記憶に残る医療関係者コミュの公協規違反？？？？？

Ｂ大学の大学院在籍中のＤｒとの間であったこと。
今で言えば、いや、その当時も公協規違反であったが、やってしまったこと。少し、懺悔の念も含めて。

そのＤｒは筋肉の研究を組織学的にやっていた。ご家庭の事情で、アルバイトをせざるを得なくて、多忙な日々を過ごしていた。
ある日の夜、訪問すると、組織染色の本を読んでいた。学生時代に組織学を叩き込まれた私は、つい話し込む。Ｄｒが、どうもうまく染色できないというので、顕微鏡をのぞきながらＤｒに向かって染色方法を講義するという暴挙に出ていた。
実験室で顕微鏡をのぞく。切片にナイフマークが入っており、マイクロトームの歯が問題であることは明白であった。剃刀の刃でやっておられたのを、マイクロローム専用の刀を研いで切ってみた。昔とった杵柄で、まだ腕は衰えておらず、ナイフマーク無しに切れていた。パラフィン切片の巻き取り、プレパラートへの展開も完璧であった。自分の腕が落ちていないのが嬉しかった。
Ｄｒに拝み倒されて、毎週水曜日の夜は実験室に訪問することになってしまった。公協規違反は重々承知。訪問すると、鍵をかけて他社のＭＲが入って来れないないようにして３時間の実験の手伝い。
Ｄｒはクリオスタットと酵素染色、私はパラフィン抱埋から染色、封入まで。
ついつい熱がこもって、顕微鏡を二人でのぞきながらデスカッション。
２カ月後、写真まで完成。現像、焼き付けまでやってしまった。
論文ができた時、謝辞に名前をのせてくれるというのをヤバイからと断って、別刷りをいただいた。Ｄｒの博士論文であった。

しばらくしてから、教授と助教授から、感謝の言葉をいただいた。いつのまにか、医局ではばれていた。薬の話は一切しなかったのであるが、最近、処方が増えていた。わかってはいたが、そういう商売と思われたくなくて宣伝していなかったが・・・・
教授たちの思いやりに感謝している。

取引誘引にあたる労務提供。
私としては、Ｄｒとの関係は、プライベートであり、趣味の延長として捉えていた。それでも、やはりまずいんだろうな。
幸い、他社に気付かれなかった（と今でも信じているが）ので、誰からも文句は言われなかった。

そういえば、私が生物学専攻であったのを知っていた（教授が高校の大先輩であった）眼科の大学院Ｄｒから、実験動物について相談されたこともあった。哺乳類は、高価で手技をトレーニングし、予備実験とするにはお金がかかりすぎる、何かいいマテリアルはないかとの相談。
タダ、もしくは安く手にはいり、目が大きく感染予防も簡単とういう条件。そこで、ウシガエルを提案。さっそくトライアルしようと、一緒にとりに行く。幸い、近くの川でウシガエルが多数いるところを知っていたから、とりあえず５匹採取して、実験室へ。
業務中、閑な時に周辺を散歩して、何があるか調べ尽くしていたのが幸いした。
Ｄｒは一匹もとれず、すべて私が網ですくいあげた。
瞬膜はあるが、麻酔も簡単（抱水クロラールで一発睡眠、クロロフォルムを使わないのでやりやすかった）、感染予防も抗生剤入りの水槽の併用でクリアできそうだった。
２０匹ほど確保したいとのこと。
他社に見られるとうるさいので、土日に採取し、日曜日の夕方医局へ届ける。
さっそく実験開始。学生時代に使った解剖図や私が作った目の切片の顕微鏡写真も提供。
３日ほど経って、Ｄｒから感謝の言葉。同時に、カエルは今回でおしまいとのこと。夜に、一斉に鳴き出し、他の医局員からクレームがあったため。鳴き声までは考えていなかった。
ただ、予備実験としては十分だったらしく、その後、本実験へ。

お二人ともその後、留学され、その間に担当を変わってしまったために、その後、お会いできていない。筋肉を研究されていたＤｒは、四国の実家へ戻られたと聞く。眼科のＤｒは、申し訳ないが、その後について知らない。
許されないことと知りつつ、元基礎系研究者としての血が騒いでした出来事。ＭＲでなければ、もっと手伝えたのにという思いもある。
もう１５年以上も前の話。時効としてもらおう。