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小熊英二コミュの「<民主>と<愛国>」の浪漫派的読取

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ナショナリズムも、つきつめれば浪漫主義的妄想のひとつに過ぎない。
今、ナショナリズムという妄想に代わりえる妄想が必要である

*** 地球浪漫的読書案内 小熊英二著「<民主>と<愛国>」(2002年、新曜社, 税別6300円) ***

* ナショナリズムの定義

 8月に読書会の仲間と、小熊英二著「<民主>と<愛国>」という大著を抱えて一泊二日の合宿をした。土曜日の昼に集まって、読書会を始め、夜の宴会もそこそこに読書会を続けて序章から第13章まで読み、翌日昼過ぎまでかかって第14−16章、結論まで読んで、最後に意見交換を行った。
 結論を担当した私は、小熊のナショナリズムの定義(ナショナリズムとは「心情の表現手段として『民族』や『国家』という言葉が採用された状況」とし、その心情は極めて多様であり、それぞれをナショナリズムと呼ぶかどうかは各人の自由という。)があまりに広かったので、できるだけシャープな議論を導くために、自分なりの定義を持ち出した。
 私の定義では、「ナショナリズムとは、近代国民国家体制において主体である国家と、国家の領土に住む人間集団である民族を、同一の概念であるNationによって表すことにより、国民Nationという新たな抽象的概念を作り出し、国家(統治機構)と民族(人間集団)の運命共同体(B・アンダーソンのいう「想像の共同体」)としての国民意識を人々に植え付ける思想。」である。
これはいうまでもなく、ナポレオン戦争以来の、すべての国民を戦争に巻き込んで総力戦を闘うための思想である。いうならば、ナショナリズムとは、近代国民国家が、領土内に住む人々に、命をなげうって総力戦に参加してもらうための神話である。
 より概念をシャープにするために、ナショナリズムの性質について整理すると、ナショナリズムは、
? 事実や自然の観察にもとづく科学的・帰納的概念ではない。逆に、国家=民族という想像上の関係性があたかも実在しているかのように思わせるための、演繹的で、非現実的な、想像上の概念である。
? 近代国民国家という制度・システムと一体のものである。民族解放戦線は国民国家樹立のために戦っているのであり、国民の国家への義務抜きでは考えられないものである。したがって、たとえば在日朝鮮人のように自分たちの国家を想定しない民族主義は、国家=民族=国民を前提とするナショナリズムとは別のものである。

おそらく戦後の日本において、ナショナリズムが危険思想とされたのは、日本の戦前のナショナリズムがあまりに人々の心を捉え、若い命を散華させた特攻隊や身も心も捧げる国家総動員体制づくりに貢献したからであろう。
 戦前の日本のナショナリズムは、国家=国民=民族という関係性に加えて、国家の主権者である天皇が、民族の構成員である個々の臣民と、想像上の親子関係にある(「天皇の赤子」)という神話が作り出され、流布されていた超国家主義、あるいはターボ・ナショナリズムであった。
 この神話を否定したのがアメリカの占領政策であり、超国家主義に懲りた国民もアメリカの政策を受け入れた。しかしながら、戦後日本のナショナリズムの否定は、やや行き過ぎた感もある。
 
* 新たな神話、新たな妄想、新たな浪漫が必要な時代

 私は、ナショナリズムがよいとか悪いとかを、ここで議論するつもりはない。結局、ナショナリズムも、浪漫派的な思い込み、あるいは妄想のひとつに過ぎないということを確認したいだけである。
 国家=民族=国民という神話によって、近代国民国家体制は維持されてきた。しかし、地球環境危機、エネルギー危機、食糧危機が予見されえる21世紀において、国民国家体制が機能しつづけるとは思えない。
戦争のやり方ひとつをとっても、1999年のコソボ空爆も、2001年のアフガニスタン攻撃も、2003年のイラク戦争も、旧来の国家対国家の戦争とは異なっている。
 だとしたら、もはや、ナショナリズムの神話によって人々の心をひとつにしても意味はないだろう。新たな状況に対応するために、新たな神話、新たな思い込みが、作り出され、人々の心を支配する必要がある。それは嘘でもいい。事実でなくてもいい。ただ、人々の行動を正しい方向に束ねるための、思考装置として必要なのである。さもなければ、これから世界はますます混沌を極め、人類は一気に滅びていくのだろう。

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