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意味不明小説(ショートショート)コミュの雲

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 限りなく白に近い灰色をした雲だった。
 水にインクを一滴垂らすと、ぽたりという音もろとも、インクは不思議な渦を幾巻も描いて散っていく。拡散という現象だ。ゆらりふらりと水と混ざっていく不可逆変化の中で、インクは薄まり、それでも存在感を強めていく。眺めていると、不安になる。何故だろう。
 雲は、インクの拡散に似ている。線香の煙のイメージがあるからだろうか。
 そんな雲が、わたしの心に入ってくるようになった。
 わたしの周りに垂れ込めた雲は、それこそ音もなくわたしの心の中へ入り込み、憂鬱にする。
 不安だ。そう思う。
 夕暮れの空には三羽の鴉が飛び、明日の天気を占っている。
 明日は晴れるだろうか。それとも――
 わたしの心は、明日もきっと曇りだ。
 灰色の雲が周囲を舞う。息もできないようだ。周りも見えない。
 嫌だ。
 ――否、嫌ではないのだ。ただ、不安なだけ。
 明日のことなど、分からない。楽観主義者と悲観主義者では、コップに半分の量の水が入っているのを見て、「まだ半分残っている」と考えるか「もう半分しか残っていない」と考えるかのどちらかだそうだ。
 明日のことなど、分からない。分からないのだから、良い未来が待っているかも知れない、と考えるだろうか。それとも、分からないから、不安なのか……。
 大切なのは――
 そう。
 大切なのは、この世には分かることと、分からないことのふたつがあるということ。
 そして、分かることが一生分からないままになってしまう人と、分からないことに一生悩み続ける人がいるということなのだ。
 わたしにはそれが分かる。けれど、それが何だと言うのか。
 雲が、心に入ってくる。心が翳る。気持ちが塞ぐ。もやもやした雲が、わたしの周りで蠢くのだ。
 分からない。分からない。分からないことだらけだ。
 それでも、分かることと分からないことがある。
 分かることはひとつ。今日が終われば、今日がまたやってくるということ。明日は明日のまま。ふわふわと、まるで雲みたいに、永遠に明日のままで彷徨っている。


 

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