デンソー、GAFAの下請けにならぬ ソフトに年2500億円
2022年11月15日 5:00
トヨタ自動車グループの中核企業であるデンソーが「モノづくり企業」や「部品メーカー」といった枠を打ち破ろうとしている。日産自動車を超える年間の研究開発費のうち、半分超の2500億円規模をソフトウエアに振り向け、自動車分野への浸食を始める米IT大手「GAFA」に対抗する構えだ。電動化や自動運転を指す「CASE」の時代に勝ち残る姿を模索している。
「どこまで入り込んでくるんだ」。6月、米アップルの発表内容を聞いたトヨタグループのある幹部は戦慄を覚えた。新しい基本ソフト(OS)「iOS 16」や対話アプリの改良にあわせ、OSに搭載して自動車とスマートフォンを連携する機能「カープレー」の刷新を明らかにしたからだ。
カープレーがカバーするのは車載スクリーンを通じた音声通話やアプリの操作が中心。それが2023年にもリリースされるバージョンでは、エアコンの調節や速度計の表示まで可能になる。スマホやソフトを通じて自動車の一部を操るようになるわけだ。自動車分野への野心を隠さないアップルの動きにこの幹部は「不気味だ」と警戒心をあらわにする。
デンソーの現時点の主力事業は世界シェア首位のカーエアコンをはじめ、センサーやエンジンといった車に関連するハードウエアだ。
だが、デンソーや独ボッシュといった世界の大手部品メーカー「メガサプライヤー」は、ソフトへの傾斜を強める。独壇場だった車部品の制御やデータの領域に、ソフトに強いGAFAが入り込み、車の付加価値の源泉がソフトに移り始めているからだ。「部品単品の販売を続けていてはGAFAの『下請け』になりかねない」(デンソー幹部)との危機感は強い。
メガサプライヤーは、研究開発費で一部の自動車メーカーを上回る規模を持つ。デンソーはトータル年間5000億円規模で、22年3月期(総額4975億円)にはその51%の2500億円強をソフト開発にあてた。この比率はこの10年で10ポイント伸びており、半数超をソフト向けが占めるようになった。効率的なソフト開発やデータを使った生産改善を急ぐ。
自動運転の車が進んでいくと霧が立ちこめ、トンネルを抜けると車載カメラの画面が白くなる「白飛び」が発生――。カメラで周囲を認識する自動運転車にとって白飛びは事故につながりかねない大きなリスクだ。これに対応しようと繰り返されている走行試験は、実際の道路で実施されているのではない。すべてはコンピューター上で再現された仮想空間内のシミュレーションだ。
従来、デンソーは開発段階の部品の性能を評価するため、試験場や公道で実際に車を走らせてデータを集めるのが常だった。それを仮想空間に移しているのが、車用ソフト開発の専門家を集結した戦略子会社ジェイクワッドダイナミクスだ。19年の設立でトヨタグループ内のエンジニアを集め、設立時の2倍にあたる500人超の開発要員が在籍する。
運転手を監視するカメラの映像でよそ見を判断してスムーズに障害物を回避したり、自動運転中に下り坂と判断すればエンジンを止め燃費を約10%引き下げたり――。エンジニアたちは蓄積したデータを活用し、仮想空間で自動運転や車の燃費向上につながる車用ソフトのシミュレーションを繰り返している。
車用ソフトは開発過程で評価すべき走行環境のシナリオが数千にも及ぶとされ、作業は膨大になる。東京・日本橋のオフィスには実際に車を走らせて得た数十万キロメートル分の走行試験データが眠る。そこから評価すべきシナリオを人工知能(AI)が瞬時に選ぶ仕組みを今年採り入れた。シミュレーションやAIを使うカイゼンで「ソフトの開発期間を3割削減したい」(隈部肇社長)という。
ソフトの活用で生産現場の競争力も高める。デンソーはデータとシミュレーションで工場をまるごと効率化する「デジタルツイン工場」にも注力する。
9月、愛知県刈谷市のデンソー本社工場で実証実験が始まった。あらゆるデータをコンピューターに集め、1つの工場を仮想空間で再現する。例えば、品質と製造工程のデータがつながることで「溶接時に使う電流が大きくなると製品の性能が悪化する」といった傾向をすばやくつかむことができる。
シミュレーションによる試行錯誤を促すため、社員1人につき1台デジタル機器を提供する考えだ。最終的には品質の確認といった作業はすべて仮想空間で可能にするのが目標だ。25年以降に他の工場や取引先にも広げる考えだ。
自動運転や「つながる車」の進化にともない、今後も車用ソフトの重要性は加速度的に増すとみられている。PwCストラテジー&は、30年には車両の付加価値のうち最大60%をソフトが占めると予測し、開発費も8割伸びると見込む。米テスラは車の性能を更新するソフトを追加で販売し、高い利益率を実現している。
「デジタル化といっても何をすれば」。そんな声が日本の多くの車部品メーカーからは漏れる。日本最大の車部品メーカーであるデンソーのデジタル化の成否は、日本が産業構造を転換できるかの試金石にもなる。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD3127C0R31C22A0000000/
部品の下請けのままでは、安く買い叩かれ賃金も上がりません。
より生産性の高い企業体質にしようとすれば、どうしてもソフトウィアの開発に行き着きます。
ソフトバンクやGAFAMがいい例です。
しばらくは試行錯誤が続きますが、何処かでブレイクスルーを起こして欲しいと思ってます♬
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