mixiユーザー(id:1850594)

2016年05月17日10:59

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「カルテル・ランド」

昨日、渋谷のシアター・イメージフォーラムにて、鑑賞。
メキシコの麻薬戦争そのものというよりは、麻薬カルテルに対抗するためにつくられた「自警団」をテーマにしたドキュメンタリー映画。アメリカ(合州国)のマシュー・ハイネンが監督し、「ハート・ロッカー」でアカデミー作品賞&監督賞を受賞したキャスリン・ビグローが製作総指揮をとり、本年度のアカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた話題作(ということに、なっている)。
ハッキリいってしまうと、同作品は、国境の北と南につくられたふたつの「自警団」に焦点をあてるが、そのひとつである、アメリカ側の「アリゾナ国境自警団」に関する、批判的な視点が、ほぼ皆無で、これは正直、ひどい。同自警団を率いるティム・ネイラー・フォリーは、メキシコからアメリカへの不法移民を、麻薬カルテルの手先と決めつけ、その流入阻止に力を入れるが、実際には、メキシコからの不法移民の大半は、麻薬カルテルとは無縁の、生活困窮者。その流入を「侵略」視する考え方は、例のトランプなどと、まったくの同根だが、監督はそれをことすら問題視することなく、ただ、自警団はあまりにも過激とする、マスメディアの批判をサラッと、紹介するのみである。
一方で、メキシコのミチョアカン州で、「地元住民」によって、結成された「自警団」に関しては、自警団が力を持つにつれ、次第に変質し、次第に麻薬カルテルと大して違わぬ暴力団化し、やがて、政府の「地域防衛軍」に組み込まれていってしまう様を、これでもか、これでもかと、容赦なく、暴き出す。
しかし、もともと、凶暴な麻薬カルテル=「テンプル騎士団」に、武力で対抗する「自警団」が、ただの「地元民衆」のみで結成されたのではなく、結成当初から、別の麻薬カルテルの構成員などが「テンプル騎士団」の勢力をそぐために、積極的に関わっていたというのが、いつわらざる現実であり、自警団がやがて、民衆への新たな暴力装置化することは、ある意味、自明のことだったのである。
ふたつの自警団の内、アメリカで結成された自警団への批判の甘さ(というか、ほぼ無批判)と、メキシコの自警団への批判の鋭さのアンバランスぶりは、この映画の制作者の姿勢を、如実に表しているといったら、いい過ぎであろうか。
「闇」は決して、メキシコ側のみに、あるのではない。第一、メキシコの麻薬カルテルを肥大化・凶暴化させたのは、アメリカサイドの麻薬需要があってのことなのだ。制作者サイドは、悪は常に南からやって来るという、アメリカ映画の常道から、何ら自由ではない、のである。
ということで、観て、正直、やや引きました。

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