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意味不明小説(ショートショート)コミュのたぶん、幻

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何もかもうまくいかない。



そんなことが多すぎてもう慣れっこになってしまったから、たまにラッキーなことが続くと不安になってくるんだ。
一昨日、コンビニのくじ引きで4等が当たった。
昨日一度も信号が赤じゃなかった。
そして今日君に出会ったんだ。


おかしいな、このまま行くと明日死ぬな。


3か月前から始めたアルバイトで自分ではわからないのだけれど自分は仕事ができないらしいから今日も社員さんに怒られるんだ。でもなんで怒ってるのかわからなくて、でもそんなこと言ったら余計に怒られるのわかってるから。

「すみません」
「すみません」
「すみません」

こんなに「すみません」使ってたら「すみません」の価値が無くなっていくよ。
でも、まあ今までの経験から言って14、5回「すみません」って言ってると
解放してくれるから「すみません」って便利だよな
ダメ人間の味方だ。

そんでラッキーなことが続いてたから
ちょっと「すみません」のトーンもいつもより上がってたと思う。
もう「すみません」の話はいいよな、本当にすみません。




ぼうっとしてた。
「今日から新しいメンバーが加入します」
新しいメンバーってアイドルグループかよって最初は心の中でツッコんでたんだ。
だってスーパーのレジ打ちバイトが増えるだけじゃないか。
でも一瞬で目を奪われてしまった。

クリクリの大きな瞳にショートカット黒髪、小柄、笑顔がキュート、キュート、キュート!!!
ド理想のタイプがそこには立っていた。

「じゃあ教育係は」
この時ほど自分の仕事の出来なさを恨んだことはない。
教育係はイケメンリア充がかっさらっていった。

ねえ、どうしてこんなに世の中は不公平に出来ているんだ。

あ、これでいいんだ。
自分は今ラッキー過ぎるからプラマイゼロだよね。
よし、明日死ななくて済む。




「あの、こういう時ってレジどう操作するんでしたっけ」
「へ?」
思わず声が裏返ってしまった。
ド理想が自分に話しかけている。
なんで?
どうして?
イケメン教育係がいるのに。

「教育係の方、ちょっとこわくて。迷惑じゃなければ教えていただけませんか」
ああ、教えるとも、教えるとも、手取り足取り教えるとも!
と思いながら

「うん、いいよ」
と、そっけない態度をとるあたり、自分ってなんて情けない人間。。。

そのレジ操作は仕事できない自分でもかろうじてできる操作!
良かった、もう一段階難易度の高い操作だったら怪しかったよ。

「ここはこうして、そうして、ああやって」
「すごいですね、ありがとうございます、やっぱり慣れてますね」
満面の笑み、天使、天使、天使!!




いや、死ぬな。
明日死ぬな、絶対。
だからとりあえず狭いワンルームに隠してある如何わしいDVD、如何わしい書籍、パーソナルコンピュータに保管されてある如何わしいデータを削除しなければ。

ふう。
これで大丈夫だ。
明日死んでも悲惨な目には合わない。





生きてた!!!

こんなラッキーが続くのに生きてた!!!



そしてまた社員さんに怒られる。
あ、今日は12回で済んだ。
なんでこんなにツイているんだ。




「あの、もしよかったら今度ご飯でも行きませんか」
「へ?」
また声が裏返ってしまった。
「いろいろバイトのことで相談したくて」
大きな瞳をパチクリさせてそう言う。
やっぱりそっけなく
「あ、空いてる日で良ければいいよ」
空いてるも何も友達も彼女もいないからバイト以外空き空きだよ、もう空地だよ。
とか意味の分からないことを思っている自分の目の前で
「やったー」
ってぶりっ子してるあたり。

かわいいよ!かわいいよ!愛を可にして可愛いよ!!




今度こそ死ぬな。
明日死ぬな。
これまで生きてきてこんなにラッキーが重なったことはない。
もうわかってますよ。
神様、最後にありがとう。
十分ですよ。
今までのみじめな人生を帳消しにできるくらい素晴らしい数日間でした。



生きてる!
次の日も生きてる!



「今日は来てくれてありがとうございます。無理言っちゃって」
「い、いやちょうど空いてたからさ、全然気にしないで」
ド理想の女の子が目の前でご飯食べてる。
ド理想の女の子が目の前でご飯食べてる。
大事なことなので二回言いましたよ。

「なんだか一緒にいると落ち着きます」
「あ、ああ」
心の中はテンションが上がってるけど幸せ慣れしてないからもどかしい。

「今度はデートしてくださいね」





お葬式って結構費用かかるんだよな。
質素でいい、もうむしろお葬式なんてしなくていいから。
故人を偲ぶひとなんていないからオッケーだよ。
こんなにいい思いさせてもらって
もうこれ以上何も要りませんから。





生きてる!
今日も生きてた!
え?大丈夫か?
幸福バランスがおかしいよ。
地獄に行きたくないよ、おねがいします。

「ここ、来てみたかったんです」
動物園なんて幼稚園以来か。まあ独り身じゃ来ることもないもんな。
「見てください!キリンでっかーい」
「あ、ライオンがこっちに来る!」
「あのクマさん全然動かないね」
いちいち笑顔で話しかけてくる。なんて可愛いんだ、チクショー。





いいよ、もう死んでいい。

でもなんとなく幸せな日々が続いて
なぜか不安で不安でたまらなかった。






「好きです、付き合ってください」
「へ?」

ついに爆発してしまった。





「おかしいよ、絶対におかしいってどうして自分のこと好きになるの?どこがいいの?仕事もできないしろくに会話もできないし、君のことだってエロい目で見てたし、何にもいいところないんだよ。君のこと幸せに出来ないし、不幸にさせるかもしれない。根っからのダメ人間だよ。それか何か目的があるの?お金目当て?お金なんて持ってないよ。それか、ああ、そうかデート商法とかそういうやつ?だめだよ自分疑り深いからそんなのひっかからないよ。だっておかしいよ、こんなに可愛くて性格もいい子がこんな自分に」




「ひどい!私は本当にあなたが好きだったんです。レジ操作優しく教えてくれましたよね。いつも控えめで私の話よく聞いてくれましたよね。バイトで困ったら助けてくれましたよね。今日もこうやって私の行きたかったところに付き合ってくれてるじゃないですか。十分ですよ、私すごく嬉しかったのに。そんな風に思ってたなんて最低!もう嫌いです!」










目が覚めた。
生きている。
不安もない。

プラマイゼロだ。
これで安心して明日から暮らせる。

コメント(1)

たまに幸せなことがあると素直に信じられないんですよね
すごく分かりますあせあせ

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