江崎英子コミュの【完全】『人斬りに惚れた女』【解説】

◎あらすじ◎
　浪花屋の主人と奉公人の少年が、もりのようなもので心臓を一突きにさ
れて殺された。同じ手口で殺害を繰り返した「人斬り錠」と呼ばれた男、
錠吉は二か月ほど前に捕方に追われた際、崖から落ちて死亡。その遺体を
引き取って葬った女、お葉に音次郎は会いに行く。一旦は連れなく追い返
された音次郎だが、賭場に通うお葉から店に誘われ、その際に彼女が鈴嫌
いであることを知る。

　店の前には、兄に疑念を持つ錠吉の弟、栄二がいた。しかしその栄二は
何者かに命を狙われているらしい。からくも救い出し、桔梗屋へ連れだし
たお吉たちは、栄二の知らない錠吉の「人斬り錠」の顛末を話す。

　ショックを受けた栄二は、勤めていた飛脚問屋の三度屋を辞めることに
した。その三度屋に「香典飛脚」を頼みにきた男がいた。十蔵の機転で、
浪花屋主人の殺害にもその三度屋が関わっていたことを突き止める。栄二
のサポートに回ったお吉は、金太の瓦版を見た栄二の言葉で上がった「錠
吉の死体」が本人ではないことを知り、腕に「およう命」と彫った刺青師
を捜すが、その彫師はすでに死んでいた。

　一方十蔵は、三度屋に罠を仕掛けた。大金を積んで勘解由を殺すよう三
度屋に依頼し、音次郎・お吉が栄二とともに桔梗屋で待ち受ける。下手人
は逃したものの、錠吉が生きていること、三度屋が殺しの元締めであるこ
との確証を得る。

　錠吉の行方を探るため、お葉を捜す音次郎とお吉。賭場にいたところを
呼び出し、錠吉の行方を訊ねる音次郎だが、錠吉に拾われ、彼を愛するお
葉は口を割ろうともしない。

　その錠吉が、栄二を谷中の無縁仏に呼び出した。桔梗屋を飛び出して行
った栄二を追う音次郎・お吉。十蔵も合流し、三度屋一味に囲まれていた
兄弟との間に割って入るが、激闘のさなか、三度屋の番頭が放った小刀が
錠吉の胸に刺さった。一味は成敗したが、錠吉は命を落とした。

　錠吉の死体にすがって泣くお葉と栄二。数日後、譲吉の墓の前で栄二と
和解したお葉は、店を立派に切り盛りしていた。そんなお葉の姿を見て句
を考える音次郎だが、最後が思いつかぬまま、勘解由と盃を酌み交わすの
だった――。

　　　

【解説】　飛脚が走る夜。鈴の音とともに【死んだはずの「人斬り」と同
じ手口で繰り返される殺戮行為】に、音次郎・十蔵・お吉が立ち向かう。
そこに「男と女の愛」「兄弟の絆」がからみ、事態は思わぬ方向へと転が
って行く。弟との絡みの比重が大きいので、タイトルの「人斬りに惚れた
女（＝お葉）」の影が何となく薄いと感じる管理人。胡蝶姐さん欠席回。

　　　