<第13回 ガザ地区の窮状 進まぬ休戦交渉 民間人の被害>
ガザ地区では、民間のインフラ施設の破壊が進む。北部ガザシティのカフェ、キリスト教の教会、非難区域のテントを含め、IDF(イスラエル国防軍)の空爆にあい、罪のない多くの人々の血が流れた。アメリカが主導するGHF(ガザ人道財団)の食糧配給所付近でのIDF兵士による銃撃事件も耐えない。現場からの報告によると、IDFの兵士に正しく情報が伝わっていない可能性がある。交戦勢力のハマスは、ムスリム同胞団のパレスチナ支部から立ち上がった経緯がある。社会奉仕団体として、病院や学校建設に勤しんでいた。あくまでもIDFの標的は戦闘員、少ない情報では、病院関係者と戦闘員の区別がつくとは考えられない。IDFは、食料配給所付近での兵士による発砲事件について「調査中」と回答しながら、期日を設けていない。国際社会は、そもそも真相解明を期待していない。カタールで続く停戦交渉やガザのインフラ被害について検証する。
目次
・第1章 危機は深刻
・第2章 民間人やジャーナリストの犠牲
・第3章 戦闘は続く 人質解放を願う人々
・第4章 キリスト教の教会が被害。食糧配給所での最大の人的被害が発生する
第1章 危機は深刻
中東地域に影響力を及ぼすのはアメリカのトランプ大統領だった。アメリカ東部時間7月1日、、自身が設立したSNSトゥルース・ソーシャルに、イスラエルがガザ地区における停戦合意に必要な条件に合意したと報告した。停戦期間は60日、過去2回と同じく、双方拘束者の身柄交換が含まれる。2度も破綻した事実から、恒久的停戦へ向けて協議を行う。
7月2日付「タイムズ・オブ・イスラエル」紙によると、新たな停戦案では、60日間の停戦期間中にハマスが10人の生存するイスラエル人質を解放し、18人の遺体を返還する。さらに踏み込んだ内容も盛り込まれていた。恒久的な停戦が成立した場合には、残りの人質も段階的に解放する。6月22日付AP通信によると、現在50人の人質がガザで拘束されており、そのうち半数未満が生存しているとみられている。
詳細 アメリカが作成した停戦案 JETRO 2025年7月3日付
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/07/3be56ea3aec9c193.html
ハマス側は7月4日、アメリカが作成した60日の停戦案について「仲介国に前向きな回答を伝えた」と声明を出した。
合意に至らなかった背景には、紛争地での中立の原則に反して、IDF(イスラエル軍)がガザの物資の行方を握っているからである。ガザ地区に食料を配布するGHF(ガザ人道財団)は、アメリカが協力した組織だった。3月2日に検問所を封鎖したものの、5月20日に国際的圧力に屈して、解放した。初日に93台のトラックがガザ地区に入ったものの、IDFは急に締め出した。変わりに同月27日から、アメリカがバックに付くGHFの食料を積んだトラックが、一方的に指定した4箇所に食料を配布したのである。財団の職員の警護を担うIDFの兵士による、ガザ住民への発砲事件が耐えなかった。ガザ保険当局は6月24日時点で、食糧配給所付近でのIDFの兵士による発砲で、死亡した住民は累計516人、負傷者も3800人近くにのぼると発表した。6月24日未明にも中部の配給所でイスラエル軍の発砲があり、21人が死亡。南部でも25人が死亡した。目撃者の一人はAFP通信に対し、軍部隊は「無差別に銃撃した」と証言した。
アラブのメディアによると、ハマス側は、2025年3月2日以前のように、食糧配給について、国連、または赤新月社に戻すように、修正案を提示したとのことである。
食料の配布方法を変えれば、ハマスは納得する。楽観的になったトランプ大統領は、7月4日にホワイトハウスの記者団に対して「合意にいたる可能性が高い」と期待感を示した。
写真=7月8日にGHFから支援物資を受け取った人々 出展:AFP通信より 掲載元 詳細 IDFの発砲事件について 時事.com 2025年6月25日14時6分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025062500652&g=int
詳細 停戦の修正案やトランプ大統領の発言について NHK NEWS WEB 7月5日18時59分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250705/k10014854901000.html
停戦について、7月7日から8日の2日間の日程で、ホワイトハウスを訪問したイスラエルのネタニアフ首相との間で交わされた。両者のホワイトハウスでの会談は、4月7日以来3ヶ月ぶりだった。会談内容は非公開だったものの、バンス副大統領も同席していた。仲介国のカタールでの停戦協議の進捗状況についても確認したとみられる。イスラエルの代表団は7月6日にカタールの首都ドーハに到着し、残された人質の解放と遺体の引取りのために停戦の意思を伝えた。次に、カタールとエジプトが入り、ハマスとの間接交渉に入る。
写真=カメラが入った会談の模様 出展 詳細記事 NHK NEWS WEB 2025年7月9日11時12分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250709/k10014857651000.html
ガザの復興については、イスラエルが一方的に勧めている。同国メディアは7月8日、ガザ地区南部に人道都市を設け、住民を移転させる計画を、ネタニアフ首相が全面的に支持したと報じた。計画の主導者の一人、カッツ国防相によると、人道都市は南部の「ラファ」に設ける。検問所を設置し、移住希望者の身元をチェックし、ハマスの戦闘員と無関係であれば、中へ通す。常にイスラエル軍が、人道都市の警備にあたり、ハマスの戦闘員との戦いに備える。IDFに包囲された人道都市の中は、これまで以上に窮屈な思いを味わう。なぜなら、都市計画によると、人道都市から外へ出ては行けないからである。いわゆる「監獄」に過ぎない。2007年以降、反ユダヤ感情に突き動かされたハマスとの戦いに備え、IDFは東京23区程の広さのガザ地区とイスラエルを隔てる分離壁を設置していた。新たな安全保障計画では、ガザ地区内に緩衝地帯を広げ、住民をさらに狭い地域に閉じ込めるのである。国際社会から「天井のない監獄」と表現されているガザ地区は、ますますアラブ人の行動は抑制される。IDFは、旧約聖書のカナンの地を守り抜くべく、アラブ人を徹底して弾圧した。将来の反ユダヤ感情に突き動かされた次世代のハマスを産まないように監視する計画である。特定の民族を強制移住させ、隔離政策をとる方法は、ジュネーブ条約に反する。アラブ連盟の方は、アラブ人による国づくりを支援すると表明していた。イスラエルとアラブ諸国の距離は遠のくばかりだった。
詳細 ラファに計画した人道都市について 2025年7月9日19時56分付け NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250709/k10014858401000.html
第2章 民間人やジャーナリストの犠牲
IDFによる食料配布計画は、ガザ住民を誘い込む死の罠だと、世界各国の人権団体は、痛烈に非難している。IDFは、食料配給により、ガザ住民を殺戮する意図はない、ときっぱりと否定した。イスラエルの有力メディアの一つハアレツ紙によると、6月27日付、GHF(ガザ人道財団)を警護する兵士が、発砲を命じられたと報じた。有力紙ハアレツのインタビューに応じた兵士によると、援助拠点へ向う経路を「殺戮の場」との表現で、指揮官から群衆への発砲命令が出たとのことである。
食糧配給所には、ガザの200万の住民全員に行き届くように配慮されていない。取り合い合戦になれば、無秩序状態と化す。適度に射撃をすることにより、群集を思いとどまらせる。食料へ殺到人数を絞り込むことにより、警備の負担を軽くする。ハマスの戦闘員を見張るための人員にも裂く事が出来るうえに、住民の行動もコントロール下におくことが可能になった。すなわち、IDFの食料配布計画は、「住民の強制移住」、「ハマスの戦闘員のあぶりだし」に効果的だったのである。
ハアレツ紙が、発信したいわゆる食料を盾にとった「死の罠」計画について、カッツ国防省もネタニアフ首相ももちろん認めていない。IDFの報道官も「民間人への意図的な攻撃は禁じている」と、ハアレツ紙の内容を事実無根と否定した。
現場のやり取りについて、政治家や軍の上層部に正しく伝わったとは限らない。目撃証言から、食料を求めて殺到する民間人を狙ったIDFの兵士による発砲事件が起きている事実がある。米CNNも食料配布現場周辺でのIDF兵士の発砲を裏付ける報告をした。現地住民の負傷者を含め十数人が、IDFの兵士が、住民に向けて一斉射撃を行ったとの証言をまとめた。現場の様子を記録した音声や回収された弾丸を、武器の専門家に提示したところ、IDFの機関銃との回答を得られた。
当のIDFは、食料配給所に近づいてきた民間人に警護射撃を行ったことは認めている。死傷者が出たことを指摘されると、「調査中」と回答を避けていた。
イスラエルの有力紙ハアレツの報道から、IDFの法務総監も対応を迫られた。管轄内の調査機関に向って、食料配布拠点周辺での兵士の射撃行為を調査するように命じたのである。差し迫った脅威がないにも関わらず、食糧配給所に並ぶ人数をコントロールするための意図的な発砲は、国際的にも「殺人」に他ならない。国際法の原則に従って、IDFの法務総監は、捜査する必要に迫られた。実際命令者や発砲者を、軍法会議にかけるのか、定かではない。ハマスの戦闘員が紛れ込んでいる可能性があると、警戒している以上、現場の兵士はささいなことで発砲しかねない。究極の緊張状態にさらされているガザ住民はもちろん、IDFの兵士の心情を、軍の上層部や政治家はわかるはずはない。イスラエル軍によるパレスチナ人への「ジェノサイド」疑惑は残ったままである。
詳細 IDFの兵士による発砲事件について CNN.co.jp 2025年6月29日付
https://www.cnn.co.jp/world/35234866.html
危険を顧みず、ガザの窮状を訴えるジャーナリストの死も相次いでいる。6月30日、ガザシティの港湾近くのカフェが、IDFの空爆のターゲットにあい、瓦礫と化した。2022年10月7日の軍事衝突以降、数少ないインフラが機能した施設だった。ジャーナリストらが身を寄せ、契約先の新聞社を含めて、情報発信していた。爆撃による被害者が運ばれるガザシティのシファ病院のサルミヤ医院長によると、死亡者41人、負傷者75人である。
IDFは、軍事ターゲットをカフェに定めた件について、米CNNの取材に次のように回答した。「ハマスのテロリスト数人を空爆した。空爆に先立ち、上空からの監視活動を用いて民間人への危害リスクを軽減する措置を講じた」
サルミヤ病院長の話によれば、犠牲者の大半は女性や子供だった。また、集中治療室のベッドと麻酔が不足していると、必要物資の補給を求めた。病床は既にキャパシティーオーバーになり、廊下でも治療していると、窮状を訴えた。ハマスが管轄するメディアによると、軍事衝突後死亡したジャーナリストは228人と数値を示した。そのうちの一人、3月24日には、朝日新聞の通信委員を務めた29歳のマンスール氏も含まれている。(トップの関連日記を参照)
ガザシティのカフェの空爆 詳細記事 写真掲載元 CNN.co.jp 2025年7月1日 11時43分
https://www.cnn.co.jp/world/35234925.html
7月2日も避難民に寄り添ってきた医療従事者の死亡が確認された。ガザシティのインドネシア病院のマルワン・スルタン医師が、空爆により、家族数人と共に命を落とした。同日ハマスが管轄するガザ保健省は、長年に渡り医療に貢献した人物だったと、声明を出した。
写真=マルワン・スルタン医師 掲載元 詳細記事 Wedge Online 2025年7月3日付
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/38150?layout=b
IDFの仕業で罪のない人々の命が奪われたと、国際社会にアピールした。一方でIDF側は、「主要なテロリストを正確に狙った」と、ハマスとは異なる主張をした。ガザ保健省の声明により、無関係な人が巻き込まれた件については、非を認めず、「調査中」との回答を出す。複数のメディアによると、イスラエルが一方的に人道区域に設けた「アルマワシ」でも、空爆があり、少なくとも子供5人が死亡し、多数の負傷者が出た模様である。
ガザ内部の状況を聞いた国連は、北部地域にて機能している病院はないとの見解を出していた。マルワン・スルタン医師は、脆弱な設備の中、工夫を凝らして、運用していたといえる。ガザ保健省は「無関係な人を標的にしている」と国際社会へ訴えかけた。IDFは「民間人の被害を最小限に抑えるように努力している」と決まりきった言葉を繰り返す。実際は、ジャーナリストや医療関係者、または報道関係者が、空爆によって犠牲になっている。IDFは、被害が繰り返される理由について、ハマスに押し付ける。なぜなら、戦闘員が、民間人を盾にとって、防備しているからである。ハマスが、国際法に違反していると、指弾した。
ハマスは、元を辿ると、ムスリム同胞団のパレスチナ支部から立ち上がった。神の下は平等の理念から、余ったものは、ザカート(喜捨)する。初期イスラムの教えを重んじ、学校や病院の建設に勤しんだ。社会奉仕活動を通して、支持を集めたのである。
IDFは、病院への空爆について、非はなかったと、弁解している。辛うじて生き残ったマルワン・スルタン医師の娘は、父の死を受けて、AP通信の取材に応じた。娘のルブナ・アル・スルタン氏は「F16戦闘機のミサイルが、父の部屋を正確に狙って直撃した」と被害の一部始終を語る。「自宅のすべての部屋は無傷だったが、父の部屋だけがミサイルで破壊された。父はその部屋で殉教した」と狙い撃ちされたと主張したのである。
マルワン・スルタン医師をハマスの戦闘員と決め込み、精密誘導団を使って、殺害計画を立てていた可能性は捨てきれない。
病院や難民キャンプ、カフェを含め、民間施設も破壊され、人々の行き場はない。IDFの兵士は、正しく情報が伝わらず、医療従事者をハマスの戦闘員と勘違いしていたといえる。社会奉仕団体から生まれた組織である以上、ハマスはネットワークが広く、戦闘員から医療従事者まで幅広い。こうした間違いは、決して許されるものではない。ガザでは日々人々の命が脅かされている。
第3章 戦闘は続く 人質解放を願う人々
イスラエル本国に暮らすユダヤ人の中にも、ガザでの軍事作戦を反対する抗議行動が起きていた。7月5日に、エルサレムでは、大規模デモが起きた。首相公邸前では、「(人質の)今すぐ帰還を」、または「ジェノサイドをやめろ!」との声が聞こえてきた。人質のエビヤタール・ダビドさん(24)の兄イライさんは「人質全員の解放につながる包括的な合意を結ぶ時だ」と声を大にして叫んだ。
IDFによると、7月5日時点で直近24時間以内にガザ地区の130箇所を空爆した。ガザの保健当局は6日、同時多発的な空爆により、80人が死亡したと明らかにした。IDFは、軍事行動の理由について説明した。「ガザ人道財団」(GHF)が指定する最南部ラファの配給所にて、手投げ弾が投げ込まれたのである。そのGHFに所属する米国人の職員2名が負傷した事件は、ハマスの戦闘員が犯人と一方的に決め付けた。
写真=7月5日のイスラエルの軍事作戦とデモ行進 掲載元 詳細記事 読売オンライン 2025年7月6日22時8分付
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250706-OYT1T50089/
IDFは、軍事作戦を拡大していく中で、ハマスの戦闘員の潜伏先を突き止めれば、集中砲火を浴びせる。複雑な地下網に隠れるハマスの戦闘員は、空から見張っていても、居場所を正確に把握することは難しい。被害にあうのは、逃げ場のない子供やお年寄りだった。
7月13日、ガザ地区中部ヌセイラトの配水所にて、IDFの攻撃を受けた。地元当局者は、少なくとも子供を含む8人が死亡し、負傷者は多岐に上ると報告した。IDFは、言い逃れをせずに、過ちを認めた。ハマスと共闘するイスラム聖戦の戦闘員を狙った際、誤作動により、標的から数十メートル離れた場所にミサイルが着弾したと説明する。「無関係な民間人に危害が及んだのは遺憾だ」と非を認めたものの、謝罪はなかった。いわゆる標的のハマス、またはイスラム聖戦の戦闘員に命中せず、一発ミサイルを無駄にしたとの後悔がよみとれる。
詳細 配水所でのミサイル着弾について 2025年7月14日 午前7時26分 ロイター通信
https://jp.reuters.com/world/us/Q4277D3CKRNJBLU4MK4BD5TJFI-2025-07-13/
7月16日、アメリカの首都ワシントンのホワイトハウスでは、トランプ大統領と仲介国のカタールを代表してムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニー首相と会談した。カタールで続く、ハマスとイスラエル政府との間接交渉においては、米国からウィトコフ中東担当特使が、リアルタイムにて進捗状況をうかがっている。ホワイトハウスにて、カタールのムハンマド首相と、ガザでの停戦案に加えて、イランとの核協議の再開にも踏み込んだ議論をしたとみられている。カタールは、イランとの関係も深く、仲介役を担える存在だった。
詳細 ホワイトハウスでの模様 ロイター 2025年7月16日午後 2:09
https://jp.reuters.com/world/security/BRPXFE7E7VNN5HJPWRSHOLNRAY-2025-07-16/
第4章 キリスト教の教会が被害。食糧配給所での最大の人的被害が発生する
以下 ガザのカトリック教会の砲撃事件について 詳細記事 写真掲載元 BBC NEWS 2025年7月18日付
https://www.bbc.com/japanese/articles/cx2jmjx2623o
停戦協定が停滞するたびに、ガザ地区内では破壊が進む。7月17日には、ガザシティにおいて、キリスト教の教会が被害を受けて、3人の死者が確認された。一連の事態を受けて、「流れ弾が教会に直撃したことを深く遺憾に思う」との声明を出し、原因を調査中と明かした。聖家族教会を管轄するラテン典礼エルサレム総大司教庁は、教会が「イスラエル軍によって攻撃された」と明らかにした。9人が負傷し、そのうち1人は病院に搬送され重体という。アルゼンチン出身のガブリエレ・ロマネッリ主任司祭は軽傷を負った。ローマ教皇レオ14世と共に、バチカン市国をあげての、停戦を改めて呼びかけた。砲撃を受けた際、教会には約600人が避難していたとされる。その大半は子供で、特別なケアを必要とする人も54人いたという。
写真=負傷したガブリエレ・ロマネッリ司祭
ガザ市内の聖家族教会は、IDFが民間人の非難区域に一方的に指定した地区に存在する。イスラム教スンニー派が多数派のガザ地区の住民の中で、少数のキリスト教の信者が暮らしていた。信者たちは、戦闘に巻き込まれ、自宅を破壊され、教会に身を寄せ合って生活していた。2025年4月にこの世を去った前フランシスコ教皇は、信者と共にガザ住民を気遣い、電話を通して、励ましのメッセージを送っていたとのことである。現地の被害状況について、ヴァチカン・ニュースが、大々的に発信している。
ラテン典礼エルサレム総大司教ピエルバッティスタ・ピッツァバッラ枢機卿は、聖家族教会が戦車の砲弾で攻撃されたと、事実上IDFの兵士による殺害行為だと訴える。
「戦車だったのは確かだ。イスラエル国防軍(IDF)は誤射だと言っているが、それは定かではない。(IDFは)教会を直接攻撃した」と強い口調で非難した。
慈善団体カリタス・エルサレムは、砲弾が教会の屋根に命中したことを上げ「破片やがれきが中庭に飛び散った」と当時の緊迫した状況を語った。
写真=損壊した教会
カリタス・エルサレムも追随するように、現場の様子を伝えた。「当時、母屋の外には数人いた。その中にはカリタスが心理的、社会的に支援を提供するテントの中で座っていた、高齢女性2人が含まれていた。2人とも重傷を負い、15分後に救急車でアル・アハリ病院に搬送された」と実に細部まで明らかにした。
「教会の入り口に立っていた若者3人も重傷を負い、民間車両で病院に運ばれた」と続けて話した。
キリスト教の教会にハマスの地価網の出入り口があったとの根拠はない。例えハマスの戦闘員が潜伏し、教会の関係者や避難民を盾にとっていた場合、真っ向から銃撃戦を開始すれば、甚大な被害が及ぶ。現場の目撃者の証言から、IDFの兵士は、詳細に狙いを定めていたことは確かである。
IDFは、ハマスの戦闘員との争ううえで、民間人の命を顧みない。パレスチナ保険省は7月20日、物資の配給の列に並んでいた民間人が被害を受けたと明らかにした。北部で67人、南部ハンユニスで6人を含め、犠牲者は合わせて73人になる。北部については全て同じ配給所か定かではない。ガザ全域での一日での支援物資を求める民間人の死者は、過去最大規模となった。IDFは、発砲事件により、死傷者が出たことは確認したものの、原因は確認中としている。IDFは、民間人の意向を無視するかのように、一方的にガザ北部のベイトラヒヤやジャバリヤ、ベイトハヌーンに退避を警告した。IDFのアラビア語を操る報道官は20日、「これらの地域は戦闘地域で極めて危険である」と、民間人には遠ざかるように注意する。
シファ病院のアブサルミヤ院長によると、20日朝、ガザ市北西で支援物資を得ようとしていた人々がイスラエル軍に撃たれた。病院には死傷者や飢えた市民が殺到して、医療体制が追いついていないと、窮状を訴えた。パレスチナ赤新月社によると、ガザ市のサラヤ野戦病院には120人の負傷者が搬送されたほか、2人の遺体も収容した。パレスチナ赤新月社は、ベイトラヒヤの北のジキム地区からの支援物資を待っていた市民がIDFの兵士に狙われたとし、臨時のベッドを設けたと、明かした。一方、デイルアルバラの住民は20日、IDFがビラを散布し退避を命じたため、病院に避難したとのことである。「安心して眠れず、食べ物も水もなく、小麦粉もない。私たちは飢えている」と悲痛に叫んでいた。
写真=食糧配給所で負傷した人を運ぶ様子 出展:AFP/Getty Images 掲載元 詳細記事 7月20日のガザ地区の窮状について 2025年7月21日午前8時31分 CNN.co.jpより
https://www.cnn.co.jp/world/35235734.html
地元保険当局によると、食糧配給所付近での発砲事件の死者は1021人にのぼる。人々の命をつなぐ食料によって、殺戮の場と化していた。西欧諸国は、深く憂慮し、日本も参加して7月21日に共同声明を出す。EUをあわせて、各28カ国外相らが、イスラエル政府に対して、国連による物資搬入の制限を解除するように求めたのである。カタールでの停戦交渉の場でも、ハマスの要求の一つは、国連による物資の搬入だった。イスラエルは応じる気配を見せていない。国際社会が圧力をかけ続けることにより、イスラエル側も切迫感が増す。アメリカのトランプ大統領は、停戦の仲介を続けるものの、沈黙を保っていた。
詳細 共同声明について NHK NEWS WEB 7月22日午前5時4分付
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250722/k10014870641000.html
イスラエル軍とハマスの戦いは、果たして停戦へ折り合いを付けられるのか、仲介国カタールでの交渉しだいだった。ガザ地区では、物資不足により、200万人の住民が困窮にあえいでいた。例え食料が死の罠だと認識していても、黙って避難所に閉じこもっていては、飢えで命を落とす。つまり、住民たちは、生殺与奪の権利をIDFに握られているのである。イスラエルの横暴な手段により、中東情勢は悪化の一途を辿っている。
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