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2022年07月07日18:03

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映画「エルヴィス」薬物について

中島らもの「今夜、すべてのバーで」は何年おきかに読み返すが、
エルヴィスについての記載がある。

中嶋らもは言わずと知れたアル中のプロである。
アル中だけでなく、薬物中毒(アディクト)のことは調べつくし、知りつくし、
それでも酒で死んでいった。
まあそれは、いい。
「月刊Asahi」1990年9月号に「エルヴィス・プレスリー自殺の真相」という記事があり、
その記事を引用した形の記述になっている。

以下その引用。

エルヴィスの遺体からは、検死によって次の薬物が確認された。
 コデイン(中毒症状を起こす寮の十倍)、モルヒネ、メタカロン、ジアゼパム、ジアゼパムの変質物、エチナメート、エスクロルビノール、ペントバルビタール、メペリジン、フェニルトロキサミン。
このほかにエラビルとアペンタイルという抗うつ剤も検知された。このことから、プレスリーは明らかにうつ状態にあったとみられる。
彼の死後、毒物関連の報告をまとめた病理学者ワイズマン博士によると、一人の人間の体からこれほど多種の薬物が発見されたことは前例がないそうだ。
これらの薬のうち、アモバルビタール、ペントバルビタールはバルビツール系の鎮痛剤、エチナメートは催眠薬。コデインは咳止めシロップに入っていて日本でも問題になった麻薬だ。エルヴィスの体内で検知されたモルヒネは、致死量以上に接種したコデインが体内で変質したものらじい。
デメロール(メペリジン)はやはりモルヒネの代替薬である。
エルヴィスは、晩年、1日のうち8時間くらいはシラフだったが、それ以外の時間はずっとラリっていた。
42歳で亡くなるまでの2年半の間に、彼は自分の主治医からだけでも一万九千包の麻酔薬、興奮剤、鎮静剤、抗うつ剤を処方してもらっていた。それだけではなく、彼は手にはいる限りの手段を使って、全国の医者、薬局から薬を入手していた。
こうして集めた薬を、彼は1日3回に分けて服用していた。1回分の薬はそれぞれ黄色い封筒に仕切られている。その封筒の中には11種類の異なる錠剤やカプセル、それに3本のデメロール用使い捨て注射器が入っている。ガードマンの付き添いに、
「一発目をくれ」
といって最初の封筒を持ってこさせ、水で錠剤をのみ、デメロールは付き添いに注射させる。
「二発目」以降、エルヴィスは完全にラリっていて、もはや自分で薬を飲むことも、歩くこともできない。付き添いのシャツを引っ張って「二発目をくれ」の意思表示をし、1錠ずつ飲ませてもらうのである。
トイレに行くにもかついでいってもらわねばならない。この頃、彼の体重は112.5キロあった。一部には「ドーナツ中毒」などと書かれていたから、ラリりながらも食べることは食べていたのだろう。むしろ、抑制がきかずに底なしに高カロリー食を詰め込んでいたに違いない。
ともあれ、そういう状態で三発目を済ませたあと、エルヴィスは昼過ぎまで眠る。起きた時には、もちろんもうろうとした状態だ。
付き添いに、コカインをしみ込ませた綿棒を鼻にいれてもらい、デキセドリンを飲んでなんとか意識を回復する。
こうして前後不覚になるまでラリるのは、彼自身の言によればこういう理由だった。
「みじめな状態でいるよりは、意識を失っていたほうがマシだからね」
これだけのラリ中だったエルヴィスは、薬物の致死量や副作用については熟知していた。
最後の夜の摂取量は、致死量をはるかに超えた、とんでもないものだった。覚悟の死だったのである。
死の二日前、エルヴィスは異母兄弟のデイビッド・スタンレーを抱きしめて、こう言っている。
「もう君に会うことはあるまい。次に再会するときは、もっといい、高い場所だろう。君には世話になって感謝している」
くだらない。
くだらない人生、くだらない人間。
おれはもちろん、プレスリーと同類の人間だ。だからシンパシィを抱けないのかもしれない。くだらない人間はくだらない同類を憎むものだ。

以上引用終わり。

あまりにもすさまじくてめまいがするような記述。
事実だからもっとすごい。
神が与えた才能に苦しんでいたエルヴィスは、神のもとに帰るためにも
大変な苦痛を乗り越えなくてはならなかった。
「馬も倒れる量の薬物」を使っても「薬剤耐性」が上がって死ねなかったエルヴィス。
たとえばすべてを捨ててどこかへ行方不明になって静かに暮らしたらよかった?
もっと楽に死ねた?
そうかもしれないが、彼にはできなかっただろう。
彼を迎えてくれるファンの愛を、捨てられなかったから。
ショウビジネスの華やかなスポットライトの外に出るために、
「馬も倒れる」以上の薬物を、勇気をもって飲み込まなくてはならなかった。

中嶋らもから見れば、確かに「くだらない人生、くだらない人間」かもしれないが、
ため息が出るほど一途で純粋なくだらなさも、あると思う。

註;「デキセドリン」はアスピリンの同類でいわゆる頭痛薬であるが、
外国の小説にはよく「酔っ払いが酔い覚ましに飲む」シーンがある。
ただ飲むのでなく「錠剤をかみ砕いて」飲むらしい。
かなり苦いので目が覚めるようだ。
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