Der getreue Musik-Meisterを「忠実な・・・」とするのは
私も不自然な訳だと思っていました。
「誠実な音楽師」とか「真摯な音楽師」とかでよかったんじゃないかと。
しかし、この定期刊行物の序文にテレマン自身が使っている表現ですが、
weil der Mensch der Arbeit wegen, und um dem Naechsten zu dienen, lebet.....
(man lives for work, and in order to serve others)
というのがありまして、このことから音楽によって糧を得るのではなく、
音楽のために生き、さらに神から賜った才能を独り占めするのではなく、
隣人と共有する、そのような音楽家像をこの定期刊行物に付与しようとした
意図が感じられます。
このum dem Naechsten zu dienen lebet「隣人に仕えるために生きる」という表現から
「隣人の僕として生きる」といった意味合いにもとれ、僕となれば「忠実な」という訳が
あながちはずれてはいないということになろうかと思います。
「音楽に対して真摯で、隣人に忠実に仕える音楽師」なんてどうでしょうか。
August Bohse(Talander)については
http://de.wikipedia.org/wiki/August_Bohse
からいろいろリンクしてます。
『家庭教師』はこれでしょう。
Der getreue Hoffmeister adelicher und bürgerlicher Jugend/ oder Auffrichtige Anleitung/ wie so wohl ein junger von Adel als anderer/ der von guter Extraction, soll rechtschaffen aufferzogen werden/ er auch seine Conduite selbst einrichten und führen müsse/ damit er beydes auff Universitäten/ als auf Reisen und Hofe/ sich beliebt machen/ und in allerhand Conversation mit Manns-Personen und Frauenzimmer vor einen klugen und geschickten Menschen passiren möge / Allen denen/ so Tugend und Ehre lieben/ zu verhoffenden Nutzen an das Licht gegeben von Talandern. - Leipzig : in Verlag Joh. Ludw. Gleditsch, 1706
テレマンのハンブルクでの出版活動に関しては以前ブレンターノさんが別のトピックで紹介されていた英国のテレマン器楽曲研究の大家Steven Sohn氏の最新の著書Music for a Mixed Taste の第7章に『忠実な音楽の師』も含めて詳細に書かれています。が、ちと高い&彼の英語は難しくて読みづらいのが難点です(笑)
私見としてはちょうど同時期に
Methodische Sonaten(1728;これもなんて訳すんでしょうね 笑)
Singe- Spiel- und General-Bass-Uebungen(1733-34 『通奏低音の練習−歌いながら、弾きながら』という悲惨な訳があります)
とそんなことを言った上でMeisterの訳に関してですが、大学所蔵のファクシミリ版楽譜を見ましたら、それぞれの回の冒頭には「〜(数字)te Lection des Music-Meisters」という表記がされていました。つまり「Music-Meisterの第〜回目のレッスン(課)」ということですから、ここでのマイスターはやはり「先生」の意味でとるのが正しいのではないでしょうか。もちろんカペルマイスターも含めて当時のいわゆるmeister(親方)が教育者としての側面も持っていたことは頭に入れておかなければなりませんが。ここからも非常に教育的な目的の曲集と言うことが見えてきます。私はgetreueというのは「生徒に対して」あるいは「消費者に対して」かなぁ〜と勝手に思っていました(笑)
それとこの時代のカペルマイスターKapellmeisterは一般的に音楽学では「宮廷楽長」と訳されますから、宮廷のないハンブルクのテレマンにこの語を使うのはあまり正しくないかと思います。(バイロイトの「在外(von Haus aus)楽長」という兼任していた役職を除いては。)この時代のテレマンの役職はおそらく「市の音楽監督兼ヨハネウムのカントル」というのが正式なものではないでしょうか。
最後にとっても細かいことなんですが、原題は Der getreue Music-Meister が正しい綴りです。現代ドイツ語だとMusikですが古い綴りですのでMusicで合っています。