八原博通
- 詳細 2023年8月1日 11:52更新
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八原 博通（やはら ひろみち）
1902年（明治35）10月2日〜1981年（昭和56）5月7日
沖縄戦で第32軍の高級参謀として戦略持久作戦を立案、指揮した。
アメリカ軍からは「すぐれた戦術家としての名声をほしいままにし、その判断には計画性があった」と高く評されている。
※背景画像：昭和20年2月頃の第32軍首脳
最前列右から3人目が八原高級参謀
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鳥取県米子市出身。1923年（大正12）7月に陸軍士官学校35期を卒業。1929年（昭和4）11月、陸軍大学校41期を優等（5位）で卒業、恩賜の軍刀を拝領した。
1933年（昭和8）10月〜1935年（昭和10）12月、陸大優等生の特典としてアメリカに海外留学。アメリカ社会を知るため、下宿先に近所の人たちを呼んで交流した。驚いたのは、アメリカの大学生が予備役将校訓練課程を志願し、大学教育の一環として高度な軍事教練を受けていることでだった。日本の大学生の軍事教練が強制的で初歩訓練に過ぎないのとでは大きな差があった。有事の際、これらの大学生や卒業生は優秀な将校として軍に編入される。アメリカ軍の常備兵力は日本陸軍の半分だが、非常時の実力差を痛感させられた。
さらに1年間に渡ってノースカロライナ州ムールトリー要塞で連隊付将校として勤務。またアメリカ陸軍歩兵学校も見学し、アメリカ陸軍の戦術に精通するようになった。
日本陸軍は対ソ連が基本で、アメリカ軍に対する評価は「拝金主義のアメリカでは将校ですらだらしがない。戦闘が始まればオロオロするだけだ」などと軽侮する傾向があった。
そのようなアメリカ軽視の見方に対し「アメリカ軍の実力は日本が考えているような甘いものではないよ」「一番注目しなければばらないのは、彼等が火力を重視していることだ。砲門の数は大差なくても撃つ砲弾の量が違う。日本の野砲はせいぜい1日10発ぐらいだろうが、アメリカの工業力は日本と段違いで、戦時になると軍需生産力は膨大なものになるからいくらでも撃てる。平時のアメリカを見て、戦時の実力を推察しては国を誤る」と反論した。彼のアメリカに対する理解は、後の沖縄戦に活かされることとなる。
1941年（昭和16）12月8日、太平洋戦争が始まると、第15軍参謀としてビルマ（現ミャンマー）攻略作戦を担当。積極攻勢を提示し、軍司令官飯田祥二郎としばしば対立した。その後、デング熱を発症し内地へ帰還した。1943年（昭和18）3月、陸軍大佐に昇進。
1944年（昭和19）3月20日に沖縄防衛を担う第32軍の高級参謀（作戦担当）に就任。当初は水際での積極攻勢を立案していたが、防衛部隊の主力である第9師団の台湾移転後は「戦略持久」方針へ変更し、アメリカ軍の襲来に備えた。この結果、アメリカ軍に多くの死傷者と司令官の戦死という犠牲をもたらして大きな成果をあげる。
1945年（昭和20）6月23日、第32軍は事実上組織的な抵抗を終了。命令通り、日本本土への戦訓伝達のため、民間人になりすまし、沖縄脱出を図るがアメリカ軍に包囲される。玉砕すると意気込む敗残兵を説き伏せると、英語でアメリカ軍に投降を申し出て民間人ら数十名と共に捕虜となった。1946年（昭和21）1月に復員。
復員後は、故郷で農作業の傍ら反物の行商を始め、どうにか収入の途を得た。1950年（昭和25）に警察予備隊が創設され、入隊の誘いがあったが「もう二度と他人に死を強制するような仕事はしたくない」と断っている。
1981年（昭和56）5月7日、78歳で永眠。
戦後、旧軍人たちとは距離をとっており、唯一、陸士同期生の会合に出席するだけであった。また旧軍人の中でも、自らアメリカ軍の捕虜となって生還した八原を「軍人の面汚しだ」と白眼視する者も多く、葬式に参列した旧軍関係者は5人だけだったという。
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