江崎英子コミュの【完全】『さまよえる暗殺集団』【解説】

◎あらすじ◎
　幕府の要職が次々と殺された。そこで隠密同心に内々の指令が下り、町
方の筆頭同心・林田作之新と協力して捜査・探索に当たることに。しかし
何日経っても手がかりひとつ掴めぬまま、またひとり殺された。

　そんなある日、音次郎は町人を囲んでいたならず者を鮮やかな剣さばき
で追い払う武士、風早（かざはや）新十郎と遭遇。数日後、その新十郎と
再会した音次郎は、無理に酔い言い放った「主義主張」の言葉が引っかか
り、一瞬新十郎に嫌疑をかけるが、それを心の中で否定。

　しかし翌朝早朝、勘定奉行が殺害された。内藤勘解由とともに現場に向
かった十蔵は、二度も居合わせた林田の行動に目を光らせ、お吉を彼に張
りつかせる。そのお吉が林田にあっさりと巻かれたことで、彼への嫌疑を
強めた十蔵・お吉は尾行を続行することに。一方、新十郎のことが気にか
かる音次郎は、再度新十郎の家へ。そこで新十郎が想いを寄せている娘、
志乃と出会い彼女を勇気づける。

　桔梗屋でお吉と飲む音次郎の元へ怒り心頭の金太がやってきた。何でも
旗本の次男・三男坊が「世直し大明神」を名乗り無礼を働いていたところ
へ遭遇したのだと言う。その連中がいる道場へ足を運んだ音次郎は、新十
郎が今回の事件に関わっていると確信。十蔵も、警護方が結成される前に
殺害された要人の現場に居合わせたことを聞きつけていた。

　話を総合した勘解由は、林田と旗本たちが結託して、要人の殺害を繰り
返していると断定。次のターゲットを探らせるため、一味の中で揺れ動く
新十郎と近い位置にいる音次郎にそれを託すことに。

　音次郎に頼まれた金太が新十郎の家に行くと、志乃がやって来た。自身
への想いをぶつけた志乃を受け入れ、武士を捨て、罪人として追われる覚
悟で江戸を出ようとした新十郎だが、一味に囲まれ、志乃と駆けつけた音
次郎の前で斬られてしまい、次のターゲットの情報を音次郎に伝え、息絶
える。

　音次郎は十蔵・お吉、そして勘解由とともにひと芝居を打って出て一味
をおびき出した。音次郎らが一味を成敗したのち、勘解由が、七年前、タ
ーゲットである京極但馬守と若年寄を争って死んだ父の無念を晴らすため
だけに、旗本の次男・三男をたぶらかし、関係のない幕府要人を殺害させ
た林田を斬った。

　数日後、新十郎の墓へ熱心に参る志乃を無言で見守る音次郎の心には、
生きることへの苦しさと、愛の哀しさが広がった。しかし、彼に立ち止ま
っている時間はない。江戸のどこかで起こる新たな苦しみ、悲しみに立ち
向かうために――。

　　　

【解説】　明日の夢すら持てない旗本の「冷飯食い」が起こした、「世直
し」への殺戮の旅。父を亡くした男の「復讐心」がくすぐった彼らの反骨
心が、とんでもないうねりを引き起こし、愛し合う二人を永遠の別れへと
いざなっていく。良心が残る一味のものと心を通わせ苦悩する音次郎と、
彼に突っ込まず、あえて事件に冷静に対処していく十蔵とお吉の対比が見
ごたえある一遍。胡蝶姐さん欠席回。

　　　