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NMサポートコミュコミュの「夜光虫」転載トピック

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NMウェブ小説第二段の夜光虫を転載するトピックです。

PCの方は本家wikiからどうぞ。
http://gameholics.net/nm/wiki.cgi/scenario?page=%CC%EB%B8%F7%C3%EE

コメント(13)

真空での土木作業。
月面に作られた巨大な培養プラントでの食糧生産。
そうした場所で地球を離れた人類を支えてきた技術がAIだ。
AIとは「人工知能」の意味で、ロボットたちはそれぞれに与えられた知能によって様々な作業を行っていた。
それによって人間の労働する場所は奪われる可能性もあるが、出生率が少ない低重力世界では人口が徐々に減っている、そのような心配は無用だった。
それは地球が再び人類の手に帰った現在も同じで、広大な地球を開拓するためにはたくさんの労働力が必要だった。
そうしたAIを搭載したロボットやマシンを全般的に「メック」と呼んでいる。
地球での入植がはじまってしばらくすると、開拓地を武力で掠め取ろうとするものが現れてきた。
そうした彼らが戦力として使うのもメックで彼らは作業用のメックを思い思いに改造して高い戦力を得ていた。
アウトローたちは侵略用のAIを独自に開発していたのである。
それは労働者たちには非常な脅威だった。
開拓地も労働力も欠くことが出来ない彼らは、自警団をつくり持ち寄ったわずかな金で自衛用のメックを買い揃えたが、攻撃よりも防衛は難しく、アウトローを追い払ったところで戦地となった開拓地を再度開墾するには非常な忍耐が必要だった。
しかし、開拓者や生産者たちの窮地を救ったのが「警備保障」である。
彼らは戦闘用の高価なメックを買い揃え、高い機動力で迫り来る侵入者たちを追い払った。
彼らの開発した「駆逐用AI」は彼らの持つ戦闘用メックの性能を引き出し、作業用メックを改造しただけの侵入者たちを歯牙にもかけなかった。
侵入者たちはいつしか闇の商人と手を結び、強い軍備を整えるようになっていくが、その頃戦闘用メックをはるかに凌駕する機体が現れた。
「Remote control-type high movement mech(=遠隔操作型高機動メック)」通称「RM」とよばれたそれは、人間が直接遠隔制御するために、AI制御のメックを遥かに凌ぐ複雑な動作を可能にし、人間が搭乗した状態では不可能な急制動が可能になった。
そうしたRMの技術はあっという間に侵略者の手にも渡ったが、開拓者側の優位は崩れなかった。
同じ技術が合ったにもかかわらずなぜ開拓者は優位を保てたのだろうか?・・・理由は単純だった。
載せている人間の差が出たのだ。
警備保障が正規軍と呼ばれるようになった時代、彗星のように現れた天才RMパイロットがいた。
彼の正体や素性は闇に包まれており、多くの憶測を生んだ。
ただ、彼の操縦するRMが黒と蛍光塗料でカラーリングされていたために、侵略者達がその淡く輝く気機影を「夜光虫」と呼んで恐れたためである。
これは「夜光虫」と呼ばれて恐れられた正体不明のRMパイロットをモデルに書かれたフィクションである。
夜光虫が戦場から消えた後、我々を襲った虚脱感は凄かった。
正体が分からないまま夜光虫は我々の前から姿を消した。
事故説、自殺説、夜光虫は人間ではなく新種のAIであったとする説。
諸説が囁かれたが裏づけは取れなかった。
唯一の手がかりは夜光虫の乗っていた黒と薄い蛍光グリーンの2足変形翼式RMの存在だが、あるときそのRMは意外な形で発見された。
燃料のシングルHが尽きた状態でアトラス山脈の奥地で不時着していたのである。
しかも、空になった遠隔操縦用のコックピットを持ってである。

そのコックピットには確かに「夜光虫」その人が乗っていたはずなのに、中はもぬけの空。彼の最後の操作が「北へ迎え」と言う端的な命令だった事を我々に伝えるのみだった。
コックピットの内装より身長は160cm程の小柄な男性であろう事が判明した。
なぜ軍部は当時最新鋭だったRMを謎の男性に与えたのか?
燃料などのバックアップは?
彼はどこで操縦していたのか?

そして彼はどこへ行ったのか。

夜光虫と呼ばれた機体が半壊状態で発見された時、世間では一斉に行方不明者の洗い出しが行われた。
その中から身長160cm程の男性だけを探したところ3名の該当者があった。
一人は警備保障から脱走したと見られるアラン=イェン元中佐(しかし、彼はある理由で夜光虫である可能性が非常に低い)。
一人は畜産プラント経営者の息子であった当時14歳の少年(後に市街地で保護される)。
そして、最も夜光虫の実像に近いといわれ、自殺して発見されたプサン=グランド。

我々は彼が夜光虫だと仮定し、プサン=グランドの生涯を追ってみる。
プサン=グランドはブラジル系のカナダ人だ。
母方にブラジルの血を持つ彼は、父が生前訪れて感動したコリア南部の港町「釜山」にちなんで名づけられた。
コロニーで生まれルナに移住して幼少期を過ごした彼は、ルナシティで行動学を学び、AIのエンジニアとして月面でしばらく働いた後、警備会社の求人に応募して1年の渡航準備期間を経て地球へ渡った。
彼は警備会社で軍用メックの警戒用AIを組む仕事にしばらく就いた後に、神経症で会社を辞めている。

 ◆ ◆ ◆

ムービングロードを尻目に横の歩道を歩く男性がいる。
年齢は18歳ほどだろうか?
身長が低いせいでそう見えるのかもしれないが、整った顔立ちの彼はグレーに控えめなストライプの入ったスーツ姿で平べったいカバンを肩から下げていた。
その姿はガラスの天井越しに降り注ぐアフリカの太陽の下では少々地味に見える。
周囲を歩く人々は種族を問わず、極彩色のドレスや白を基調としたアフリカンファッションに身を包んでいる。
グレーのスーツの彼は小さな町医者の建物をでたばかり。
神経症で会社を解雇され、スーツを脱げずに病院へ通う彼には幾つかの道が残されていた。
このまま月へ帰るか、地球へ渡航したものの当然の権利として月面政府から援助金を受け取り、開拓者として働くか・・・それとも何処かで再就職するかだ。

「外は暑いだろうな・・・」

ニューナイロビハイランドはそのほとんどがドームで覆われた都市で、住民は高地の激しい気候にさらされる事は無い。
しかし、開拓者ともなれば嫌が応でもアフリカの燃える太陽を背負って働く事になる。
去年、仕事で前線基地へ赴いた際に体験した、乾いた風と暑い日差しを思い出すとぞっとしなかった。
彼はカフェに入るとナマズのフライと生野菜の料理を注文し、病院で貰ってきた薬をテーブルに置いた。
月面生まれの彼は地球で生まれた旧世代とは違う。
決定的に人種が違うのだ。
地球人ほどストレスに強くないし、地球人ほどある種のストレスに弱くない。
セレナイト(月面人)は地球人といっしょに働くようには出来てないのだ。
彼はカバンからシリコンペーパーの袋を取り出すと中にある薬の種類を数えた。
彼が月面に住んでいた時に政府から支給されていたビタミン剤とさほど変わらない量だ。
彼は好物のナマズフライを食べると薬を飲もうと給仕のメックに水を頼んだ。
メックは何食わぬ顔をしてボトルのソーダ水を運んできたので、彼は迷った末に人間の給仕を呼び止め「薬を飲みたいんだが」といってコップに真水を注がせた。
彼はソーダ水のボトルを小脇に挟むと給仕をしている忌々しいメックの顔面に携帯端末を接触させて、「ピピ」と音が鳴って会計が済んだのを確認すると席を立った。

 ◆ ◆ ◆

彼がこの後、どのようにRMに乗るようになるかは諸説あるが、我々は再就職に成功したとの説を採用する。
病院へ通っているうちに徐々に薬の量も減り始めていた。
僕は経済的にもそろそろ次の仕事を探さなくてはいけないが、地球人の上司は真っ平ごめんだったので比較的経営者が若い会社を探した。
AI技術者はどこの会社もノドから手が出るほど欲しいはずなのに、どうも芳しくない。
おかしいなと思って調べたところ、ネットを通じてオープンソースで高度なAIが提供され始めたのだ。
僕はAIで恒久的に収入を得る事が出来そうに無い事に気付いた。
そして、カスタマイズの困難な特殊なAIを扱いそうな会社をあたり始めた。

例えば「トウフ工場」と言った場所である。
しかし、そうした場所はほぼ地球人に牛耳られていて僕の入り込む隙間は無い。
病気の影響で以前にもまして地球人嫌いを募らせていた僕は、地球人の顔を見て働くぐらいならガニメデ(木星の衛星、当然誰も入植していない)の干拓をしたほうがマシだと思った。

やっと一件見つけたのはAIオペレーター募集と書かれた求人であった。
 
 ・オペレーター募集!AI設計経験者優遇!!

小さな事業所だったが、経営者は若そうだ。
僕はその会社に電話をかけると履歴書を端末から送りつけて面接の日を待った。
指定された面接場所へ行くと圧倒的にハズレだった。
僕の指示された職種はRMの操作及びAI開発だった。
普通RMなんて代物は軍か大手の警備会社しか持っていない。
そして僕が受けた会社はそんな大きな団体とは縁がなさそうな企業だった。
上の二つの組織外でRMを運用しているのは市民の安全を脅かす略奪者たちだ。
僕はあっという間に軟禁状態になってしまった。

※実際に当時のアウトローの中には、中小企業の体裁を整えて技術者を獲得していた団体が存在していました。

職場は町を離れた劣悪な環境下にあった。
アフリカの荒野に建てられた掘っ立て小屋は乾季の太陽に炙られて、とてもまともに作業ができる状態ではなかった。
僕としても、とても侵略者たちのために働く気にはなれなかったけど、何かしないと殺されると思った僕はひとまずPCの電源を立ち上げて、RMのオペレーションシステムの概略とAIに関わる数値の読解を始める事にした。
僕が与えられた部屋は掘っ立て小屋の一角、銃を持った荒っぽそうでヒゲ面の四十がらみの地球人が見張っていた。
そのおっさんは仲間内で「軍曹」と呼ばれていた。

軍曹の当面の仕事は僕の監視らしく、僕がどんな仕事をしたのかをいちいち聞いてきた。
しかし、軍曹はこうした技術にはだいぶ疎いらしく、僕の説明をどれだけ理解しているか分からない。
僕は軍曹の機嫌を上手くとりながら、仕事をしているふりをする事でその場をやり過ごす手段を覚えた。
軍曹は一日の終わりに僕の後ろに置いてあるなんか良く分からない缶で作った急造の椅子から立ち上がると僕の横に来てノートを構え、偉そうに幾つか質問するのだった。

「本日の作業内容は!」
「今日は昨日の続き、RM自身による位置の把握と、AIのコマンドでそれを他所に数値で送る機構についてです。」

こうして真っ正直に答えてやれば軍曹は答えにつまって一言二言わめくと「よろしい!」と言って僕を寝室に連れて行く。
僕は軍曹以外の人間がいる事は分かっていたが、他の人間をここに来てから見ていなかった。
2週間が過ぎて僕はいい加減、言い訳も効かなくなってくる頃だろうなと考えて成果をあげる事にした。
本当は僕は前の職場で軍用メックのAIを組んでいたので、仕様書を一日かけて読み終えれば何でも出来たのだけど、牛歩戦術はまずまずと言ったところだろう。
ただし本当に手がつけれない作業があったのも確かだ、火器制御は搭載する武器が決まらなければ出来ない。
また、RMのオペレーターということは僕が操縦もするのだろうが、未だ現物が届かない。
その辺の事情は彼らもわかっているようで、僕があまり強くものを言われないのもそうしたことが理由だろう。
しかし、RM本体ではなく質の悪いシリコンペーパーにかすれたコピーで仕様書が届いた。
月面が開発した最新鋭機のようだ。

その日は軍曹以外にも来客が会った。

「兄ちゃんよ、オレが乗るメックなんだからよろしく頼むぜぇ!」

見るからに頭の悪そうな金髪の若い男性が僕をバカにした目で見ていた。

「ほら何とか言ったらどうなんだ、お坊ちゃんは頭がいいんだろうがぁ!」

おもむろに殴られた。全く警戒していなかった僕は派手に横に吹っ飛ぶ。慌てて軍曹が止めに入った。金髪は悪びれもせずに「ケケケ」と笑うと部屋を後にした。

「軍曹さん、コックピットの調整があるから彼の身長体重の類のパーソナルデータを下さい。」
「ああ。」

軍曹に助け起こされながら僕はやっとそれだけ言うと金髪の出て行った方を睨み付けた。
金髪もあの年齢だからセレナイトだろう。
人類が地球を撤退したのが2050年代。
そして現在は80年代なので、30才以下の人間は全員月かコロニーの低重力で生まれた「セレナイト」だ。
月面の学生時代にも、ああいう屈折した奴が割と多かったのを思い出した。

僕はどうやって入手したのか分からないが、最新鋭機の仕様書を見ながら金髪にどうやって復讐してやるかを考え始めた。
RMのコックピットの調整の為に、初めて部屋から外へ出ての作業になった。
RMの操縦はドでかいカンテラみたいな箱の中で行う。
その中には遠隔操縦に必要なあらゆるものが詰まっている。
特筆すべきはモニターの多さだろう。
RMに取り付けられたたくさんのカメラの画像は、コックピットの演算装置へ送られてくる。
コックピット内には多くの場合上下左右中央にモニターを配置している。
そうしたモニターに囲まれた状態で搭乗者は座るわけだが、その椅子もモニターも複雑な操縦桿も全て大きな箱の中にぶら下がっている。
機体が受けているGを椅子の傾きで現すためにコックピットは宙ぶらりんに作られていて、状況に応じて動くのだ。
それはコックピットが運搬されている折、不慮の事態からパイロットを守るためでもある。
RMはリモートコントロールが本来の姿だが、時にはコックピットをおかもちみたいにぶら下げて移動する事もあるからだ。
当然そうした際には中の搭乗者を守るため急制動はできなくなる。
なぜコックピットを機体から分離する必要があるかと言うと、ロボットアニメのようにパイロットが中に乗り込んだ状態で素早く動くと、搭乗者の脳が頭蓋骨の内側に叩きつけられて脳挫傷を起こすからだ。
それを防ぐためには非常に緩慢な動きを余儀なくされ、もはや人間が操作する利点を見出せなくなるのである。
AI制御の軍事用メックも判断力は人間に劣るにせよ、動きに制限が無いので割と良い動きをする。
人間が中に搭乗すると逆に普通のメックに勝てなくなってしまう恐れがあるのだ。
なのでRMがコックピットを運搬するのは戦闘の起こらない安全域に限られる。

プサンはコックピット内でマニュアルの粗悪なコピーを手にOSのセットアップ作業をしながら、金髪野郎にどうやって仕返しをするか考えていた。
仕返しをするのは簡単だが、問題はその後だ。
仕返しをしたのがプサンだと知ったら金髪はプサンの事を殺しかねない。
できれば仕返しをしたタイミングで、この忌々しい職場から遁走してしまいたい。
RMが実際に動くようになったところでプサンの身の安全がいつまでも保障されるとは限らない。
金髪への仕返しは仕返しとして、プサンは真剣にここからどうやって逃げ出すかプランを練らなくてはいけないのだ。

「もう少し、様子を見ないとなぁ・・・」

何をするにしてもプサンはこの職場についてもう少し知る必要があるようだ。
それ以来、プサンは勤めて現状把握をするように心がけた。
あれから半月ほどが過ぎた。
プサンは自分のいる基地についてかなりの情報を得ていた。
逃亡すると心に決めた時から逆に色々な緊張が解け、仕事でも認められるようになってきたからだ。
プサンは今や廊下とトイレの掃除を任されるほどになった。
要は都会育ちのひ弱なインテリとして馬鹿にされていたのだ。
しかし、プサンはそうした恨みつらみを逃亡兼復讐計画を練る事で昇華していた。
金髪は大人しく言われるがままになっているプサンを一層馬鹿にしていたが、プサンはエスカレートさせないように大人しく従っていた。

とうとう掘っ立て小屋のような基地に最新鋭機がやってきた。
試作機のようであったが、RMとしては始めての本格的な可変翼を持っていた。
どうも、月面で製造されてきて何らかのルートでならず者の手に落ちたようだが、同型の機体はまだどこにも無いらしい。
腕、翼、脚部と別々のコンテナに積み込まれてやってきてすぐにこれまたオンボロの格納庫で組み立てたが、組みあがってみると身長5mの体躯は全身真っ黒に塗られていた。
その格納庫ではプサンと数人のメカニックが腕組みしながら新機体をみながら立ち話をしている。

「プー、翼を可変させてみてくれよ」

プサンは「弱虫プーさん」という意味でここ最近は「プー」と呼ばれていた。

「マニュアルによると加速していない状態で翼を開くと転倒の恐れがあるそうです。」
「ああ、それはしかたがねぇなぁ・・・」

後ろの翼を折り曲げて後ろ足のようにして立っている姿は少々間抜けだったが、それもこれも機体後部に張り出したジェットエンジンのせいなのだ。
エアメック(AI制御の航空機)ばりの本格的なジェットエンジンを搭載しているこの機体は、その燃料タンクも巨大で、それらが全て機体後部に集中しているため決してバランスが良い機体ではない。
翼を畳むと後ろ足になるのは苦肉の策だろう。
どちらにせよあまり得策とはいえない。

「こんなジェット積んでるけど、燃費はどうなんだ?」

プサンはマニュアルをめくった。

「やはり、若干悪いようですが、タンクが大型なので航続距離自体は長いみたいです。」

質問した男性は辛うじて人型を保っているRMの、その黒い脚部を拳で叩きながら言った。

「へぇ、要は金食い虫だな。」
「実際に動かすのはいつからが宜しいですか?」

プサンがおずおずと聞くとメカニックの間を割って入ってきた「軍曹」が「今夜試運転できるか?」と聞いてきた。
プサンは壁にかかっている時計を見ると15時を過ぎた頃、頭の中でいろいろな時間を逆算すると22時にはなんとか間に合いそうだと結論を出した。

「トラブルが無ければ24時にはAI制御なら動かせると思います。」
「遠隔操作は出来んのか?」
「カメラアングルとモニター位置の調整をしないと3D酔いで昏倒します。」
「どうせチャーリーが乗るんだから、一度そういう目に会わせる位でちょうどいいんだが、まあそればっかりはしょうがないな。今日中に間に合わせろ。トラブルがあるようならすぐに報告するように。」

チャーリーは例の金髪の名前だが、金髪を嫌っているのは別にプサンだけではなかった。
プサンはそれから大急ぎでRMのOSセットアップを開始し基本的なAIを組み込んでから、シュミレーターとOS上でエラーチェックを行った。
初めて扱う可変のコマンドをAIに組み込むのがとにかく大変で、コマンドが単純すぎて融通が利かない。
今後、一度ソースを洗い出してコマンドの元の部分を解析しなければいけないと思いつつ、あっという間に夜になってしまった。

深夜のアフリカ。遠くの方でなにやら鳥の鳴く声が聞こえる。
どこから出てきたか分からないならず者の中でもお偉いさんが何人も見る中での運用試験だった。
今や格納庫の扉は開け放たれて、その場にいる全員の体からは防虫スプレーの匂いがしている。
運用試験の監督は多分偉い人の誰かであろうが、実際に指示を出すのは軍曹で、プサンはその軍曹の指示に従って端末からコマンドを叩く。

「プー、どんなAIが組んである?」
「通常歩行、跳躍、走行から変形飛行、飛行から着陸して走行。今日は火器管制は未実装です。」
「上出来だな。やってみてくれ。」

開け放たれた格納庫の扉から真っ黒なボディーのRMが夜の闇の中へ歩き出した。

「おお!動いた!!」

そして・・・

「おい、何も見えんぞ・・・」

一旦屋外に出てしまうとRMの目の部分が赤く光っている以外には何も見えない。
黒い色は電磁波吸収塗装だったようで、当然可視光線もかなりの精度で吸収しているようだ。
アフリカの星空が幾ら明るいとはいえこれは無理だ。

「これは・・・可変したかどうかすら分かりませんよね?」

お偉いさんの一人が苦言を呈した。
軍事目的に作られたものとして高性能である事は間違いないのだが、こう見えにくくてはいけない。
しかも、お偉いさんが何人も遠路はるばる見に来ているわけだ。

「プサン、戻せ!塗装だ!」
「はい!今すぐ!!」

プサンは闇の中から新型機を呼び戻すと、「皆さん、下がってください!」と注意を呼びかけながら走り回った。
メカニック達はもっと慌てていた。
塗装は突貫工事だった。
演習用のペイント弾に用いる蛍光ペンキを持ってきて、大急ぎでマスキングした機体にエアスプレーで吹き付ける。
マスキングもフリーハンドで手足翼胴体と数箇所に行われたので、塗りあがるとどんな姿になるのか全く予想もつかない。
予め用意されていたわけではないのでペンキもすぐになくなってしまって、なんとも形容のしがたいツートンカラーになってしまった。

「このペンキはちゃんと夜でも光るのか?」

そういわれてメカニックの一人が夜の闇の中へ歩き出すと、はたしてぼんやりと光を放った。
彼は慌てて作業をしたために、転んで体の右半分にペンキを浴びてしまったのだ。
格納庫ではありったけの投光器を用いてペンキを乾燥させ、辛うじて垂れなくなった所で運用実験再開となった。
実験開始の24時からもう2時間近く経っている。
夜の闇の中に歩き出したRMはぼんやりと身体を青く光らせて格納庫に背を向けて離れていった。
充分距離をおいたところでその場で何度か跳躍し、そして幾つかの基本動作を終えた後に可変運用実験となった。

「暖機運転を開始します。」

プサンはそういうとコマンドを叩いた。
まもなくアフリカの夜の虫や鳥の鳴き声に混じって、遠くの方から微かに「ゴー」と音がする。
音の主は青く薄暗く輝いている。
その模様から機体が今どんな状態か完全に把握する事は出来ないが、暖機運転しているジェットエンジンの僅かな光からどちらを向いているか辛うじて分かった。
ジェットは一番後ろについているからである。

「すげぇモノを作る奴がいるもんだな・・・」

黒一色の塗装のせいで数時間待たされた事も忘れ、その場にいるもの達は遠くで輝く薄灯りをただ眺めていた。

「暖機運転が完了しました。」

プサンがそういう待ちくたびれた軍曹は今日の目玉である実験の開始を命じた。

「飛行実験開始!」
「飛行実験を開始します。」

今から飛ぶのは飛行機やヘリではない。
RMが飛ぶのだ。
世紀の瞬間を文字通り固唾を飲んで見守った。
飛行実験計画ではちょうど見ている人間の500mほど先を横切って加速し、その後離陸した後に空中で旋回して見物人の500m先を再び横切って軟着陸する。

「滑走開始します。」

見物人の視界の左端から滑走を始める。
本当はもっと短い滑走でも充分飛べるらしいのだが、プサンも始めての経験だったので大きめに滑走距離を設定した。
轟音を立てて蛍光色の模様が走り出す。

「今、変わった!変形したぞ!!」

見物人の声が拍手に変わった。
ペイントはぼんやりとしか見えなかったが、変形した事ははっきり分かった。
「ギーン」と戦闘機のような音を立てて機体は飛び立ちあっという間に目で追えない程小さくなった。

「おい!君!あれは帰って来れるのかね!?」

痺れをきらしてお偉方の一人がプサンに詰め寄った。
正直、自信は無いがAIはきちんと組んである。

「大丈夫なはずです。」

そう答えるしかなかった。
望遠鏡を持っているメカニックの一人が空を指差して叫んだ。

「旋回してる!ほらあそこ!!」

見ると望遠鏡を持参の人間は一人どころではないようだ。
全員で口をあけて望遠鏡を構えながら、頼りない手つきで中空の一点を指差している。

「戻ってくるぞ!!」
「おう!!おう!!」

何やら分からない掛け声を口にしながら、格納庫前は異様な空気に包まれていた。

「まもなく着陸体制に入ります。」
「見れば分かるわ!」

プサンはなぜそれで自分が怒鳴られるのか分からなかったが、興奮しているのは周りの人間と同じだった。
ちらと金髪をみると満足そうな顔をしてその騒ぎを見ている。
RMは地面に近付くと逆噴射をして急減速し脚部をだして綺麗な着陸をした。
このRMの脚部は特別製で整備された滑走路が無くても着陸が可能だ。
最近のエアメックが垂直離着陸を標準装備しているのに比べると趣を異にする。

着陸したRMは脚部についた大きな車輪でしばらく走ると方向転換し、格納庫へ戻りながら減速して、最後は歩行しながら見物人の前へ姿を現した。
メカニック達は実験によって破損した個所が無いかをこれから徹夜で調べるため、殺気立った顔つきでメックを格納し始める。
その迫力に気圧されて、他の見物人たちは基地内のこれまた薄汚い応接室へ引っ込んでいった。
金髪はその一部始終を見届けるとプサンに近寄って

「負け犬もやればできるんじゃねぇか。俺が乗るまでにもう少し何とかしておけよ。」

と言って、格納庫を後にした。
「どうやって育つとあんな性格になるのだろう?」と真剣に考えていると今度は軍曹が近寄ってきた。

「プー、色塗りで手間取らせたな。俺から謝っておく。済まなかった。」

運用実験責任者としての責任をとりたかったのだろうか。礼儀正しい堅物はプサンに軽く頭を下げた。

「軍曹だけの責任ではありません。本当ならば夜間に実験するって決まった時点で僕も気付けたはずです。」

軍曹はしかめっ面をすると。

「誰もお前にそこまでを期待はしていないんだよ。AIの事だけ責任持ってやってくれれば良いんだ。」

と言って。

「明日からまた頼む。」

と言い残して格納庫を去った。
プサンは心の中で「もうとっくに日付け変わってるんだけどな・・・」と呟くと、実験のデータを取得するためにRMの方へ向かった。
最初の運用実験からさらに一週間が過ぎた。
火器の取り回しを考えると、可変翼は一つの弱点だった。
飛行中に銃を振り回して翼を破損すると、あっという間に墜落して自滅する。
ナイーブな調整が必要だった。
問題は他にもあった。
未知のRMのAIをプサンが一人で組むのには限界があった。
最初は身長の低いプサンを馬鹿にしていた基地の連中もプサンのイライラがただ事ではない事を察知して、あまり馬鹿にしなくなった。
プサンは毎日20時間近くPCとそのメックの間を往復し、かすれたコピーのマニュアルは食事中もプサンの見えるところに置いてあった。
基地の人間達は一様に、新入りのプサンがここまで身を削る事にある種の感動を抱いていた。
ほぼ拉致のような状態で連れて来られたチビのインテリが寝食を惜しんで仕事に取り組む姿は、アウトロー達の胸を打ったのだ。
唯一、金髪だけはプサンを馬鹿にしつづけていたが、集中して仕事しているプサンにその程度の雑音が届くわけが無かった。
金髪は何度か絡もうとしたが、相手にされない上、基地の上役にまで「新入りの仕事を邪魔するな」と釘を刺される始末。
当然、金髪はますますプサンの事が気に食わないわけだが、プサンのやる気に感化された他のメカニックまで一緒に敵に回すのは得策ではない事は薄々分かったようだ。
さらに金髪はシュミレーターを用いた訓練に狩り出されるようになった。
自信家の金髪でも可変翼を使いこなすのは非常に難しく、何度もキレながらもパイロットの座を他人に明渡すのが嫌でコックピットに齧りついていった。

そうした甲斐有ってAIは遂に完成した。
シュミレーターでの退屈な訓練にうんざりしていた金髪は、悪態をつきながらも嬉々としてコックピットに乗った。
プサンは他のエンジニアにコックピット周りの説明を任せて、金髪の操縦時のデータを集めるべくPCに向かっていた。
金髪はシュミレーションで行った一通りの動作を行うと、運用計画どおり一旦コックピットを降りた。

「楽勝だぜ!俺にはできないとでも思ってたのかよ!!」

金髪は格納庫から食堂に向かいながら右手を振り回していた。

「プー、チャーリーの操縦データは?」
「非常に高い数字が出ています。優秀なパイロットですよ。」

金髪は優秀なパイロットだった。
多いとは言え沢山あるモニターに均等に目を配り、大胆さとこまやかさを併せ持った操縦はそうそう真似できるものではない。

「あいつはあの性格さえ無ければ腕の良いパイロットなんだけどなぁ・・・」
「機械は人間の性格まで見ていませんからね。」

プサンはそう言うとAIの手直しを始めた。
チャーリーが食事から戻ってきたらコックピットをトレーラーに載せて広い場所へ行き、飛行を含んだより高度な運用を行う予定なのだ。
プサンにはそれまでにやるべきことが沢山有った。

「プーさん、食事は良いんですか?」

メカニックの一人が気さくに声をかける。

「いや、良いよ。トレーラーにサンドイッチ積んどいたから。」
「やっぱり、都会から来た人は仕事のやり方が違いますねぇ。お先に失礼します。」

プサンはそのメカニックをチラッと見て会釈すると、またPCに向かった。
まもなくノート型のPC端末を畳んでケースにしまうと、紙束と小さなバッグを持ってトレーラーに乗り込んだ。
運用試験も大詰めだ。
食事を終えたメカニックたちが数台しかない作業用のメックを使って、RMに火器を取り付け始めた。
電磁コイルで加速された金属弾を打ち出すタイプの銃の中でも、銃身が短く翼の邪魔をしにくそうである理由からカービン銃が一丁。
肩にはプラズマ化したヘリウムを加速して射出する中性子ビーム砲が一基。
反対側の肩にはプラズマ機雷発生装置。
これは電子レンジみたいな装置で炭素を加熱する事で人工的に雷の球を作り出す装置。
雷の球は何も無ければしばらくその場に漂ってから消えてしまうが、物体がある程度近寄ってくると、こちらからもゆっくり近寄っていって衝突する厄介な性質を持っている。
そして、万一の時のためにプラズマカッターが搭載された。
主に作戦中に障害物の撤去に用いる工具としての意味合いが強い武器で、圧縮空気をプラズマ化して噴出することで刃を形成する。
しかし、コンプレッサーで圧縮された空気を使うので、使いつづけると圧縮空気の気圧が下がり、気圧が上がるまで使用を控えなくてはいけなくなるので、あまり乱用は出来ない。
これはノズルを取り付けるだけなので武器の取りまわしの難しい可変翼機にも気兼ねなく搭載できる。
結局、カービン、中性子ビーム砲、プラズマ機雷、そして一応プラズマカッターと言う装備になったが、貧弱さは拭えない。
何しろオンボロ基地のオンボロ格納庫に置いてあったもので使えそうな物を訓練用に積み込んだだけなので、贅沢はいえなかった。
搭載作業が終わると作業用のメックがコックピットをトレーラーの荷台に載せ始めた。
RMはその遠隔操縦できる範囲が直線で10kmと限られている。
電波を用いるためにそのような範囲が出来てしまうので、あまりはっきりと10kmと言うわけでもないが、それも自軍のメック等が間を中継していればその分だけ広い範囲をカバーして操縦する事が可能だ。
軍事用のメックはほぼ全て自軍の電波通信を勝手に中継する機能を持っているため、軍事行動中は自軍の前線から10km以上はみ出さなければ、コックピットは軍の最後尾にあっても操縦に問題は無い。
しかし、今回の運用試験ではトレーラーである程度追いかけてやら無いといけない。
また、遠隔操縦を他のメックで中継する試験も行いたいので、人間が中に乗って動けるタイプのメックを一台持ち出し、トレーラーに乗せたコックピットと可変翼機の間を中継させ、トレーラーから9kmの地点で中継、RMはさらにそこから9kmの地点で運用試験を行う計画も盛り込まれている。
トレーラーの運転席と助手席には軍曹とプサンが、荷台のコックピットには金髪が搭乗。
さらに同じ荷台にすっかり黒と蛍光ブルーが板についた可変翼機が乗っている。
彼らはこれから基地から30kmの地点を目指す。
そこで武器を搭載した初めての運用試験を行うのだ。
運用試験予定地に向かう途中に車窓からインパラの小さな群れが見えた。
アーマゲドン(詳細はリンクを参照)による人類の地球撤退は、自然界にとっては貴重な時間だった。
海、陸を問わず植物、動物にとって人類がいなかった20年余りの時間は、人類の文明によって弱まった力を回復する時間でも有ったからだ。
一部の自然公園等では逆に個体数を減らした種もいるようだが、それらの種も、もう少し時が経てば再び力をつけ繁栄の時を迎えるであろうと言われている。
プサンは軍曹の運転するトレーラーの助手席で端末をいじりながら、車窓の外の景色を眺めていた。
端末とは言ってもプサンの元々所持していた携帯端末は奪われたきり戻ってきていない。
ここでの端末とは、基地での仕事用に渡された旧式のノート型のPC端末だ。

「よし、運用試験を行う!」

軍曹はGPSで場所を確認し、車を停めると運転席を降り、トレーラーの後部にあるボタンを操作すると荷台の衝立を倒した。

「チャーリー、まずはそいつをトレーラーから降ろせ。」
「OK!」

金髪の操作でRMがトレーラーから地面に降りた。
傍目にはさほど難しくない操作のはずなのだが、RMの重量で沈みきったトレーラーから急に降りようとすると、浮き上がるトレーラーの車体に足をすくわれて転倒しかねない。
今に限ったことではないが、兎にも角にも慎重な操作が要求される。

「降車完了だぜ。」
「ようし、降車完了確認!」

プサンは手元の端末で基地に「降車成功」と報告を送る。

「これより作戦区域まで移動を行う。」
「いつでも良いぜ!」

プサンはトレーラーから降りると後部の軍曹のところへ向かった。

「軍曹、搭乗お願いします。」
「了解。」

軍曹はもう一台トレーラーに載せてあるメックへ乗り込んだ。
メックとは言っても、装甲車とブルドーザーを足して2で割ったような代物である。
しかし、一応メックと銘打ってあるだけ有って、悪路に強く、汎用性の高い車両型メックだ。
軍曹の乗ったメックはトレーラーの荷台から自力で降りると、金髪の操縦する可変翼機の横につけた。

「降車完了!」
「降車確認しました。」

プサンは急いで助手席に戻ると端末を開いて運用試験の開始を金髪の乗るコックピットと、軍曹のメックに打電した。
双方から通信機を通じて「了解」のメッセージを受け取ると、試験におけるプサンの役目は一旦休みだ。
トレーラーの荷台には已然金髪の載ったコックピットがあるが、本人は軍曹と一緒にもと来た道を戻っているような感覚に捕われているだろう。
実験の概要はこうだ。

基地から30km離れた場所までトレーラーで赴き、そこから中継用のメックと可変翼機で基地の方角に引き返す。
コックピットの載ったトレーラーから9kmの地点で中継用のメックは停止して、可変翼機はそのまま基地のほうへ移動を続ける。
そこで、コックピットからの直接の通信が切れたときに自動的にメックによる中継に切り替わるかを見るわけだが、ここで切り替わらなかった場合は可変翼機はRMの持つ「帰巣本能」で勝手に電波の届く範囲へ帰ってくる。
上手く切り替わった場合はさらに9km基地のほうへ近付き、その近辺で火器を用いた運用試験を行う予定だ。
運用試験でそこまで出来れば、実戦投入も可能だ。
火器についてのデータ取りも必要だが、腕部自体は従来のメックと大きな違いが無い。
翼に武器をぶつけないように気をつけさえすれば、問題なく運用できるはずだ。
プサンは車の窓ごしにアフリカの午後の空を眺めた。
時計を見るともうまもなく目標地点へ到着するだろう。
プサンは今日のために用意した物が揃っているかカバンの中を確認してまた閉めた。
今ごろ基地周辺ではメックの運用試験で使う射撃用の的を設置したりで大慌てだろう。
その中にはAIで制御されたペイント弾を打ち返す動く的があったりする。
金髪はそうした試験をパスして一日も早く戦場に出る日を心待ちにしていた。
さらに今日の試験は金髪が基地に来てはじめて銃が撃てる記念すべき日なのだ。
朝からテンションは上がり通しだった。

「運用計画地点に到着!」

プサンは通信機越しに聞こえる軍曹の声を聞いて我に返った。

「到着確認しました。試験は順調です。」

プサンは軍曹と金髪のそれぞれ操るメックの走行した軌道を見直した。
二機で隊列を崩さずに並んで走る事が出来るか否かも、今日の試験の重要な見所の一つだった。

「チャーリー機、運用試験を続行してください。」
「了解だぜ。」

チャーリーと呼ばれた金髪の声が明るい。
試験が順調な為、機嫌がよいのだろう。
間もなく本日の山場の中継切り替えだ。
遠隔操縦の中継はRMの標準の機能ではあるが、現状運用されているRMでも時に不安定になる事がある。
この試験が成功しないと・・・何もかもが水の泡だ。
端末を食い入るように見つめるプサン。
端末のステータス情報にはコックピットからの直接の電波通信で操縦が行われている事を現す「直接通信」の表示が出ている。
現在、チャーリー機とコックピットの距離は11km。
そろそろ、切り替わっても良さそうだが今日は電波の調子が良いらしい。
12kmを過ぎてもまだ直接制御が出来ている。

「切り替え確認!」

チャーリーの声だ。
一瞬遅れて端末にも「中継」の文字が表示される。

「11.8km付近で切り替え完了だ。外からの監視はデータが遅れるんだよ。」

チャーリーがまともに喋るのを初めて聞いた。
案外いい奴なのかもしれない。
まあ、歴戦のRM乗りとしては経験上、当然の知識なのだろう。

「初耳です。ありがとうございます。」
「こればっかりは仕方ねぇからな。後からメックに残ったログを見直せば11.8km近辺で記録が残ってるはずだからよ。」

プサンはその話を聞きながらその後の予定を頭の中で再確認していた。

「当機はこれから遠隔操縦で作戦地点へ向かう!作戦地点の準備が完了次第、通信されたし!いいな!?」
「・・・作戦地点準備完了しています。確認お願いします。」

聞き覚えのあるメカニックの声だ。

「確認したぜ!待ってろよ!!ヒャッホウ!!」

チャーリーはトレーラーの助手席まで直接聞こえそうな声を出した。
決して装備に恵まれているとはいえないならず者たちのところに、恐らく未発表の新機体が配備されたのである。
そしてならず者どものパイロットの中でも比較的若い金髪に白羽の矢が立ち、そのパイロットになる任務が与えられたのだ。
金髪の異様な苛立ちはそうした重責から来ていたのかもしれない。
今になって垣間見せた陽気な人柄が、彼の本来の姿なのかもしれないな・・・とプサンは思った。
そして

「可哀想にな・・・」

とポツリと呟いた。

「作戦区域に到着したぜ!いつでもやれるぜ!」

通信機から金髪の陽気な声が聞こえてきた。
プサンは運用試験計画をなぞって通信を返した。

「確認しました。作戦区域の人員は避難してください。」
「クルー全員が避難を完了しています。作戦開始できます。」
「チャーリー機は火器管制状態を確認、報告してください。」
「オールグリーンだ!」
「規定数の模擬射撃を開始してください。」

火器管制試験の開始だ。

「了解ぃ!!」

コックピットで見えている映像と同じ映像を端末で見てみる。
順番にカービン、中性子ビーム、プラズマ機雷は後退しながら発射して、現時点で問題はないようだ。

「作戦は次の段階へ移って下さい。」
「了解ぃ!!やるぜぇ!!」

ここからがチャーリーが待っていた本日の目玉の作戦だった。
そしてプサンもそのときを待っていた。
プサンが夜光虫であったとして、どのように「夜光虫」と出会ったかについては推測の域を出ない。
「夜光虫」と呼ばれた機体がキシモト工業の開発であった事。
また当時、軍事メック開発の世界ではキシモト工業はトップメーカーの一つであった事が、まぎれもない事実として存在している事は万人の知るところである。
事実、試作機として開発された可変翼変形二足RM「KR-MW303型」通称「ガーゴイル」の初期ロットが未発表の状態で紛失流出した事をキシモト工業自体が認めているし、さらにアトラス山脈山中で墜落した「夜光虫」と思しき機体に刻印されたロットナンバーは、紛失したそれと一致した。
しかし、月面で製作され地球に運ばれてキシモト工場内試験を待たずに「紛失」した「それ」が、その「紛失」後にどこへ行ったのかを追う手段はもう今となっては残されていない。
また、それは同時に「夜光虫=キシモト社員説」を産む原因にもなっており、「夜光虫」にまつわる一連の事件が無ければ注目される事も無かったであろうプサン=グラントと言う人物が脚光を浴びる原因を作った。
行方不明者からプサン=グラントの名前が浮かび上がってきた当時、プサン=グラントはキシモト内部の人間であったとする説が急浮上した。
しかし、キシモト内部の人間だとすると夜光虫の出撃地点に非常に不可解な点が残る。
夜光虫が出撃した地点は明らかに夜光虫が監査局(月面政府の下部機関でカタパルト運用監査局を示す。この場合は特にニューナイロビカタパルト運用監査局)に一定期間所属していた事を匂わせているからだ。
監査局は当然その関係を否定しているが、キシモト工業との間には当時のっぴきならない関係があった。
この後に文中で紹介する事も有ると思うが、監査局はキシモト工業を「カタパルト運用における治安維持条約違反」で連合と月面政府に告訴しているからだ。
その敵対するキシモトと監査局の間で企業の機密に関わるような試作機や人員(この場合プサン=グラント)が異動しているとは考えにくい。
そうした事実からプサンが夜光虫だとしてキシモトの関係者であった可能性は薄いと言われている。
また、実際にキシモト工業がどのような「違反」で告訴されたかと言うと、ダミー企業を経由して軍用メックを後に出てくる「クラン」に売却した実績をつかまれたからだ。
「クラン」=「悪」のイメージが強かった当時、それは法的にも倫理的にも重大な裏切り行為であり、キシモト工業は経営陣を含む関係者を全員処罰せざるを得なくなった大事件であった。
そうした経緯から、「クラン」成立以前にもキシモト工業とならず者たちの間で密約が有ったとする説を支持する層は多く、その中に「夜光虫」も有ったのではないか?
また、その時に疾走した平凡なAI技術者プサンが彼らの中に籍を置いていたのではないか?とする説があってもおかしくは無いであろう。
当然、現段階で描かれている彼を取り巻く多くの人物が架空の人物である事を断って置くべきであるが、彼が仕事に取り組む姿勢を含む人物像などは、彼が在籍していた会社で行われた調査の中で明らかになっている点を知っていただきたい。
社の内外での聞き取り調査では、彼が上司であった男性に身長が低い事で度々揶揄されていた事が判明している。
また、彼がそうした一方的なハラスメント行為を受けることを良しとしないばかりか、その上司の交友関係を調べ尽くし、その中で発見した不倫の事実を広く衆人の知るところとした・・・と考える者が相当数いた。
無記名でその男性と不倫相手の、俗に「ツーショット写真」と呼ばれる写真を社内の掲示板に張り出した人間がいたのである。
そうした張り紙はその男性の家の近所でも行われ、その男性は一時期は社会的にほぼ再起不能に追い込まれたようだ。
それがプサン=グラント青年の所業だとは当時ですら誰も断定できなかった。
しかし、それがプサン=グラントの仕業であった場合、プサン=グラントの執念深さは、我々(特に著者)の常識の範囲外であることは知っていただきたい。
また、そうした推論はテロリストである「夜光虫」に対して行われた数々のプロファイリングの結果ともおおよそにおいて一致している。

読者の皆様には是非、そうした経緯を踏まえて読んでいただけると幸いである。
また、中座のついでと言うと聞こえは悪いが、こうした拙文に目を通して頂いている読者の皆様にはこの上ない感謝をささげたいと思う所存である。
プサンはこの時を待っていた。
ノート型端末を操作するとコックピットに搭乗する金髪のバイタルが表示されている。
RMのコックピット如きで取得できるデータはそんなに多くないが、プサンにとっては充分すぎる情報だ。
プサンが彼の作業フォルダから新たに立ち上げたプログラムは、そのバイタルの数値を取得しながら、コックピット内のディスプレイに表示する映像を制御するプログラムだ。

コックピット内の幾つかのディスプレイは操縦者を囲むように繋がっていて、操縦者に臨場感を与える。
そのディスプレイに送られてくる映像はメックのカメラから無線で送られて来るわけだが、ディスプレイの配置とメックのカメラ位置は非常に精密に調節してある。
それによって自然な臨場感が得られているわけだが、それが人間にはわからない微妙なレベルでずれていると、いつしか脳は視覚情報の違和感に堪えられなくなり、俗に言う「3D酔い」を起こさせる。
そして恐らく今、チャーリーは射撃演習を始める興奮の絶頂にあるだろう。
プサンの作ったプログラムはバイタルデータを見ながらディスプレイの映像を「揺らす」プログラムだった。
金髪は射撃に熱中している間に3D酔いを徐々に、そして確実に深めていく。
加速度級数的に酔いを強くするようにセッティングされているそのプログラムの術中に嵌ったら最後、金髪が異変に気付いた頃には取り返しがつかないレベルで3D酔いをしているであろう。
このプログラムの基本思想はバーチャルリアリティーの考え方が発達した21世紀初頭には生まれていて、そうしたバーチャルな手法での技術者を3D酔いに慣れさせる為のプログラムであるが、結局、機械が本気になれば
ほとんど全ての人間が確実に酔う上に、抵抗力を養うどころかかえって逆効果になると意見が出された時点で使われなくなった技術だった。
プサンはただ、プログラムがバイタルを監視しながら、酔いの深度が時間の2乗に比例するように映像を調整するようにプログラムをいじっただけである。
これはプサンが月面の学校に通っていた時代に流行った「悪質な遊び」の一つでも有った。
バイタルを見ると金髪の中にそのストレスが蓄積しているのが分かる。
しかも、金髪は今待ちに待った射撃演習中で、そう簡単に音を上げるわけがない。
プサンは急いで細工を始めた。

持ってきた缶きりで使い終わった酸素吸入スプレーの底に小さく穴をあける。
あけた穴からスプレー缶の中に、プサンの割り当てだった場所の掃除で使う洗剤を少量入れ、さらに掃除全般で使っている他の洗剤を少量入れる。
瞬間接着剤とダクトテープで穴をふさぎ軽く振ってから本来酸素が出るべき所から、別のガスが出るかどうかを確認する為にノズルを軽く押した。
出てきたガスからはツンと漂白剤の匂いがする。
圧力も十分上がっているようだ。
プサンは口に当てるノズルを口で吹いて、匂いが残らないようにガスを吹き飛ばした。
端末を見ると演習も終わりに近付いている。
可変して空を飛びながら、地上の目標物に射撃を当てる演習中だ。
そして、同じ画面に表示される金髪のバイタルは物凄い値を示していた。
普通、コックピットのバイタルなんて監視する物好きはいない。
プサンはそ知らぬ顔で通信を入れた。

「こちらプサン、チャーリー操縦士、バイタルの数字が良くないようだ。」

間を置いて金髪の通信が入る。

「・・・こちらチャーリー。どうもいけねぇ・・・射撃か離着陸でメインモニターのカメラ位置が決まらなくなっちまった見てぇだ・・・この機体は・・・まだ使うには早すぎるぜ・・・」
「こちらプサン、チャーリー操縦士。AI制御に切り替えを行うか?」

やはり、すぐには答えられないのだろう、少しの間があって金髪から連絡が入る。

「・・・最後の・・・最後の対地射撃が終わったらすぐにでも頼むわ・・・」

金髪が僕に泣き言を言うとはかなり参っているな・・・とプサンは考えながら、AI切り替えの準備をした。
最後の対地射撃を行うと金髪は通信を入れてきた。

「・・・頼むわ・・・」

プサンは急いでAI制御に切り替えるとトレーラーの助手席から飛び出した。
自分の身長が低い事に苦労しながらも、トレーラーの荷台に駆け上がると、コックピットの扉を外から叩いた。

「チャーリーさん!!開けてください!!チャーリーさん!!」

今ごろ中では地獄の苦しみを味わっている金髪がいるだろう。
強制的に外から開けることも出来るが、何とか自発的に開けれたようだ。
開く扉に倒れこむように転がり出てきたのは死人のような顔をしたあの金髪だった。

「・・・すまねぇ、もう一回再調整だ・・・」
「信じられません!この状態で訓練をやり遂げるなんて!!」
「・・・ったりまえよぉ・・・」

プサンは無言で酸素のスプレー缶を渡した。
チャーリーはギリギリの状態であったが、薄れ行く意識の中でプサンの心遣いに感謝しつつ逆の手で力なくグッドジョブサインを作りながら新鮮な酸素を胸一杯吸い込んだ。

・・・つもりだった。

普通、酸素は洗剤同士の反応では作られない。
そうした洗剤全てがそのような反応に用いる事が出来るわけではないし、用いるべきでもない。
しかし、その純度の程は定かではないが、そうした反応から一般的に得られる気体は有害であって、強い毒性と即効性を持っている。
チャーリーは胸一杯にその薄い緑がかった黄色の気体を吸い込んで、無抵抗で昏倒した。
その片手は親指を立てたグッドジョブのサインのままであった。
プサンはチャーリーを静かに床に寝かせてグッドジョブサインを返すと、ダクトテープで手足を縛ってトレーラーから放り出した。

※注意
洗剤を用いる場合は安全表示を良く読み、正しい用法、用量で用いてください。
決して文中にあるような用途には用いないで下さい。
プサンは金髪への復讐を果たすとすぐに次の動きに取り掛かった。
トレーラーの荷台から飛び降りると、転がっているチャーリーを尻目にトレーラーの運転席に乗り込んだ。
そしてトレーラーのイグニションキーを回しエンジンをかける(ジェネレーターを起動する)と基地に背中を向けて走り始めた。
基地には今、車両を併せてもロクなメックが無い。
トレーラーを運転中とは言っても見渡す限りの平地だ、見通しも利く。
プサンは大急ぎで端末をトレーラーに直結すると、この類の車両には標準装備の自動操縦AIがあるのを確認して実行した。
GPSを使うと、自分がどこにいるのかやっと分かり始めた。
どうも拉致されて南へ連れてこられたらしく、ニューナイロビまではまだだいぶ距離がある。
端末をトレーラーから引っこ抜くと再度、トレーラーの荷台にあるコックピットと通信を確立してRMの状態を調べた。
トレーラーと飛行しているRMではその移動速度は比較にならないほどRMのほうが早い。
可変翼機は音速こそ出ないが俗に亜音速と呼ばれる速度までは出せるらしいのでもうそろそろ追いついても良い頃だ。
コックピットを通じて機体から得られる情報を見るとまだ事態の異常には誰も気付いていないようだ。
コックピットへの自動帰還AIで追いかけてくるRMとトレーラーの距離はもう6kmあまりに迫っている。
プサンは再度端末をトレーラーに直結してスレイブ状態に設定した。
そして、助手席に端末を置くと、運転席の窓を開け放ち身を乗り出した。
窓枠に一旦腰掛けるようにして窓の外に上半身を乗り出す。
一旦トレーラーを止めようかとも思ったが、そんな事をしていると追っ手がかかった時に不利になる。
手のひらに溜まった汗をズボンで拭うと意を決してトレーラーの荷台に乗り移ろうかと思ったが、良く見るとトレーラーの運転席の頭の後ろに窓があってそこから荷台が見えるようになっている。
プサンは作業用のモンキーレンチがあったのを思い出して運転席に座りなおすと、助手席側の収納ボックスからそいつを取り出して後ろの窓をぶち破った。
幸いプサンの身体は小さい。
強化ガラスを叩き落して難なく窓枠をすり抜けると、荷台に降り立った。
頭のてっぺんから足の爪先まで力がみなぎってくるのが分かる。
プサンは一ヵ月半あまりの軟禁生活から脱出したのだ。

「自由だ・・・」

誰に言うでもなくそう呟くと、コックピットに乗り込んだ。
金髪の身体のサイズに合わせてあるコックピットは決して座りごこちが良いはずは無いのだが、プサンの中の興奮がそれを上回った。
最初にRMが1kmの距離に迫っているのを確認するとAIを「警戒」に切り替えた。
迂闊にトレーラーめがけて着陸されたら困る。
次に金髪の意識を奪ったメインモニターの作為的な「揺れ」を収めると、RMのセンサーを頼りに情報を集め始めた。
やはり追っ手がかかっているようだ。
プサンが乗っているトレーラーは恐らく現在80km/h以上で走っていると思われるが、もっと速い乗り物は幾らでもある。
但し、彼らが事態の異変に気付くまでに、トレーラーは最短でも40km程は基地から離れていたであろう。
その距離をつめるのは容易ではない。
しかし、遥か北のニューナイロビまで一気に逃げ切るのは到底無理だ。
基地からの追っ手が来るとして最も足が速いのは、一台だけ置いてあったオンボロの回転翼のエアメック(ヘリコプターを指す)だろう。
プサンは先程トレーラーの運転席でスレイブに設定してきた端末に、コックピットの端末からマスターでアクセスした。
これで、コックピットからトレーラーを操作できる。
とりあえずトレーラーの速度を120km/hぐらいまであげて燃料のシングルH残量を確認する。
出てくる前に満タンにしてきた甲斐があって、まだまだ走れそうだ。
酸化型ジェネレーターの出力も安定している。
何十年も前に開発された当時は燃料電池と呼ばれていたらしいが、今ではあまりそう呼ぶことも無くなった。
プサンはトレーラーのAIが順調に動作している事を確認すると、RMの状態を確かめた。
燃費が悪い割に大容量のタンクを積んでいるため、まだ燃料に余裕はありそうだが・・・。
ここでプサンは自分の過ちに気付いた。
トレーラーの速度に合わせて効率の悪い低速でのジェット推進を行うよりも、トレーラーの速度を落としてRMに車輪走行させたほうが燃費が格段に良い。
当然、ジェットで目一杯スピードを出せればそれも良いが、今トレーラーを捨てるのは得策ではないだろう。
追手の移動速度は時速500km/hらしい。
例のエアメックだろう。
もう間もなく追いついてくる。
逆にこいつさえ何とかしてしまえば、外部に援軍でも頼まれない限り、基地のメックによる追撃の脅威は消える。

プサンは追手とトレーラーの距離が10kmに迫るのを待っていた。
しかし、13km程に迫ったところでふと思いついてRMをトレーラーと追手を結ぶ直線状に配置してみた。
そして射出口を180度回転してプラズマ機雷をばら撒いてみた。

「当たった。」

勝負は一瞬だった。
空中を漂う雷の球は500km/hで突っ込んでくるエアメックに真正面からぶつかったのだ。
ぶつかったというのはあまり適切な表現ではない、むしろ吸い込まれたとでも言うべきか。
高い電圧のプラズマ機雷を喰らったエアメックは今ごろ制御関係が麻痺して地面に叩きつけられるか、必死で体制を立て直している最中であろう。
プサンはレーダー上に点で表示されていたエアメックの動向を注意深く見守っていたが、どうもトレーラーを追う為に低空飛行していたのが悪かったらしく、地面まで落下したようだ。
プサンはトレーラーの速度を時速70km近辺まで落として、RMを真横に着陸させて車輪で併走させることにした。
この一ヶ月半のプサンの労働の成果が発揮される時だ。
今やRMとトレーラーは完全にプサンの手を離れ、束の間の安全な旅路を約束している。
追手の動向をもう一度確かめると、だいぶ遠くのほうで一台のメックが件名に追いすがっている。
恐らく一番トレーラーに近い位置にいた軍曹の乗るメックだ。
そして、もうすぐ彼のメックの燃料のシングルHは尽きる。
本来ならここでコックピットの端末からインターネットにアクセスして暇を潰したいところだが、流石にイリーガルな品物からアクセスすると何を言われるか分からないのでやめておいた。
また、逃げる立場に間違いはないので、迂闊に広域に電波を発信するのも避けたい。
そう考えている内に、緊張が解けてうつらうつらとしていると、急に車体が揺れた。
びくっとしてトレーラーのAIのログを見ると、地面に明いた穴を避けた事が分かった。
何事かと思いコックピットを降りて、走行中のトレーラーの荷台から周りを見回すと、以前この辺では戦闘があったようだ。
周りにはメックの残骸なども見られる。
プサンはコックピットに戻ると恐らく軍曹であろう追手を探した。
ログを見る限り、流石にトレーラーよりは足が速いメックなので一時は20kmまで接近していたようだが、そこで燃料切れになったのだろう。
プサンはRMの高性能のレーダーの情報に注意しながら、現在速やかに脅威になる追手は以内と判断した。
周囲には軍用メックやらの残骸がごろごろしている。
端末からトレーラーとRMにコマンドを叩くと、トレーラーとRMを一旦停める事にした。

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