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2022年07月19日09:01

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DVD「男と女」とその続編

続編は「人生最良の日々」のほうです。

まずおわび。
先日、「男と女」のあらすじを紹介したんだけど

間違ってましたー!

子がドーヴィルの寄宿学校に入っていて、週末に会いにくるふたり。
女が汽車に遅れて、たまたまそこにいた男がパリまで車で送る。
次の週末いっしょにドーヴィルへ行きましょう、と男は電話番号を聞く。
翌週ふたりで車でドーヴィルへ、このときまでにキスする間柄になっている。
子どもたちとレストランで食事、その後船に乗ったら子が船酔いして大変。
帰り道、翌週はモンテカルロラリーがあると男が話す。
男はラリーで優勝。
女はテレビで見て「おめでとう、愛してます」と電報を打つ。
記念パーティー会場で電報を受け取った男は、パリへ向かう。
女はドーヴィルに出かけて不在、ドーヴィルへ向かう。
ドーヴィルの海岸で遊ぶ子たちと女にパッシングする。
気づいて駆け寄る女を抱き上げてくるくる回る。(ここのBGMがダバダバダ…)
帰り道、ホテルノルマンディで抱き合う。
女は死んだ夫を思い出して冷める。男、怒るがどうしようもない。
女は列車で帰る。
男は車を飛ばしてパリへ、ホームで女を迎える。抱き合ってくるくる回るふたり。

「くるくる」のシーンを前後取り違えてました、すみません。
しかも駅ホームのくるくるは抱き合う二人の周りをカメラが回るし。

メイキングも見たけど、クロード・ルルーシュ監督はセリフ教えないのね。
「俳優にセリフ教えるなんて馬鹿なことしない」と言ってた。
だいたいこんなふうに進めたい、とだけ伝える。しかも役者ごとに別に。
こうすると自然で思いがけない新鮮なシーンになるんだって。
道理で映画内なのにドキュメンタリーみたいなシーンがあると思った。
子たちとレストランのシーンも、あまりよく知らない2家族が初めて食事して、
何を話題にしようか困っている雰囲気がきちんと出ていた。
男が「くだらないことを映画みたいって言うけどそうじゃないよね」って言ったり、
女に向かって突然「女優になったらいいのに」と言ったりする。
女は映画のスクリプターの仕事をしてる、という設定なので
「女優にはなりたくないわ、今の仕事が好きだし、嘘をつかなくていいもの。」と言う。
これってアドリブなのか、それにしては面白いな、と思った。
この監督はこの映画でものすごくお金を稼いで会社を立て直した。
「これのあと38本も好きに作品とれた」のはこれのおかげ、と言っていた。
つまりこの映画の前はどっちかと言えば無名な若い監督さんで、
たまたまジャン・ルイ・トランティニャンと友達で、
「恋愛映画とりたいけど美人女優に知り合いがいない」と言ったら
ジャンが「アヌーク・エーメならいつでも声かけられるよ」と言ってくれたのだ。
アヌークは電話で脚本のあらすじを聞いて「出る」と答えたけど、
船のシーンをいやがった。なんでかは不明。
「フェリーニなら本当の船に乗らなくても特殊効果で撮影する」と言ったそうだ。
(「そして船はゆく」あたりの話かな)
でも、何があったか、翌日もう一度電話してきて「船に乗ってもいい」と言ってきた。
…それほど脚本全体が気に入った、のかもしれない。

50年後の続編である「人生最良の日々」は「男と女」の名シーンが
「思い出」の映像としてたくさん出てくるから、前作未鑑賞でも話が通じる。
「男と女」は1966年、「人生…」は2019年だから本当は53年後。
男は認知症などいろいろ進んで、息子は家で介護しきれず施設に入れた。
前作で6〜7歳だった息子アントワーヌももう58歳。
(「結婚は2回しました、今はひとりです」)
子供のときは「消防士になる!」と言ってたが、今は「オンラインの仕事」をしている。
父親を愛してて毎週会いに来るが、父親は息子などいないと言ったりしてて大変。
はっきり覚えていて繰り返して話すのは若いころ愛した「アンヌ」のことだけだ。
息子はアンヌを探し出して「一度でいいからぜひ会ってやってほしい」と懇願する。

女は男とは結婚しなかった。男があまりにも浮気だったから。
男とはしばらく付き合い、別れたあとで映画プロデューサーと結婚。
自分もしばらくプロデューサーをやるが、破産しそうになり、離婚し、
今は小さなブティックを営んでいる。
娘マドレーヌ(3回半結婚したの、でももういいわ)は馬が専門の獣医、孫娘が一人。
男は「レースで勝ったとき花束を渡してくれる美女」をはじめ数人と結婚し、
数人の子をもうけたが、施設まで来るのは最初の息子と最後の娘だけ。
…この「最後の娘」をモニカ・ベルッチが演じる短いシーンがあるんだが、
なんで出てきたのかちょっと疑問。なくてもよくない?監督がファンだったのか?
「映画には美女がいないとね、夢の世界だもの」というインタビューがある。

でも、アヌークはこの映画でも立派な美女だ。
近くで見ればしわもあるし口角も下がり気味で胸もおなかも垂れているが、
コートを着て歩くシーンは背筋が伸びてさっそうとして、
しかも顔の輪郭が昔のままの「美女の輪郭」なのだ。
美女は骨から美しい、というけど、本当にそうだ、と思った。

ジャン・ルイ・トランティニャンはあまり昔の面影がない。
昔はちょっとほっぺぷっくりのぼっちゃん顔だったのが、
年取って痩せて顔が梅干しのように小さくしぼんでしまった。
(前立腺がんの治療を拒んでいたんだってね…)
でも、骨格はハンサムのままだ。言うことも女たらしのレーサーのまま。
気に入った看護師や女医に「ところでいつ俺と寝てくれる?」と言う。
アンヌが会いに来ても、彼女とわからない。
「昔愛した人に似ている」「目がそっくりだ、声も同じだ」と言う。
でも違う、なぜなら「プロポーズしたけどうまくいかなかった」から。
その理由は「自分が世間なみの男じゃなかった」から。
それでも「明日朝5時に玄関で待ち合わせて逃げ出そう」と誘う。
「どこへ行くの?」「誰も邪魔をしない場所へ」
ため息が出るほどの口説き文句。
アンヌは、自分が今もこれほど愛されていると知ってショックを受ける。

ジャンとアンヌがこれからどうなるか、は映画では描かれない。
描くと野暮になるだろう。

一番心に響いたジャンの口説き文句はこれだ。
「いっしょに生きることができなかったから、せめて死ぬときはいっしょに。」
自分がこう言われたら「そうね」と答える。そのまま死んでもいい。

ラストシーンはドーヴィルの海岸で、アントワーヌとマドレーヌの散歩シーン。
寄宿学校以来久しぶりに会って「なつかしい場所に行ってみた」設定かな。
肩を並べて話し込むふたりの後ろ姿、背景は波打ち寄せる砂浜。
その後ろ(一番手前)で黒い犬と白い犬がものすごい勢いで楽しそうにじゃれあう。
遠い昔、父親と母親が波打ち際を散歩する一方で、海に向かって駆けて行った
幼い二人の姿が重なる。
お互い酸いも甘いもかみ分けた中高年になって、これから何か始まるのかもしれない。
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