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スピリチュアリティーの学際研究コミュのSpiritual health

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書きなぐり、特に英語はめちゃくちゃですが、コメントくださ〜い。よろしく。

表題 スピリチュアル・ヘルス:信頼・喜び・自己一致により本来の自己となる
Title: Spiritual Health:On becoming Authentic self with Trust, Joy and Genuiness

和文抄録:
本稿は、スピリチュアル・ヘルスを明らかにする目的で文献探索と質問紙調査法による検討を行ったものである。
わが国におけるスピリチュアリティー研究はスピリチュアルケアとして末期医療に関連した文脈で扱われる傾向にあり、健常人対象の健康生成論的視点が希薄であった。
健康な大学生対象の調査により、スピリチュアル・ヘルスと首尾一貫感覚(SOC)・フロー体験・本来性(authenticity)概念との高い相関が得られた。つまり、スピリチュアル・ヘルスは人生に対する信頼や確信・喜び・本来の自己との一致を特徴とする健康概念である可能性が示された。以上よりスピリチュアル・ヘルスを「本来の自己と一致すること」と定義した。スピリチュアル・ヘルスは従来の健康観に実存的・超越的視点を付け加え、両者が統合されることによりホリスティックな健康観が達成されると考えられる。

キーワード:スピリチュアル・ヘルス スピリチュアリティー  健康生成論 本来性  フロー体験 


Abstract:
Purposes: In this article I aimed to clarify the definition and concept of Spiritual Health by separating from the related constructs through literature survey, describing the characteristics through questionnaire research, then comparing with the former health concept without spiritual health.
Methods: First, I searched the medical on line database in Japanese with the key word of Spiritual health, then in English. After reviewing the articles related spiritual health, summarized them and defined Spiritual health. I also compared the three dimensions of the former definition of Health by WHO (physical, mental and social health) and Spiritual health according to the clinical observation.
Next ,I administered SBAS-TEST (Spiritual health Questionnaire), SOC(sense of coherence) scale, Authenticity Scale and Flow experience check list to the healthy university students (with SOC :n=201,m=98.f=103; with Authenticity Scale and Flow experience check list: n=211: m=100, f=111 ,Age20.4 ±1.70) to describe the characteristics of the Spiritual health.
Last, based on these data I compared the former health concept without spiritual dimension and spiritual health on the point of the object, the purpose, the approach, and the typical attitude observed.
Results: There are no academic research papers with the key word of Spiritual Health in Japanese by Goggle Scholar, however with English survey on the same key word more than 130,000 articles have found. Most of the medical research on Spirituality is limited to be treated in the field of terminal care as Spiritual care and there is a small attention on the point of Salute genetic promotion in spirituality studies in Japan.
Separating Spiritual health from Mental health as the health which is related to existential matter rather than well functioning of brain helps us to realize the different pattern of the patients who show the same symptoms as depression.
So that it is helpful to use the concept of spiritual heath in clinical situation. Differentiating spiritual health from other dimensions of health will give practitioner clear understanding of the spiritual assessment and treatment which the patients need.
The Questionnaire surveys showed the significant high correlations among SBAS-TEST (Spiritual health Questionnaire), and SOC(sense of coherence) scale, Flow experience check list, and Authenticity Scale.(r=0.47 0.71, 0.58, respectedly ). Therefore Spiritual health is described as the health concept which has the trust for life, genuineness (congruence),and Joy. Based on these considerations, Spiritual health is defined as the Health realizing through accordance with the authentic self.
Conclusion:
Spiritual health is a useful concept to understand the existential aspect of health which is separated from other dimension of health. It is described as the trust for life, genuineness (congruence),and Joy. The concept can be used on the point of salutegenesis. Integrating the former health concept with spiritual health attains the holistic health.


英文抄録日本語訳

目的:本稿は、スピリチュアル・ヘルス概念定義を文献調査によって関連概念から分離し、実態調査によってその特質を明らかにした上で、スピリチュアル・ヘルスの視点を持たない従来の健康観と比較し、スピリチュアル・ヘルス概念を明らかにすることを目的としたものである。
方法:はじめに、スピリチュアル・ヘルスというキーワードでオンラインデータベースを使い日本語で、そして英語により検索を行った。 その結果を概観した後、スピリチュアル・ヘルス関連文献で扱われる概念を要約しスピリチュアル・ヘルス概念を明らかにした。また臨床観察にしたがって、スピリチュアル・ヘルスとWHO健康憲章による他の健康側面、肉体的・精神的・社会的健康とを比較した。次にスピリチュアル・ヘルスの特徴を明らかにする目的で、SBAS-TEST(スピリチュアル・ヘルス尺度)・本来観尺度・フロー概念チェックリストを健康な大学生211名に試行した。最後に、以上の結果を元にして、スピリチュアル・ヘルス概念をもたない従来の健康観とスピリチュアル・ヘルスを、その目的、アプローチ、典型的に観察される態度の点から比較した。
結果:日本語のグーグルスカラーにおいては、キーワード「スピリチュアル・ヘルス」を持つ研究論文は皆無であった。英語で同じキーワードで検索した場合には13万件以上がヒットした。 わが国医療関連におけるスピリチュアリティー研究のほとんどは、終末医療分野でスピリチュアルケアとして扱われるものに限定されており,健康生成的観点からの注目はほとんどない。
スピリチュアル・へルスを、脳機能の良好さではなく実存的事柄に関連する健康として精神的健康から分離すると、うつ状態という同様な症状を示す患者の異なった型を理解する助けとなる。したがってスピリチュアル・ヘルス概念を使用することは臨床場で有益である。スピリチュアル・ヘルスを他の健康側面から差異化することは、臨床家に患者が必要とするスピリチュアルな評価・治療に関する理解を明確にする。
質問紙調査結果は、SBAS-TESTとSOC尺度、フロー体験チェックリスト、本来性尺度間に有意な高い相関があることを示した。(順に r=0.47、0.71、0.58). つま り、スピリチュアル・ヘルスは人生に対する信頼や確信・自己一致・純粋性・喜びで表現される特徴を持つことが明らかになった。以上を踏まえてスピリチュアル・ヘルスを「本来の自己と一致することで表される健全性」と定義した。
結論:スピリチュアル・ヘルスは他の健康次元から分離され、健康の実存的側面を理解するのに有益な概念である。それは、人生に対する信頼・純粋性(自己一致)・喜びで記述できる。スピリチュアル・ヘルスは健康生成的観点から使用できる。従来の健康観とスピリチュアル・ヘルスを統合することによって、包括的な健康が達成できる。





                  
1はじめに

本稿は、スピリチュアル・ヘルス概念を文献調査と質問紙調査を通して明らかにする試みである。
医療におけるスピリチュアリティー研究はターミナルケアーの文脈で取り上げられることが多いが、本稿は、健康生成的観点からスピリチュアル・ヘルスを論じ、広く応用できる概念として健常人や子どもも対象となるスピリチュアル・ヘルスを提唱するものである。
まず第1に、スピリチュアル・ヘルスが論じられてこなかったひとつの原因として、健康科学分野におけるスピリチュアリティ―とスピリチュアル・ヘルス概念の混乱について報告する。第2に、スピリチュアル・ヘルスと他の健康概念、メンタルヘルス(精神的健康)・社会的健康・肉体的健康との差異を明らかにする。第3に、スピリチュアル・ヘルスに最も近い概念としてのスピリチュアル・ウエルビーンクとスピリチュアル・ヘルスを比較し、それらの健康科学における位置付けを明らかにする。第4にSOC(首尾一貫性)、フロー体験、本来感(authenticity)とスピリチュアル・ヘルスとの共通性を質問紙調査にて探索し、スピリチュアル・ヘルスの特徴を記述する。
これらの研究に基づき、スピリチュアル・ヘルスを「本来的あり方との一致(Authenticity本来性・純粋さ)で現れる健全性」と定義した。その上で、スピリチュアル・ヘルスと従来の健康観を比較整理し、スピリチュアル・ヘルスの意義を提案するものである。

2健康科学分野におけるスピリチュアル・ヘルス概念の混乱

健康科学分野におけるスピリチュアル・ヘルス概念混乱の一要因は、スピリチュアル・ヘルスをスピリチュアリティーと同様な意味で使用していることにある。
スピリチュアル・ヘルスは、WHOの健康憲章改定案で提出された、健康のスピリチュアルな側面に由来する概念である。すなわちスピリチュアル・ヘルスは、健康の一側面として提出されたものであった 。2007年5月現在Medline検索で見つけられた唯一のスピリチュアル・ヘルスレビュー論文は健康増進研究者であるHawksらによるものである。彼らのシステマティックなレビューの結果提出されたスピリチュアル・ヘルスの定義は、「人生における目的・意味。自己に対する気づき。自己を他者,より大きな実在との連関ととらえること」である 。これは健康の実存的、またエコロジカルな側面と言い換えることもできよう。しかし、彼らによると、スピリチュアル・ヘルスを向上させる介入として,瞑想・イメージ療法・グループ支援などがあげられているが、そこではスピリチュアル・ヘルスとスピリチュアリティーが区別されていない。
また、例えば、スピリチュアリティ―が高い患者の死の受容を論ずる論文 や,医学生のスピリチュアル・ヘルスが低いと報告する論文 は、使用する尺度が異なっているものの、両者とも意味するところは人生の意味や目的に気づき、自己受容に至るというスピリチュアリティーである。
スピリチュアリティ―は、健康に関連するが健康を構成する概念ではない。それに対してスピリチュアル・ヘルスは健康概念である。スピリチュアル・ヘルスはスピリチュアリティ―とは異なった概念であることをまず明記する必要がある。

3わが国におけるスピリチュアル・ヘルスの取り扱われ方

わが国では、スピリチュアル・ヘルスに関する研究報告は見当たらない状態である。医学文献データベースではスピリチュアル・ヘルスを扱った論文は1件も存在しない。インターネットのスカラーグーグル(2007年5月12日現在)においてspiritual healthでヒットするものが120,000件を越すのに対し、日本語のスピリチュアル・ヘルスで検索したところタイトルでは1件もなく、内容に含まれるものでようやく1件見つかったが、それは高齢者介護にスピリチュアル・ヘルスを達成する試みとしてゲーム会社が提供する、夢と遊びを導入する斬新なシンポジウムでの発表記録であった 。そこでは、コンセプトはスピリチュアル・ヘルスであるとされておりMaslowの自己実現 が例に挙げられているが、スピリチュアル・ヘルスそのものに関しては検討されていない。
さらにスピリチュアリティーをキーワードにして学術論文を探索すると18件見つかったが、そのうちスピリチュアル・ヘルス概念に言及しているものは、田崎らのWHOQOLに関連して日本人のスピリチュアリティーを調査したもの があるが、そこでもスピリチュアル・ヘルスに関する記述はない。スピリチュアル・ヘルスをあつかった健常人対象の健康増進に関連する研究報告は、筆者らの研究のみである 。
このように、わが国における医療関連でのスピリチュアリティー研究は、終末期のスピリチュアルケアに限定される傾向がある。
窪寺によると「スピリチュアリティーとは、人生の危機に直面して人間らしく自分らしく生きるための存在の枠組み、自己同一性が失われたときに、それらのものを自分の外の超越的なものに求めたり、あるいは自分の内面の究極的なものに求める機能である」 とされる。人生の意味や目的を探る存在の枠組みを求める機能であるとするこの立場は、WHO改定案のスピリチュアル・ヘルス主張と重なる。また、スピリチュアルケアによって果たされるケアは、大下によると ?苦痛に向かい合う ?規範的であるより開放的で柔軟性がある ?内面の自由と残された人生の質を獲得する ?人生の価値を見いだす に要約される。つまり,これらが満たされたときに、臨死者のスピリチュアル・ヘルスが達成されると考えてよいであろう。確かに、そのような危機状況においてスピリチュアル・ウエルビーングが喚起されることが多いとする報告がある 。これは、末期患者に告知をした方が死を受け入れられるという報告である。この論文でのスピリチュアル・ウエルビーングは、事実に直面することが大きな比重を占めている。
これらの研究報告はいずれも死の臨床がフィールドであり、そこからの提案であるために、スピリチュアリティー獲得は危機的状況に直面することが前提となっている。これはJames の主張する病める魂が苦悩することによって獲得するスピリチュアリティーと同様に位置づけられるものであろう。しかしながらここでは、同じくJamesの主張する、健全なスピリチュアリティーが視野に含まれていない可能性がある。つまり、人間が生得的に持ち合わせている健全なスピリチュアリティー、Armstrongが子どものスピリチュアルな発達で説明している、下降してくるスピリチュアリティー は重視されていない。したがって、終末期におけるスピリチュアリティー理解を、そのまま健常者や子どもの健康増進研究に応用することは妥当ではないと考える。
以上のように、わが国でのスピリチュアル・ヘルス概念は、終末期医療に偏向したものになっており、健康生成的観点からスピリチュアル・ヘルスを探索し論じることは意義がある。


4メンタルヘルスとスピリチュアル・ヘルス

次に、スピリチュアル・ヘルスと他の健康側面との違いを明らかにすることを通し、スピリチュアル・ヘルスを提唱する意義を説明することとする。
スピリチュアリティーが精神と翻訳されることもあるため、スピリチュアル・ヘルスとメンタルヘルスの違いが見えにくくなっている。ここで仮にメンタルヘルスを「意識レベル、つまりマインドのレベルや脳機能で記述可能な精神過程を扱う分野であり、目的は現実適応である」と規定すると、スピリチュアル・ヘルスとの違いが明らかになる。スピリチュアル・ヘルスの領域で扱うべき問題は、人生の意味・目的といった実存的・根源的テーマである。しかしそのような問題をメンタルヘルスから区別して扱う受け皿がなかったために、現状ではそれらがメンタルヘルス分野で扱われている。これをスピリチュアル・ヘルスの問題として扱うことにより、病態理解や治療法が整理される。同じメンタルヘルス問題としてのうつ状態という症状を表しながらも、それが適応障害のストレス反応としてあらわれている場合と、「生き甲斐が見つからない」というようにスピリチュアル・ヘルスが根本問題となっている場合とでは、おのずから治療法も経過も異なる。前者においては環境調整とともに休養・薬物療法などが有効であるが、後者の場合には、抗うつ剤は本来の自己から遊離してしまう恐れから却って避けられる場合もあり、そこを理解していかなければコンプライアンスが低いまま治療効果は期待できない。むしろ、実存分析やプロセスワークなどが有効であろう。脳障害によって精神症状を呈する場合と、心理・社会的要因によって同様な精神症状を呈する場合にアプローチが異なるのと同様に、同じ症状を呈していても治療法は大きく異なるのである。
心身症の中にも例えば難治性の摂食障害のように、認知行動療法的なマインドレベルに働きかけるだけでは治療困難なケースが増えていることが観察される。すなわち、本来のあり方に一致していないという実存的理由から起きている現象であるために、意識的努力によって適応を目指した行動変容を目指しても、効果が見られないのである。「どうしたら食行動が改善されるかテクニックは知っています。でも、なぜかわからないけれど、そうしたくないんです。治りたくないわけではないんです。決して病気になりたいわけではないんです。でも、どうしようもないんです。」と訴える患者には、スピリチュアル・ヘルスを増すような働きかけが必要となる。

5.スピリチュアル・ヘルスと社会的健康・肉体的健康

スピリチュアリティーには、成熟した人格というイメージがあるために、スピリチュアル・ヘルスが、対人関係の良好さとして現れるという印象があるかもしれない。しかしながら、筆者は、スピリチュアル・ヘルスは現状への適応ではなくむしろ本来的自己であることをめざすと考える。そうすると、日本社会のような集団の規範に価値を置く社会においては、スピリチュアル・ヘルスの高い人物が見かけ上協調性がないと観察される場合もある。また、普遍的倫理観に目覚めた行動をすることによって、スーチーの例を出すまでもなく、属する社会によってはその規範からの逸脱、すなわち不適応が起きてしまう場合もある。このように、スピリチュアル・ヘルスの持つ「本来の自己と一致すること(自己に忠実に生きること)」を強調すると、それが必ずしも社会的健康を増すとは限らない。
一方では、「健全な身体に健全な精神が宿る」と言われるように、肉体的健康が増すことは健全な精神・魂、つまりスピリチュアル・ヘルスを増すことにつながることが予想される。ヨガなど心身を調整する技法がブームになっているが、実は肉体的健康とスピリチュアル・ヘルスが必ずしも比例しないことは、末期患者のスピリチュアル・ヘルス研究で明らかである。つまり、肉体的健康が衰えたときにこそむしろ自己と対峙し、スピリチュアル・ヘルスが増す可能性があることが観察されている。その可能性を前提としてスピリチュアルケアが提唱されてきたのである。

ただ、そのような危機的状況において気づきが起きる場合が多いとしても、その事実から、苦難や逆境がなければスピリチュアル・ヘルスの向上が望めないということは意味しない。スピリチュアル・ヘルスに至るために病気になることを待つ必要はない。肉体的に危機状態にあることがスピリチュアリティーを高めることがあるという事実から各種宗教的修行も存在するが、それによって健康が崩壊するケースも存在することを考えると、慎重にならざるをえない。健全な身体に宿る健全な魂を追求していくことが、まず第一に求められるべきであろう。

このように、スピリチュアル・ヘルスは、他の健康概念と区別した方が臨床上有効である。メンタルヘルス・社会的健康・肉体的健康も、患者が本来的な在り方に一致しているかというスピリチュアル・ヘルスの側面から改めて分析すると、患者中心のより深い理解に到ることが期待できる。

6スピリチュアル・ウエルビーングとスピリチュアル・ヘルス

スピリチュアル・ウエルビーイングはスピリチュアルに良好な状態という意味でスピリチュアル・ヘルスに最も近い概念である。
Fisher等は,個人的・連帯的・環境的・超越的な4領域からなるスピリチュアル・ウエルビーイングモデルを提出し それをもとにしてGomezらはスピリチュアル・ウエルビーング質問紙(SWBQ)を開発した 。このモデルは、著者が心身医学におけるホリスティックなスピリチュアリティーとして提出した ものとほぼ同様な軸を持っている。つまり、スピリチュアリティーを水平垂直双方の広がりを含んだモデルとなっている。また、このモデルにおけるスピリチュアル・ウエルビーイングは理想的な在り方としての状態概念である。
すなわち、Fisher等の提唱するスピリチュアル・ウエルビーングは、ホリスティックとも言い換えられる広義のスピリチュアリティーに関連する概念であり、スピリチュアルに良好な状態という理想・目標・達成地点を表す静的な概念であると言えよう。

7スピリチュアル・ヘルスと首尾一貫感覚(SOC)・フロー体験・本来感

スピリチュアル・ヘルスの特徴を明らかにするために、類似概念との関連を大学生211名(男女・平均年齢)を対象に質問紙調査した。成績に関係なくプライバシーも守られることを告げた上で授業内に自記式で試行され、結果はそれぞれの尺度間における単相関分析が行われた。使用した尺度は、SBAS−TEST 、SOC尺度 、本来感尺度 、フロー概念チェックリスト の4つである。
2005年の調査の結果9,10、それぞれの尺度総得点間に有意に高い相関が示された。SBAS-TESTとSOC尺度、本来感尺度、フロー概念チェックリストの相関係数は順に、0.47、0.58、0.71であった。
ここで、スピリチュアル・ヘルスと首尾一貫感覚・フロー体験・本来感の共通項を探りながら、スピリチュアル・ヘルスの特徴を探索することにする。
まず、首尾一貫感覚が他のストレス対抗資源とされる指標と異なっていることの説明からはじめる。ポジティブ心理学や健康心理学で扱われることの多い主観的幸福感・QOL・楽観性・希望・ハーディネス・自己効力感などの概念は、いずれも健康に貢献する重要な指標であるが、個人が外界をコントロールするという発想に基づき、コントロールを強調している。それらにおいては意識的・合理的判断が強調され、流れに任せるといった直観的問題解決能力は問われていない。また、自我に基づく機能や能力を問題にするため、自己中心的になりやすく個人を超えた視点が希薄である。
それに対し、アントノブスキーの主張する首尾一貫性感覚SOCは、ストレス抵抗資源として自力だけでなく、他者や環境,また人生といった大きなものに信頼して任せるという視点を持つことが特徴的である。信頼して任せることにより余裕が生まれ、リラックスするからこそ個人の内的リソースがフルに稼動することにもつながる。余裕があるから自己を客観視でき、遊びやユーモア、喜びといったポジティブな感情態度も生まれてくるであろう。
首尾一貫感覚の中心概念は、有意味感、つまり人生におけるどのような出来事にも意味があり、立ち向かっていくだけの価値があるという信頼感である 。これは、意味への意志を主張したフランクル思想へとつながる 。また,スピリチュアル・ウエルビーイングの、大いなる存在との連関から捉える視点にもつながるものである。
また、Csikszentmihalyiの提唱するフロー体験は、喜びの現象学ともいわれる ほど喜びに満ちた体験である。その特徴は、高度の集中により自意識・時間空間意識が消え、個人の最高度の潜在能力が発揮されることにある 。過程そのも のは全力を使って挑戦していくものであり、むしろ苦しみや激しい努力も必要とされるのであるが、結果として大きな喜びに通じる体験である。フロー体験とスピリチュアル・ヘルスの高い相関関係は、自我意識を超越した喜びという共通項によるものが大きいと考えられた。
健康自体を目的にするのではなく、今ここにある対象そのものに深く集中することによって達成される喜びと湧き上がるエネルギーは、スピリチュアル・ヘルスの大きな特徴とされてよいだろう。
何かを成し遂げることは生き甲斐につながるが、フランクルが提唱するように、肉体的・社会的・精神的(自動的に起きてくる心理過程、メンタルなもの、スピリチュアルと区別されるもの)健康が損なわれた場合にも、生き甲斐や意味は存在する24。すなわち、創造価値・体験価値・態度価値としてである。フロー体験の対象は創造価値と体験価値に基づくが、同様な喜びの現象は態度価値として変えることのできない窮状に直面した場合にも達成可能であり、これがスピリチュアル・ヘルスの実現であると考える。苦悩の中に存在するスピリチュアルな喜びは、究極の喜び、法悦としてキリスト教神秘主義のテレジアではエクスタシーと表現されることもあり、平安や満足というより強烈な情動を伴うことが報告されている26。
これらより、首尾一貫感覚の信頼に基づく受動性・フロー体験の喜び・本来感の自己一致は、スピリチュアル・ヘルスを特徴付ける要素であることが導かれた。

8.スピリチュアル・ヘルスと従来の健康観の比較

以上の議論を基に、スピリチュアル・ヘルスとその視点のない従来の健康観とを比較してみた(表1)。
まず扱う対象であるが、従来の肉体的・精神的・社会的健康においては、あくまで個人が対象である。かろうじて取り巻く環境や社会をも視野に入れてるが、あくまで個人の健康に及ぼす影響という観点からの言及である。それに対してスピリチュアル・ヘルスは、連続的な時間軸も含めて地球環境全体を対象とする。
アプローチの方法に関しては、従来の健康観では、病因をなくすという目標設定を行い意識的努力によって到達しようとするものである。スピリチュアル・ヘルスにおいては、健康生成論的に連続した健康状態の方向性に注目し、しかも大いなるものに信頼して任せるという他力的なアプローチが付け加えられる。言葉を変えれば、従来の健康観においては健康自体が目標であったのに対し、スピリチュアル・ヘルスは、日々の瞬間に没頭し集中して生きることにより自然に達成されていく健康であり、スピリチュアル・ヘルスそれ自体が目標とはならない。
それぞれの健康観に特徴的な態度は、従来の場合には、努力・忍耐・訓練・理想であり、「より多く、より早く、より高く」であったのに対し、スピリチュアル・ヘルスにおいては、フロー体験に代表されるような、高度の集中の中におけるリラックス・遊び・喜び・ユーモアであり、それは「より少なく、よりゆっくり、より深く」と表現できるものである。
すなわち、従来の健康観は西洋的自我、あるいは自力に基づいたものであるのに対し、スピリチュアル・ヘルスは、東洋的無我、あるいは他力に基づいたものであると言えよう。
ホリスティックな健康を考えるときに、この両者がともに重要なものとなる。
スピリチュアリティーの重要さが科学的エヴィデンスの中に取り込まれようとする時代背景の中で、両者の統合こそが真の健康実現であることを明記しておきたい。

9.結論
以上の議論より、スピリチュアル・ヘルスは他の健康次元から分離され、健康の実存的側面を理解するのに有益な概念であることが明らかになった。それは、人生に対する信頼・純粋性(自己一致)・喜びで記述できるものである。スピリチュアル・ヘルスはまた、終末期に限らず健康生成的観点から使用できる概念である。従来の健康観とスピリチュアル・ヘルスを統合することによって、包括的な健康が達成できる。
















表1


















文献

コメント(4)

神社仏閣への参拝、
墓参、
仏壇・位牌への礼拝、
日の出・日の入りに向かっての合掌、
山頂等で得られる爽快感、精神的安寧感も、
spiritual health増進の例かと愚考します。
ビルシャナさん
参考文献までお示しくださってありがとうございました。勉強になりました。
そうですね、私もその部分、説明が足りないと感じてました。今回の論文では触れてないからのぞいてもいいのかもしれませんね。時空を越えるってこと。
今書いてるのは、自己実現とか自己超越とか心理学の概念からの説明なのでそちらに載せようかな〜。こっちはさっき書き始めたばかりなんで、2週間位したらアップかな〜

ぞうさま
宗教的行為と、自然、確かに。私は授業で外に出て、風を感じたり空を眺めさせたりしています。効果的ですね。

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