バズ・ラーマンといえば、ワシにとっては「ムーランルージュ」なのよ。
主人公がアブサンに酔った状態で入店すると、店内は満員。
フロアでスカートを持ちあげてカンカンを踊る女たち。
今夜の相手を選ぶ男たちは、燕尾服にシルクハットの正装。
極彩色のドレスと帽子の光沢にミラーボールのような照明が映えて…
というシーンは、バズ・ラーマンによれば「当時の受け止め方」はこんなふう、
という意味で描いたそうな。なんかすげーことする店できたぜ、みたいな。
「エルヴィス」のパンフレットを読んだら、同じようなことが監督の言葉にあって、
つまり「実際の現場はどうだったかじゃなくその場の人たちがどういう印象を受けたか」
を描きたいという意味のことが。
そうかやっぱりそうだったか、と思った。
映画を見終わったあと、ものすごく「ムーランルージュ見たい!」って思ったので。
それから、上映中に映画「アマデウス」も何度か頭に浮かんだ。
向こうも有名音楽家を描いた伝記映画だけどね。
「許してくれモーツァルト!君を殺した私を!!」というセリフとともに、
モーツァルトと同時代のドイツ宮廷音楽士サリエリが倒れて、
馬車で精神病院に運ばれるところから映画がはじまる。
…ね、なんとなく似てるでしょ。
そしたらやっぱり、パンフレットでバズ・ラーマンが
「サリエリの視点で描かれた「アマデウス」みたいな伝記映画が好き」と言ってて、
おーやっぱり、と思った。
「アマデウス」でも、もし宮廷音楽士としてのサリエリがいなかったら、
モーツァルトはドイツ宮廷に出入りできなかったかもしれない。
全然違った人生を歩んでいた可能性がある。
エルヴィスも、もしパーカー大佐と出会っていなかったら、
「キングと呼ばれる男」にはなっていなかったはず。
エルヴィスの着ている服、特に、ジャンプスーツ、というらしいけど、
つなぎになってて軍服みたいな高い襟で空飛ぶトカゲみたいなマントがついてるやつ。
あの服を実際にエルヴィスのために作ってた服屋さんがまだあって、
ついでにエルヴィスのために刺繍してた職人さんもいるんだってね。
だから映画内のステージ衣装は再現度が高い、というより、ホンモノなわけ。
この間、マリリン・モンローが着てた「金のドレス」を某女優さんが着たら、
けっこう壊れてしまった、というニュースがあったけど、
そりゃ布は経年劣化するし、マリリンと100%同じ体形でもないしね。
でも、「エルヴィス」内の主演俳優は「ホントにエルヴィスが着てたのと同じ服」を
着ているわけです。すごいよね。
エルヴィスがドラッグのハイドーズで死んだ話は有名かと思っていたら、
けっこういろいろ説があるんだってね。
でも、つまりはドラッグ死ですよね。
実際に使ってたドラッグの種類と量が今も記録に残っているんだが、
一回に使う薬(内服の錠剤と薬入り注射器数種類)だけでも「馬も倒れる」くらい。
これを1日3回使ってた、というのだから、
そりゃもう、いつ死んでもおかしくないわけですね。
地上で才能を披露する目的で派遣された「天使の仲間」たちは
汚辱に満ちた地上にしらふでは長く滞在できない、のは
他の芸術家さんたちを見てもわかる通り。
いいことではないが、まあそうだろうな、と思う。
もちろんドラッグと無関係な偉大な芸術家さんたちもいっぱいいるし、
ドラッグやってても全然偉大じゃない方々も多いわけですが。
最後にトム・ハンクスについて。
映画の予告編で、だぶついたほっぺと大きく突き出た腹の老人を見て
「トム・ハンクスに似てる?」と思ったら本人ですごくショックを受けた。
でもまあ、「ハウスオブグッチ」であのアルパチーノも、腹の突き出たじーさんで、
「白人男性って老けると太るしたるむよね」と思ったので、こんなもんか、と。
その考えは甘かった!
実際の映画内では、エルヴィスの死後に心臓発作で倒れたパーカー大佐が、
顔にしみのういたしなびた老人になってるシーンがあって、
確かにトム・ハンクスも老けたんだろうけど、これはメイクと演技なのね、とわかった。
怖い怖い。今の俳優さんは、特殊メイクもあるしいくらでも化けますな。
実際のパーカー大佐は、エルヴィスの死後もラスベガスに出没してスロットに溺れた。
「アマデウス」でサリエリが、精神病院の他の患者(ものすごく狂っている)に
「お前の罪を許そう」と語りかけながら車いすで押されていくのと、
少し似ていると思った。
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