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2022年04月29日10:39

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「戦争は女の顔をしていない」その5

「恐怖の臭いと鞄いっぱいのチョコレート菓子」の章

機関銃中隊衛生指導員
「死ぬのは怖くなかった…至るところに死の臭い、死と隣り合わせ。
それなのに私は死のことを考えていなかった。
夜中に戦闘があって、夜明け前に中隊が引き上げたあと、中立地帯から呻き声がした。
行くんじゃない、もう夜が明けてきた、殺される、と言われたけど這って行った。
負傷者を見つけてベルトに手を巻き付けて8時間ひきずって帰った。
指揮官は命令違反で5日間の外出禁止を命じた。
副官は、表彰に値する行為だ、と言った。」
「勇気をたたえるメダルをもらったのが19歳、すっかり髪が白くなったのが19歳。
最後の戦いで両肺を撃ち抜かれ、弾丸が脊椎骨の間を貫通して両足が麻痺して、
私が戦死したとみなされたのが19歳。
家に帰ったとき、妹が戦死を知らせる公報を見せてくれた。」

上級軍曹(斥候)
「休暇で家に帰ったとき、まず店に寄った。
チョコレート菓子をください、と言ったら売り子は「気でも狂ったか」という目で見た。
配給券って何なのか、封鎖とはどういうことか、知らなかった。
行列に並んでいた人たちはみんな私のほうを振り返った。
私は自分の背より高いライフル銃をもっていて、いつこれより大きくなるか考えていた。
突然、行列のみんながくちぐちに頼んだ。
この子にチョコレート菓子をあげてちょうだい、あたしたちの配給券を切っていいわ。」
「有名なスターリンの命令227号があった。「一歩もひいてはならない」。
後退したらその場で銃殺、でなければ特設の懲罰大隊に入れられる。
そこに入れられた人は死刑囚と呼ばれていた。味方が味方を撃ち殺す。」
「女性のあれがはじまったとき、自分の血を見て大声を上げた。
けがをしちゃった!中年の看護長が「どこをけがしたんだ?」「わからないけど血が」
その人は父親のように親切にすべてを教えてくれた。」
「戦争が終わったとき、私には三つの願いがありました。
第一は、もう二度と匍匐前進はしないということ。
第二は、白パンを買ってまるまる全部食べること。
第三は、白い寝床でぐっすり眠ること。糊のきいた白いシーツで。」

パルチザン(通信係)
「すでに夫とパルチザンに入って戦っていたとき、女の子が生まれた。
沼地で干し草の上で産んだ。おむつは体温で乾かした。
街から医薬品を運ぶ役をしていた。血清や包帯を。
ちっちゃな手や足の間にいれておむつでくるんで運ぶ。
赤ん坊が熱を出して泣くように塩をこすりつけて全身を真っ赤にする。
そこら中にドイツ軍や警察の検問所があって、私は「チフスなんです!」と叫ぶ。
さっさと行けとばかりに追い払われる。戻ると私が泣いた。赤ん坊がかわいそうで。
でも1日か2日するとまた行く。」

看護婦
「私の友達は自分の娘を連れて街を歩いていたが、娘の服の下にビラを巻き付けていた。
子供はちっちゃい両手を上げて「おかあちゃん暑い」と言い続けていた。
町中にドイツ兵やドイツ兵の手先になった警官がうようよいた。
ドイツ軍は騙しようもあった。でも地元警察はだめ。
同じ民族だから生活もこちらの腹の内もわかってしまう。」

準医師
「私は医科大学を卒業し証明書をもらった。そこで戦争!
ただちに徴兵司令部に呼び出されて「2時間で準備、すぐ前線に送る」と言われた。
村からもらった支度金で小さいトランク一杯のチョコレート菓子を買い、
上に一緒に卒業した女の子たちの集合写真を乗せた。
徴兵司令部で、私を駅まで送る車に鞄を運んでくれた人が言った。
こんなに重い鞄、何がはいっているんだい?チョコレート菓子よ、と答えた。
その人の顔から微笑みが消えた。どういうところに行くかわかっていたから。」
(以上引用)

戦争の中で子を産み、その子を連れて戦っていた女性が多いのに驚く。
子供もいっしょに戦っていた、ということにも。
同じソ連の人間に殺される、という話にもため息しか出ない。
ある人は戦線から逃げた卑怯者として、
ある人は、ドイツ軍の手先の隣人に「スパイだ、パルチザンだ」と密告されて。
こういう冗談があるそうだ。
刑務所にいた男が同室の男に聞いた。「なんでここに入ったんだ?」
相手は答えた「ずぼらだったからさ」「どういう意味だ?」
「村の集会所でみんなと話をしてた。家に帰ったら女房が密告しに行くかと聞いた。
眠いから明日の朝に行く、と答えたが、その夜のうちに俺が密告されたのさ」。
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