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意味不明小説(ショートショート)コミュのかなしみの縁

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かなしみの縁を歩く。静かに、澄んだかなしみは、深くて底が知れぬ。
わたしは彼の神のかなしみがより深くならぬよう、わたしの心を魚の形にして、かなしみの中へ放つ。
わたしの心は、紅に、浅黄に、紺青に、鱗煌めかせ泳ぎゆく。かなしみは、深く、広く、わたしがいくら魚を放っても、賑わしにはならず、縁を歩きゆくときに探しても、其の姿は見えず――・・・・・・



此処は、かなしみの湖だ、と誰かが云った。其の姿は見えず、けども確かに居る者であった。
山神の、かなしみの湖だ、とまた違う者の声がする。どちらも姿は見えず、其の者たちからしたら、わたしの姿も見えぬのかもしれず、けども問うてみたことはない。
其処に山があるだろう、とまた別の者声がする。彼の山だ。
――其の者の気配も去り、湖の縁にわたしひとりきりになったことが判った。
見上げれば、木々の青濃い深山が、雲に届かんばかりに聳えている――此処は、いつも曇っている。



わたしは、気付いたときには此処にいた。己が何者かも知らず、其の、厚さも判らぬ白き雲の下で、ただ歩いている。
わたしが放つ魚のように、わたしは山神に放たれた者なのかもしれない、と思う。



彼の山だ、と云った者の声がわたしの中で幾度も木霊して、消えぬ。
わたしは深山に向かい、中を歩く。
木々は大きく高く、いつも見ていた雲をも隠す。深く、誰の声もせぬ。
山神の気配も、わたしには感じられぬ。此の山凡てが山神なのだ、と判ってはいても、其処此処に感じることは出来ぬ。



深く、深い処まで来て、清水の湧く処まで来た。此処がかなしみの湧く処だ。
深く、深い処まで来て、もうわたしは歩けぬ。足が削れ、形をなくしていた。
清水に触れると、其れはひどく冷たく、かなしみがしみた。
山神がさみしくないよう、わたしは己の身体を数羽の鳥にかえて、飛びたった。賑わしにはならぬ、と判っていた。

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