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2015年09月27日12:07

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言志四録「鍵山秀三郎の生きざま」



神渡良平「苦しみとの向き合い方・言志の人間学」より。


今の世で、悪口をいわれたり、ほめられたりすることは、それは別に恐れるに足らない。しかし、後の世になって、悪口をいわれたり、ほめられたりすることは恐ろしい。わが身の利害・得失は心配するに足らないが、子孫に及ぼす影響は十分に考えなければいけない。

当今の毀誉は懼(おそ)るるに足らず。後世の毀誉は懼る可し。一身の得喪は慮(おもんばか)るに足らず。子孫の得喪は慮る可し。 (言志録89)


全国で600店舗を展開する自動車用品の卸販売会社イエロ−ハットの創業者・鍵山秀三郎さんは満面の笑みを浮かべ、82歳になってすっかり白髪になった頭を掻きあげて言った。

「私が昭和36年(1961)に自動車用品の卸売業を始めたころ、業界の体質はひどいものでした。雪が降ると、タイヤチェーンの値を10倍にして売る。仕入れた商品の代金はできるだけ長い手形で支払うなど、商道徳などあったものではありませんでした。強者の論理が押し通っていて、弱い者は当然のように泣かされていました。

ただ嘆いていても仕方がありません。そんな業界の悪しき習慣を変えようとして、模範となるような店づくりをしようと、小売業態の「ローヤル」(「イエロ−ハット」の前身)を立ち上げました。

苦難を背負うことを承知の上で行なったことはいくつもあります。手形取引を現金取引に変えたことはその一つです。長い手形を受け取れる会社ほどいい会社という誤った考え方が業界の常識だった時代です。現金取引なんてできるわけがないという考え方が社内から相次ぎました」。

信念を貫くと現状が変わる。しかし物事は何しろ固定化する傾向があるから、現状を変えるには大変な努力がいる。良い悪いに関わらず、だ。

「手形取引をなくするには、まず自分たちから仕入れ先への支払いを現金にする必要があります。でも、出るのは現金、入るのは手形ですから、資金繰りは当然苦しくなります。取引先は現金になって喜びそうなものですが、そうではありませんでした。現金だとたくさん買ってもらえなくなるというのです。

まさに四面楚歌でした。もしあのとき、私が自分の目先の都合にとらわれていたら、到底やりとげることはできなかったでしょう。眠れない日もありました。でもやっておいてよかったと今は思います」。


鍵山さんは『言志四録』の中で共感する一条はどれですかと問うと迷わず、「私が人生の指針としている言葉です」と、冒頭に掲げた『言志録』89条を挙げた。鍵山さんの心境を代弁してくれているからだ。

「私利を去る――難しいことですが、これなくして物事の正しい判断はできません。私益ばかり求める経営者は、判断に芯がなく、会社も長く存続しないものです。

もちろん会社経営において、利益は大事です。ただ、そもそも会社は国費で教育された人間を採用し、事業を営んでいる存在です。自分の会社の利益が、国家の利益にもつながるような事業を営んでいるか、大所高所に立って検討していなければなりません。

出光興産の出佐三氏、東芝の土光敏夫氏など、かつての日本を代表する経営者は、常にそうした判断基準を持っていたように思います。

鍵山さんは一代で業界第二位のイエロ−ハットをつくり上げた人として知られるが、もう一つトイレ掃除によって多くの気づけを得た人としても知られている。その下座に下りた生き方に賛同する人の輪は広がり、平成5年(1993)、「日本を美しくする会」(掃除に学ぶ会)を立ち上げ、掃除のために全国を飛び回るようになった。現在では全国に126か所の拠点を持つまでになった。その展開は海外では、ブラジル、アメリカ、台湾、中国、ルーマニアに及び、この6月(平成27年)にはルーマニアのブカレストで大会が持たれた。その掃除を通しての影響は沖縄の米軍基地のフェンス清掃活動にも及んでいる。




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