左右する出来事だった。
第4章 ロシア軍による領空侵犯 ポーランドの新大統領ナヴロツキ氏の政策
ロシアの軍事作戦は、停戦交渉に反して、エスカレートしている。NATO加盟国は、明日は我が身のことと思い、防衛力を強化している。現に9月9日から9月10日にかけて、ロシアと国境を接するポーランドは、領空侵犯を受けたと、訴えた。ロシア軍の無人機が、ウクライナ領土を越えて、ポーランドに飛来したのである。NATOのルッテ事務総長は9月12日、記者会見を行った。ポーランドへの無人機侵入について、確かな証拠はないとしつつも、「無謀であり、許されない」と厳しい口調で述べた。ポーランドのシコルスキー外相は9月12日、訪問先のウクライナの首都キーウで、記者会見において、被害の詳細を語った。7時間に渡って、19の無人機がポーランド上空にとどまったと主張し、「ロシアはウクライナを越えて、戦争を拡大している」と警戒感を表した。
詳細 ポーランドの領空侵犯について NHK NEWS WEB 2025年9月13日午前8時50分付け
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250913/k10014921551000.html
写真=シコルスキ外相 2025年2月27日 来日時日本記者クラブにて 出展 時事通信:外信部 同日19時9分付け
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025022701185&g=int
シコルスキ外相は、2025年2月27日、来日時に東京都千代田区の記者クラブの会見に望んでいた。トランプ大統領がロシア寄りとの見方を示し、的確に言葉を選んで、わかりやすく表現した。「疲弊し切ったロシアに、生命線と敗北の淵から勝利をつかむ機会を与えているようである」
トランプ大統領の他国への不干渉の姿勢を見て、「欧州は米国の軍事的抑止力に頼りすぎていた」と振り返った。防衛費を上積みしている自国の姿勢から、日本にも防衛を強化することが望ましいとの見解を明らかにした。
遡ること、2022年11月15日、ポーランド国内では、ウクライナ国境沿いのプシェヴォドフ村に、ロシア産とみられる一発のミサイルが着弾していた。当時ウクライナ空軍司令部によると、ロシアから飛来した96個の兵器が発射されていたのである。そのうち一発のミサイルは、ウクライナ空軍が迎撃した際、誤って国境を越えて、ポーランドに落下した。ウクライナ空軍は、ポーランド領内のロシア製ミサイル着弾事件について、アメリカの初期評価を、概ね認めている。ウクライナへの軍事侵攻が長期化するにつれ、旧東側陣営として、率先して国防費を上げている。同国のトゥスク首相は2025年8月28日、2026年の国防支出を2,000億ズウォティ=約8兆円を計上すると明らかにした。GDPに占める国防支出の割合は4.8%になる。新たに2025年から2035年まで、国防支出について総額1兆9,000億ズウォティ=約76兆円に達するとの見通しを立てた
詳細 航空万能論 2025年8月31日付 ポーランドの国防費について
https://grandfleet.info/european-region/poland-plans-to-spend-200-billion-zloty-on-defense-in-2026-amounting-to-4-8-of-gdp/
ポーランドの議会においては、対ロ政策においては、概ねまとまっている。2院制で、定数は上院100名、下院460名である。上院は、2011年以降中選挙区制から小選挙区制に変更した。下院は非拘束名簿式比例制度を採用する。今政治の停滞が懸念される事態に陥っている。議会制民主主義が機能している同国において、確かに首相が実権を握り、積極的に外交を行う。一方、議会とは別に大統領が存在し、法案の拒否権を有している。対ロ政策の行方を占う大統領選挙戦が、2025年6月1日に行われた。翌2日に、選挙管理委員会(PKW)は、保守派のナヴロツキ氏が、得票率50.89%を獲得し、当確と報じた。対抗馬のワルシャワ市長でリベラル派のラファウ・チャスコフスキ氏(49.11%)を僅差で上回ったのである。首相のトゥスク氏が属する政党「市民プラットフォーム(PO)」は、議会の法案を速やかに通すため、チャスコフスキ氏の支持を表明していた。いわゆる大統領選挙戦は、トゥスク首相の信任投票の意味合いも込められていた。
ナヴロツキ氏をバックアップしたのは、愛国主義的右派の野党「法と正義」(PiS)である。1983年3月3日生まれの42歳になる新大統領は、歴史学者の肩書きを持つ伝統的なカトリック信者である。ポーランド王国時代の栄華を忍び、トランプ大統領に似た自国第一主義者で、移民政策には反対の立場を貫く。
写真=ナヴロツキ氏 2025年6月1日、決選投票の出口調査結果で優勢が伝えられた際の表情 出展:ロイター通信 掲載元 詳細記事 朝日新聞デジタル 2025年6月2日14時24分最終更新
https://www.asahi.com/articles/AST617D8JT61UHBI002M.html
確かに前任者で当選回数上限の2期10年務めたドゥダ氏も、トゥスク首相、その前任者モラヴィエツキー首相の政策について、拒否権を発動していた。前任者ドゥダ大統領は、政治家の司法介入を制限する法案を拒否したのである。もっとも議員の大多数が、法案に賛成すれば、大統領の拒否権を覆せる。その割合は3分の2とハードルが高い。与野党の議席数が拮抗している状態では、大統領の許可なしでは法案が通らない。
詳細 ポーランド大統領選挙戦 BBC NEWS JAPAN 2025年6月2日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/c5y6rjnqe9go
選挙戦を勝ち上がったナヴロツキ氏は、2025年8月6日、正式に第7代大統領に就任した。早速8月25日付けで、同年9月末に期限を迎える議会が延長したウクライナ難民支援法の一つ、児童手当の支給について拒否した。同国に身を寄せるウクライナ人は推定100万人、ファシストらしく自国民を優遇する政策から、ウクライナ難民の児童手当支給や医療の無償提供を認めなかった。なおポーランドで就労しているウクライナ人は、児童手当や医療のサービスを受けられる。新たに難民を受け入れ、就労の機会を与えることに制限をかけた。与党政権と大統領の間でいかに歩み寄れるか、国の運命を左右する。
詳細 ナヴロツキ氏の拒否権について 時事通信 2025年8月26日14時32分付
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025082600628&g=int#goog_rewarded
第5章 国連安保理でロシアの非難声明が採択される
米ニューヨーク・シティに本部を構える国連でも、ポーランドへの領空侵犯について、協議された。ロシアのネベンジャ大使は、「今回の攻撃で使用した無人機の性能では、ポーランドに到達しない」と非を認めなかった。西欧諸国は、自国領土の侵害を受けたと主張するポーランドへ連帯を示した。日本も加わり、45カ国以上が、非難声明を採択し、ロシアへ圧力をかける。ウクライナへの軍事作戦を続けるロシアは、西欧からつまはじきにされた。
写真=ネベンジャ大使 掲載元 詳細記事 ネベンジャ大使の言い分について NHK NEWS WEB 2025年9月13日午前10時47分付
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250913/k10014921841000.html
NATO諸国が一段と危機意識を抱く中、続く9月13日に、ルーマニアが、自国領土からロシアの無人機を検知したと明らかにした。同国のモシュテアヌ国防相は13日、即座にSNSに投稿する。ロシアの無人機がルーマニアの領空を侵犯し、F16戦闘機2機が緊急発進する事態になったと、報告した。
詳細 ルーマニアの領空侵犯 NHK NEWS WEB 2025年9月14日18時49分付
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250914/k10014922691000.html
9月19日には、バルト3国のエストニアが、領空侵犯を受けたと主張する。あわせてNATO第4条に基づき、協議を要請した。政府によると、同国の上空を12分に渡って、ミグ31戦闘機の3機体が、飛行した。領空侵犯は過去3度平均4分だったものの、4回目は3倍の長さになる。ロシアの国防省は9月20日付けで、SNSにて「領空を侵していない」と主張した。
写真=9月19日にバルト海上空を飛行するミグ31戦闘機 詳細記事 写真 掲載元 読売オンライン 2025年9月20日19時59分
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250920-OYT1T50124/
ロシアは、意図的に領空侵犯をして、旧東側陣営のNATO諸国をけん制したのである。9月12日から16日までの日程で、共同軍事演習「ザーパド2025」を行った。ベラルーシの首都ミンスクから西方へ72km、ポリゾフ近郊の演習場が、西欧の報道陣にも公開された。ベラルーシ国営通信「ベルタ」は、核弾頭を搭載可能なロシアの新型中距離弾道ミサイル「オレシニク」の評価と展開も行ったと明らかにした。米国防省は2024年11月21日に、極超音速中距離弾道ミサイル「オレシニク」を初めて使用したとの見方を示していた。
詳細 軍事演習について THE SANKEI SHINBUN 2025年9月16日22時4分付
https://www.sankei.com/article/20250916-HGP64AEBAJOPRCZIQXFGMF4NDU/
ベラルーシは、ロシアと同じ専制主義国家、新たにSCOに加盟することにより、中国やインドとの経済や安全保障政策を強化していた。強権的なルカシェンコが存在する限り、西欧とは距離を置き、ロシアと属国のような形でありつづけていく。
■ドイツ14年ぶりに“徴兵制”復活か ロシアの脅威に備えるためも若い世代「待遇は軍の方が絶対にいい」「まったく関心がない」
(TBS NEWS DIG - 09月29日 17:04)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=266&from=diary&id=8496178
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