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妄想失恋小説コミュの妄想失恋小説 第2部

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それじゃあ妄想失恋小説を...

心傷ついてるそこのオマイ、読め!!
ついでに空気嫁!!

あくまでフィクションですから・・・ツッコミ不要!!
この話のリアル度・・・28%
俺の心が受けた傷・・・プライスレス



『第1話 ラブストーリーは突然に・・・』

あれは4年前のこと、俺はとある通信会社に勤務していた。彼女は1年遅れて入社。19歳の短大生。ホントに年齢以上に落ち着きのない子で、最初は正直うっとうしかった。

そんな彼女とある社員の冗談がきっかけで付き合うことになった。まぁ付き合ってからはなぜか俺もかなり熱を上げてしまって、1年のうち会わないのは2・3日とかそれくらいのラブラブバカップルぶり。

付き合って1年半が経過した頃、彼女は就活を初めた。俺が半ば記念受験で薦めたS●NYは応募したその内の一社。彼女も『短大生の私が受かるハズがない』って諦めてたけど、なんと合格(何てたって俺が面接でのコツなんかを教えてあげたからねw)

二人でささやかな合格祝いなんぞしたりして、俺も自分のことのように大喜び。しかし笑っていられたのもそこまで。事件は彼女が新人研修へと静岡へ3泊で出かけた時に起きた。



『第2話 意味わかんないんだけど・・・』

研修最終日の夜に彼女からいつものように電話があった。ここまではホントにいつもと何一つ変わらなかった。電話の向こう側の彼女、しかし何だか様子がおかしい... 電話だけど、二人の間に流れる異質な空気。

俺はその異質な空気を払拭したいと考えた。でも聞くのが怖い。そんな俺の様子を悟った彼女。心配になって『どうしたの?』を繰り返す俺。何も答えない彼女。でも彼女は最後にとうとうこんなセリフを・・・

『 私、ヨッペイタンとはいつか結婚するものとばかり思っていたの。でもね...でもね、私、好きな人が出来たの... 自分でもこんな気持ちになるなんて信じられない。だって今まであなた以外の男の人にこれっぽっちも魅力を感じたことなんてなかったから... でもね、いたの… あなた以上に魅力を感じてしまう人に出会ってしまったの...』

俺は電話を受けながら『ごめん、意味わかんないんだけど...』 ホントは彼女の説明で十二分に、痛いくらい分かりすぎていたけど、何故だか俺の脳みそが現実を受け入れようとしなかった。

何なんだろうね、この感覚。電話を受けた時はちょうど友達と飲んでたんだけど、友達が俺のあまりの異変に気付き、『 おい、ヨッペイちゃん、どうしたんだよ?? 』 なんて声をかけてくれてたが、俺の耳には届いてなかった。

放心状態の俺に彼女から追い討ちとも言える言葉が...
『ねぇ、明日あなたに会ってきちんと説明したいの。面と向かって。でもね、私の気持ちは変わらないから・・・』

昔から強情な彼女のことだから、会って説得を試みたところで、ここまで決心が固いとくればもう何を言っても無駄だろう。俺は打ちひしがれつつ、最後に彼女へ贈るべくにふさわしい言葉を探し始めていた(気がハヤスww



『第3話 真実』

翌日研修より戻った彼女を家まで迎えに行き、彼女の家の近くの公園で話をする。『ごめんね、ホントにごめんね』とただ繰り返す彼女。本気じゃないのに柄にもなく『 いいから幸せになってよ』 なんて言う俺。でも気になるじゃない、その相手が。だからもちろん聞きましたよ。『どんな奴なの??』って。

そしたら彼女... 『今ね、その人は別の女の人と同棲してるの。でも私と付き合えるなら別れてくれるって』って。俺、キレましたよ、軽く。『何だ、そのふざけた奴はぁ?? そんな奴に任せらんねぇ』って。でも彼女『いいの、私が好きだから』と。そんな切り返しをサラリとされたら俺としてはもはや返す言葉もねぇww

で、俺オメオメと帰ってきました。泣いたよ。ご飯も1週間はまともに食えなかった。酒で一日に必要なエネルギーをどうにか補っていた感じ。おかげさまでジャスコは20周年を迎え(ry じゃなくて一ヶ月で8kgも体重落ちましたよ。サンキュー!!

とまぁ2年程前の話だゎ。受け入れがたい真実ってこういうことを言うんだぜ、オマイら!!

第4話へ続く...



『第4話 ショートメール』

彼女と別れて半年ほど経ったある日のことだった。俺は馴染みのモツ屋で友人と酒を酌み交わしていた。関係ねぇけど当時黒糖焼酎にハマっていて、そりゃ煽るように飲んでたわけだよ。そんな折、突然ショートメールが...

『なんでメールじゃなくてショートメールだよ。しかも誰だよ?? で、ナニナニ??』

メールには『会いたい』って。一言だけ。俺はてっきり誰かのタチの悪い悪戯と思い無視。友達に話すと、『元カノじゃね』なんて笑って茶化す。『んなワケねぇーだろ。アイツは幸せに彼とよろしくやっちゃってんだから』なんて死語で切り返す余裕を見せる。

でも直後再びショートメールの着信がある。『今ね、駅まで来ちゃった… 勝手に…ごめんなさい』 このメールで彼女だと直感した。で、友達に今来たメールのことを話して『ワリィ、俺・・・』と言いながら居ても立ってもいられずに、気が付けば俺はすでに席を立っていた。

ニタニタ笑いながら友達が『いいって、それより早く行けよ。彼女待ってんだろ。その代わりここの御代はヨッペイちゃんのツケに(ry 』 最後の一節には全く答えることなく、『マジゴメン』と言って車を走らせた。(飲酒はダメだぉ)




『第5話 そして再会』

俺の地元の駅はこじんまりした侘しいところ。明かりもまばらで、終電前とは言え人通りが少ない。そんな静かな駅の改札で彼女は待ってた。モダンな社会人スーツにユルパーマ、見事なまでに洗練された大人の女になっていた。

彼女は照れ隠しのように俺の真新しい車を見て、『あれっ、車変えたの』と第一声。リアルな話彼女との結婚資金にためておいた金で買ったわけで...ww  でもそんなことも二人で笑い飛ばした。なぜか互いに再会するまでの緊張感は今はなく、つい昨日も会ってたんじゃねぇのというくらい自然体な二人だった。二人でいることが不思議なくらい自然な二人だった。

再会してから二人はベイブリッジの見える赤レンガ倉庫へと向かった。俺のお決まりのドライブコースだ。彼女と別れてからと言うもの、俺はことある毎にこのお気に入りの場所へと一人、車を走らせた。浸りたい、そんな時は決まってここだった。

赤レンガに到着して、そこで二人は会話を交わすわけでもなく、ただ海を見つめていた。さっきまでの道中のはしゃぎようが嘘のように静まり返ってしまった。そうすべき雰囲気だった。

互いに何かを言いかけては言葉を飲み込んだ。そこにある現実は口に出したら壊れてしまいそうなもろいものに感じられた。ただ波の音と闇の静寂が二人を、そこに流れる時間をやさしく包んでいた。



『第6話 あの頃のように・・・』

どれくらいの時間が経ったろう・・・ 東の空が少し白み始めた。少し惜しい気もしたがキリがないので『帰ろっか』と俺から口にした。帰りの車中、彼女は疲れ果てたのか、いつの間にか小さな寝息をたてて深い眠りに落ちた。

俺は着ていたスウェットを寝ている彼女を起こさないよう注意しながらそっとかけて、オーディオから流れてくるUTADAの『Time will tell』を口ずさみながらハンドルを握った。

付き合っていた時は彼女が毎日俺の家に遊びに来るので帰りは義務のように彼女を家に送り届けた。その頃は当たり前だった事が、別れて半年経った今、助手席に彼女が寝ていることが何だか不思議な感覚だった。

そんな不思議な感覚に襲われてふと気が付くと彼女の寝顔を微笑ましく見ている自分に気が付いた。そして当時のことが突然フラッシュバックして様々な思い出が蘇った。それは心地よく懐かしい、まるで深い海の底にいる感覚だった。

まるで... あの頃のように・・・



『第7話 ドライブのお礼のメール』

その日は結局何もなかったんだ。当たり前だけど。で、次の日に彼女からお礼のメールが来た(今度はさすがにショートメールじゃなくて普通のメール) 

『昨日は突然ゴメンね。何だか急に会いたくなっちゃって...仕事が大変でちょっと参ってたんだ。ホントにゴメンね。でもヨッペイちゃんに会うの久々だから緊張するかな??って思ったけど、ヨッペイちゃんといると自然体の自分でいられたから...良かったぁ。ありがと。今度ゴハンでも食べに連れてってね』

ちょっと期待した自分に(鬱) tu-kaバカ。俺のカス!! 世の中そんなオイシイ話はない!! 俺も無難に『楽しかったね。また飯喰いにでも行こうね♡』って返信。

でも翌日に思いがけず彼女からメールがあり話は急転する。




『第8話 遊びに行ってもいいですか??』

翌日木曜日の昼、彼女から一通のメールが届いた。早くも俺は彼女からのメールは着信音を変えていたのですぐに気付いた。俺、お昇りさんにも程があるww

『もしお邪魔でなければ今日仕事が終わったら遊びに行ってもいいですか??』

当然即レスの俺。『いいよ。時間は何時くらい??』なんてまるで餌をあげてない釣堀の鯉だ、情けね... すると彼女から『返信早ッ(笑) じゃ仕事終わって会社出る時にまたメールするね』と返信が返ってくる。

出来るだけ平静を装って返信したつもりだが、情けないくらいの俺の浮かれ具合は当然彼女に見透かされていた。ホント俺ってカワイイもんだよ。たった一通のメールでこんなに舞い上がっちゃうんだからww ほとほと自分の単純さに呆れてものが言えない。

その日は仕事も手に付かず、上の空で18時の定時を迎えるとすぐさまわき目も振らず帰宅。何故か過度の期待を胸に部屋の掃除を始める。いつもはクイックルワイパーで簡単に済ます床掃除もこの時ばかりは雑巾掛けで丹念に行う。

そして19時過ぎにようやく彼女からメールが届く。
『20時5分新百合発の電車に乗るよ』
と言うことは計算するとウチの地元の駅に20時10分に着くのか...中途半端に余ってしまった1時間。何も手につかず、パニくってしまった俺は普段やらないゲーム機の電源を入れる。

コントローラーを持つ手が振るえ、ゲームどころではない。 次に会社の書類の整理を始めるが何とも落ち着かない。そんなこんなをしているうちにいつの間にか時計の針はは20時を回りかけていた。



『第9話 じゃ、どこに行く??』

お迎えは何も言わずともいつもの場所、地元駅の南口改札だ。俺は時間前だというのに何故か慌てて家を飛び出す。つくづくカ思うがワイイな、俺ってww

少し早めに駅に到着したはずなのに、彼女は既に改札口に立っていた。付き合っていた頃に、俺が迎えの時間に遅れて駅に着くと、彼女は決まって顔をしかめて『コラッ!! ヨッペイちゃん!!』って怒るんだ。そんな過去の記憶が不意に蘇った。

だから俺は恐縮していたわけだが、そんな縮こまる俺を尻目に彼女は笑顔で『一本早い電車に乗れたの。だから早く着いちゃったんだぁ〜』って。それならそうと言ってくださいよ。どーせ何も手付かずだったからお迎えにあがりましたのにぃ〜

で、彼女を車に乗せていざ出発!!と思ったんだけど...ホントにウチに行っちゃっていいのかな?? 念のため彼女に『じゃ、どこに行く??』とワザとらしくも確認する。すると『えっ、ヨッペイちゃんのウチに行くんでしょ?? 私、お腹減ったからヨッペイちゃんお手製のカキ玉うどんが食べたいなッ♪』

ウチに来るそうです。いや来たコレww 来ましたYOッ!! ホントに来ましたYOッ!! 何となく分かっちゃいましたけど、来ましたYOッ!! もう何があっても保証しませんYOッ!!ww

というわけで途中でコンビニによってうどんを2玉と卵を購入する。



『第10話 DHC お泊りセット』

彼女ホントにウチに来ちゃった。『どうしよう…』 マゴマゴと慌てる俺とは対照的に落ち着き払った彼女は『短パンとTシャツ貸してねッ』と言って、俺のクローゼットから短パンとTシャツを取り出した。

そして彼女は『覗いちゃダメだよ』と言って俺の部屋のドアを閉めると着替えを始めた。何て言いましょうか...その...興奮しますwwww ひとつドアの向こうで彼女が着替えているワケですから...

で、不意にテーブルに目をやった時に彼女のコンビニでの買い物袋の中から『DHC お泊りセット(メイク落とし)』がチラリと見えた。

ということは・・・ えっ、つまり・・・ 彼女はお泊りする気だぁ〜ということでよろしいでしょうか?? あぁもう俺緊張してダメダメ。コレはもう興奮せずにはいられない。 
 
一人バカみたいにウカレ有頂天なところに『お待たせッ!!』と赤のadidasの短パンに紺のTシャツで彼女登場。もうダメ、オマエ似合い過ぎ。マジカワイイから... これで興奮しないヤツはバカ。てか浮かれ過ぎな俺もバカ。

そんな俺を他所に彼女は淡々と『顔洗ってくるね』と買い物袋からメイク落としを取り出すと洗面所へと向かった。




『第11話 今日、泊まるの??』

堂々とする彼女とは対照的に、自分の家でオドオドする俺。情けねぇ〜 マジ情けねぇ〜 男として、というより人間として情けねぇ...

そんな俺の心の動揺を察することもなく、彼女は馴れた手つきで給湯器の電源をonにすると、化粧を落とし始めた。

俺は『そこにタオルが...』と言いかけたが、彼女『うん、知ってるよ』って... そうだよね、知ってるよね。何てったって洗面所の横にタオルが山積みされているから誰でも分かるよね。見りゃ分かるよね。俺、マジあり得ないくらいに興奮し過ぎww

で、居ても立ってもいられずに、洗顔中の彼女にとうとう聞いてしまった。『今日、泊まるの??』って。そしたらアッサリ『うん、泊まるよ。だって明日休みでしょ?? 私も明日会社休むから...ダメ??』って答えが返ってくる。『いやダメじゃないけど...会社休んでいいの??』なんて聞き返す。

あぁ俺何言ってんだよッ。当然心の中では『会社なんて休んでいいに決まってるだろ』って思っていたが、予期せぬ言葉が口をついて出てしまった。もし彼女が『そうだよね。会社休んじゃマズイよね』なんて言い出したらどうすんだよぉ、バカッ!!

でもそんな心配は無用。彼女の心はもう決まっていたようでした...




『第12話 寝よっか??』

彼女は俺の問いに笑顔で『大丈夫だよッ、じゃあ泊めさせてもらいますね』って改めて深々と頭を下げる。そして顔を上げるといつものようにペロッと舌を出し、片目で薄っすらとウインク。

ちょwwオマエ、スッピンでもマジカワイイじゃねーかッ!! 俺の興奮は絶頂を通り越してしまいました。空しいくらい、あり得ないくらい興奮してしまいました。

一人心の中でガッツポーズをしながら空(クウ)を見つめ立ち尽くす俺をあざ笑うかの如く、目にも止まらぬ早業でベッドに潜り込む彼女。そして俺をチョイチョイって手招きしながら、『そろそろ寝よっか??』と...

俺は『チョイ待て、オマイはうどんを食べに来たんじゃないのか??』と心の中で要らぬツッコミをしつつ、当たり前のようにベッドへと誘(イザナ)われる。

俺は誘われるがまま、彼女の待つ布団へと潜り込んだ...




『第13話 お話聞かせて!!』

俺が布団に潜るなり、彼女が『何かお話聞かせて』って。こういう時ってどんな話が適当なんでしょう?? 俺は脳内恋愛手引書をフルに捲り始めた。

が、何も思いつかなかった俺は何故か持っている数少ない漫画本の中から4コマ漫画を取り出し、その音読を始めた。ムードゼロッ!!ww 

それでもとなりであどけない表情をして『そんで、そんで』って、寝る前にママに絵本を読んでもらっている子供のような無邪気な彼女を優しく諭すように読み聞か始めた。

途中で彼女が『今度は私が読んであげるねッ』なんて言って、俺に読み聞かせてくれた。でも直ぐに飽きたのか5分もしない内に、『やっぱりヨッペイちゃんが読んでよぉ〜』って。

俺は両肘を付いて本を構え直した。彼女は俺の右腕にピッタリ寄り添うようにして本を覗き込んでいた。彼女の髪の甘い香りが、俺の理性を壊し始めた。それでも心の中で葛藤しながら汗ばむ左手で必死にページを送った。

20分くらい経った時、彼女が突然『良く見えな〜い』と言って、俺の右脇の下から頭を潜り込ませてきた。俺は右手のやり場に困って、彼女の右脇から手を回した。その回した右手からかすかに彼女の心臓の鼓動が伝わってきた。

平静を装っていた彼女も実は緊張していたのだ。それがハッキリと俺には分かった。それはそうだろう。彼女はカノジョじゃないし、俺はカレシじゃない。そんな二人が一つベッドの中で互いに自分の気持ちを抑えながら、互いの気持ちを探り合っていたんだから...




『第14話 夢か現実か』

それからどれくらいの時間二人はそうしていたのだろう... 張り詰めた空気を払うかのように、俺はとうとう我慢できなくなって彼女の方へ顔を向けた。

そしてそれまで漫画本を国語の教科書でも読むかの如く生真面目に音読していたマヌケな俺はある重要なことにようやく気が付いた。

『スーピー スーピー Zzzz...』
彼女… 寝てる… フツーに寝てやがるwwwww

『オイオイ、これからだろッ!!』 完全に肩透かしを喰らった俺。まさかこの展開で寝るなんて... ありえねぇww やはり彼女の方が一枚も二枚も上手だった。

でも今こうしてまた彼女の寝顔を見つめるという現実が何とも嬉しかった。まるで夢のようだった。むしろそれが覚めない夢ならば夢でもいいとさえ思った。

結局俺は彼女の気持ちを言葉で確かめることが出来なかった。なんともマヌケな話だが、俺はそれで十分だと思った。だから俺は寝ている彼女の瞼にやさしく”おやすみのkiss”をして、彼女を起こさぬようそっと部屋を後にした。

それから俺は隣の部屋のソファーに横たわると、まるで夢のような現実の世界にしばし陶酔しながら深い眠りに付いた...




『第15話 無言の意思』

...明け方、俺は右腕に微かな重みを感じて目を覚ました。直ぐにその重みの正体を察した。彼女が俺の腕に顔を埋めるようにして寝息を立てていたのだ。

突然の出来事に俺は一瞬たじろいだが、直ぐに自分が置かれた状況を理解すると同時に彼女の無言の意思を確認した。

この時点で俺の理性は塵のように吹き飛び、この状況が失った理性を再び制するだけの時間を俺に与えてはくれなかった。自分で自分の感情をコントロール出来なくなっていた。もはやその自然の流れに運命を任せるしかなかった。

だからもう誰も俺を止めることなんて出来なかった。同様に彼女もまたその必然の運命を受け入れた。そうして15cmとなかった互いの顔の距離を縮めると、俺は一息に彼女の唇へと向かった。

彼女の柔らく淫らな吐息がより興奮を加速させた。彼女は一瞬薄っすらと眼を開いたが、俺の顔を見ると身を委ねるように再び眼を閉じた。そして俺はそのままの勢いで首筋へと舌を這わせた。



『第16話 空白の時間』

彼女は『ちょっと待って』と言うと、俺の舌を彼女の首筋から引き離した。『ベッドに行こ...』 そう言って立ち上がった。俺は彼女を後ろからきつくない程度の力で抱きしめたまま隣の寝室へと向かった。

俺は彼女の背中越しに『好きだよ...』って独り言のように呟いた。彼女はそれには応えずに一つ小さく頷いた。そうしてベッドに着くと先ほどの続きとばかりに俺は首筋への愛撫を再び始めた...

しかし彼女は俺の頬を両手で包み込むと自分の顔を寄せて、『チューして...』と指でほんのりと色づいた薄紅色の唇を指して小さな声でそう言った。俺は彼女の求め通りに唇をやさしく噛んだ。

俺にとって彼女を待ってる間の半年という時間は永遠に感じるほど永過ぎたが、驚くほどすんなりと彼女の体は俺の体を受け入れた。彼女も同じようにこの時を待っていたのだろう。そう思った。

それから二人は互いを激しく求め合った。空白の時間を埋めるように...




『第17話 最後のワガママ』

二人はことが済んだ後もそのままベッドで抱き合っていた。 言葉を交わすことなく互いの瞳を見つめたまま、いくばくかの時間が静かに過ぎた。

でも俺には一つ重要な任務が残っていた。それは『カレシはどうしたのか??』を彼女に確認することだ。彼女が一時の過ちでここにいるのならば、それはあってはいけないことだからね。

でもそんな余計なこと言って、彼女がいなくなったらどうしよう?? でも、聞かなきゃね。そして彼女のホントの気持ちを聞かなきゃいけないね...

俺は意を決し、沈黙を破るように『あのさっ』と切り出したんだ。彼女も俺が何を聞こうとしていたのか分かっていたんだね。で、俺の言葉を遮るように話を始めた。

『わたしねっ、アナタと別れて違う人と付き合ってみて初めて分かったの。社会人のアナタが学生の私のワガママに文句も言わず付き合ってくれてたんだって。仕事で疲れているのに、私を毎日必ず駅まで迎えに来て家まで送ってくれたよね。私ってホントワガママだよね... でも最後に一つだけ私のワガママ聞いてくれる??』

俺は次に来る言葉をあれこれ想像しつつ、固唾をのんだ...




『第18話 戻ってもいい・・・かな??』

彼女は話を続けた。
『アナタと別れてから日に日にアナタの存在が大きくなっていったの。それでも彼に悪いなと思って自分の気持ちを必死に打ち消した。でも出来なかった...』

俺は正直 『で、何だよ。彼に悪いって思って、それからどうしたんだよ』 って聞きたかったけど、焦る気持ちを抑えながら彼女の言葉を待った。

『んでね。どうしても気持ちが抑えられなくなって・・・ それでメールをしたの。もう自分の気持ちに整理がつかなくて、会ってみたら何か分かるかなって...』

『それで何が分かったの??』
俺は耐え切れず、とうとう焦りを口に出してしまった。

彼女はコクリと頷くと、話を続けた。『うん、分かったことは...やっぱり私にはアナタが必要だってこと。彼とはね、昨日別れてきたの。私のワガママでアナタも彼も振り回してしまって… 私って最低な人間だよね。だからもう誰も傷つけたくない。アナタとずっと一緒にいたい。これが私の最後のワガママ...』

『私、アナタのところに戻ってもいい・・・かな??』



『第19話 誠実な彼女と嘘つきな俺』

俺は何度か黙って頷いて、彼女をギュッと抱きしめた。彼女は『ヨッペイちゃん、痛いよ...』と言いながらも、俺の抱擁にさらに強い抱擁で応えた。

彼女の”最後のワガママ”を当然俺は聞き入れた。俺にとってはそれは”ワガママ”ではなかった。自分の気持ちに嘘がつけない彼女の正直な気持ちだったからだ。

ホントは別れた後も彼女のことが好きで好きで、1週間もまともにご飯が食べれなくって、仕事が手につかなくって、笑うことが出来なくって... 別れてからの半年間、俺は何度友達に飲みに連れてってもらっただろう... 何度慰めてもらっただろう... それでも癒されることなかった俺の心は、彼女のたった一言に救われた。

逆に感謝したいのは俺の方だった。付き合っている間、俺は彼女に気持ちにきちんと応えられてこれただろうか... 自分の気持ちに正直でいれなかった俺に、彼女の前に立つ資格があるのだろうか...

だから今、誠実な彼女だからこそ、俺もまた誠実でいたいと思った。そうあるべきだと思った。




『第20話 好きだった』

そしてまた二人は元の二人に戻った...

彼女と再び付き合うことになって、俺はこれまで以上に彼女と過ごす時間を大事にした。

あの時とは違い彼女も社会人となり、お互いに忙しい身となったが、それでも毎日会うことだけは変わらなかった。

唯一変わったことは彼女が社会人になってデートの費用を出すようになったことwwと、その美しさにさらに磨きが掛かったことだ。

彼女のスペックに触れておくと、学生時代にミス・ソフィアの最終選考まで残った(結局辞退したけど)才色兼備な女性だ。知的で行動力があって、絵に描いたような完璧な女性なのだ。

そんな彼女とデートも色々なところに行った。国立に鹿島アントラーズ×FCバルセロナも観に行ったし、横浜ベイサイドマリーナにも買い物に行ったのも良い思い出だ... 湘南平から一望した夜景も綺麗だったね... 

彼女が行きたいと望む場所には必ず週末に連れて行ってあげた。そして二人でよく笑ったね。楽しかったね。無邪気な子供みたいにあどけない表情で笑う彼女の横顔がとっても好きだった。

そう好き『だった』...




『第21話 小さな約束』

彼女とそうして再び付き合ってから2ヶ月が経ったころだった。

平日はウチに泊まることがない彼女が珍しく泊まっていった。翌朝は俺は仕事が休みだったので彼女を新百合ヶ丘の駅まで送っていった。

彼女を駅まで送る道中、『今日は会社が終わってから、会社の友達と飲みに行くからちょっと遅くなるよ。先に寝て待っててね』と彼女は言った。

俺は『どーせ起きてるから寝ないで待ってるよ。到着の予定時刻だけ教えてくれれば駅に迎えに行くからさ』と答えた。

彼女は『じゃあお言葉に甘えます。たぶん1時前には帰ってくるから。心配しないでね』と俺に告げたところで、車はちょうど駅のターミナルに到着した。


そして彼女は車を降りる間際に俺の方に振り返ってこう続けた。


  『ねぇ、3年経ったら結婚しよ。約束して』

  『なっ、何だよ急に... 熱でもあんのか』

  『茶化さないで、私、真剣なんだから!! ねぇお願い、約束して』

  『はいはい、じゃ3年後ね。でもそしたら俺31歳だぜ。
  その頃にはオッサンになった俺は捨てられるかもな』

  『バカッ!!』

といってコブシを振り上げるフリをしたが、すぐにその手を下ろすと『誓いのkiss...』と言って自分の唇を指さした。

俺は『ちょwwみんな見てるぜ。こんなところでかよ』とテレながらも、軽く唇をあわせるだけのkissをした。

小さな駅のターミナルで交わした、二人の小さな約束。未来なんて誰にも分からないけど、二人は確かであろう未来を約束した。




『第22話 胸騒ぎ』

気が付くと後ろに数台の車が並んでいた。

『ほら、込み合ってきたから早く行きなよ』と惜しみながらも彼女の降車をためらう彼女の背中を押した。

『うん、行ってきます』 彼女はそう元気に答えると小走りで駅へと向かった。途中2、3度後ろを振り返る彼女をバックミラーで確認しながら俺は駅を後にした。 

その日の夜、彼女からの電話を待ち続け4時位まで起きていたのだが、いつの間にかリビングのソファー転寝をしてしまったらしい。6時過ぎに彼女の母親からの電話があった。

  『もしもし...』

  『山口さん??』

  『あっ、はい。おはようございます』

  『ウチの子が...ウチの子が...』 声にならない声だった。

  『あっ、すみません。電話が遠いようなんですが... もしもし??』

  すると電話の主は突然野太い声に変わった。

  『いいから直ぐきなさい。聖マリアンナだ』

彼女の父親とは一度も対面どころか話したこともなかったが、彼女から聞いていたイメージにピッタリと合致する迫力ある声で、声の主が誰であるかを直ぐに察した。

  『はい。では今から30分くらいかかりますが…』

と言い掛けたところで電話は相手方によって切断されてしまった。

『何だよ。自分からかけて… それにしても何があったんだ??』 何か嫌な胸騒ぎがした。




『第23話 彼女の父親』

車を飛ばして行ったので、20分ほどで病院に着いた。彼女の両親は病院の急患搬送側のロビーで待っていた。彼女の母親には何度か会っていたので、母親の方が先に俺に気が付き声を掛けてきた。

『彼女に何があったんですか??』 俺は逸る気持ちを抑えきれず、失礼を承知で挨拶も抜きにいきなり切り出した。

彼女の父親は何も言わずに歩き出した。彼女の父親は福祉関連器具を製造するメーカーのお偉方だ。福祉現場で働く俺とはいわば遠い同業者だった。

彼女の父親はそんな俺を、彼女と『年が離れすぎてる』って毛嫌いしていたらしいが、彼女はいつも『でも大丈夫。二人はホントソックリだから』って笑って話していた。

その噂の父親の後を、その威厳のある小さな背中を追って、今俺は歩いている。何とも不思議な気分だった。



『第24話 ごめんね...』

1年後・・・

昨年の8月、俺は会社から2日間の有休をもらい、彼女の父親の実家がある名古屋の龍泉寺という寺を訪ねた。そこに彼女は永眠していた。

俺はお通夜も告別式も欠席した。四十九日の法会も、彼女の母親から電話に対して俺はどちらとも付かない返事をしたが、結局欠席した。

そうして1年経ってようやく彼女の死を受け入れた。いや正確には受け入れたのではなく、そうやって自分を無理やりに納得させた。

この1年、辛かったのは俺だけじゃなかった。彼女の両親の心情はきっと尋常でなかったことだろう。それ以上にまだ彼女にはこの世に未練が残っているだろう。1年間もの間、俺は痛みから逃げ回ってようやくそれが分かった。

彼女や彼女の両親に対する申し訳なさと、自責の念に駆られながら、1年経って一人ここまでやってきた。やっと彼女・現実に向き合う決心がついたんだ...

墓前に到着すると、この夏の暑さでカラカラに乾ききった菊の花を供花台の脇に置き、代わりに彼女が大好きだった真っ白なカスミソウの花束を添えた。

そして俺は静かに手を合わせた。
『会いに来るのが遅くなって、ごめんね...』

夕方近くになるというのに、異様なほど暑い夏の日だった。冬生まれの俺は夏が苦手だったが、彼女が夏が大好きだった。

 『夏って大好き。夏の匂いも大好き』
 『何だよ、夏の匂いって』
 『えっ、ヨッペイちゃん分からないの??鈍感ww』
 『いや、そんな匂いなんてねぇーし』

いつしかの彼女とのやり取りをふと思い出した。俺は額に流れる汗を手で拭いながら、しばし夏の暑さを満喫した。




そうして俺は彼女との小さな約束を思い出し、彼女の前で声をあげて一人で泣いた...


     〜 第2部 完 〜




妄想恋愛小説 第2部を読んでくださった皆様、ホントにありがとうございました。

思えば第1部にあたる1月29日の日記、『初恋の...再会(ry ダメホ』に始まったワケですが、自分の失恋の痛手を日記で吐露するという新しいスタイルが皆さんの共感(?)を呼び、第2部を始めるきっかけとなったわけです。

第2部もおかげさまで皆様からの思いのほか反響も大きく、自分自身新たな収穫を得ながら新境地を開拓する事が出来、最後まで楽しく執筆作業をすることが出来ました。

議論を呼んだ話の”リアルさ”に関してですが、実体験を元にしたあくまで私の妄想です。そもそも妄想癖がある私ならではの小説だと思います。私は”思い出”は全て美しい記憶に再編集し直すんですww

なお第3部以降につきましては恋愛感に乏しい私ですが、頑張って妄想しますので変わらぬご声援をよろしくお願い申し上げます。

m(_ _)m
2006年2月12日




元になった日記
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
妄想失恋小説 第2部
01月30日 15:53
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=81156444&owner_id=1407630

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