或る晴れた春の日曜日、渋谷の雑踏はサンデーブランチの憂鬱を物ともせず、喧騒と雑踏、街頭スクリーン或いは街宣車が垂れ流す雑音に溢れていた。没個性・同意性の彼女達は病んだ表情で群れる、暴力・威圧感に満ちた彼らはトんだ表情でハイエナのように群れる。それでも新宿よりも幾ばくか健全というか何処か爽やかな感じがするのは、唐十郎かその他の誰か曰く「新宿には過去の危なかった時代の名残があり、渋谷にはそれが無い」とか。 サンキスト・オレンジのような太陽が照りつけるビル群。気温は26℃、ダルそうなチェーンのイタリアン・レストランで無表情に茹だる暑さに茹るパスタも何処か鬱屈そうな表情。私は喧騒に満ちたBKやFK、Mといったファーストフードショップにて、無機質な鈍色の箱から下水に絶えず流されるジンジャエールやコカ・コーラと業務用の氷が哀れに見えたので、百年後、籠女のトマトジュースを頼んだのだ。けれど、4分の1くらいが透き通ったグラスにはやはりアイスキューブが幾らか投入されていたので、右隣の年齢不詳ゴーストドックはhouse of pain get down bring it on jump around,jump around babyと心の中で呟き、決して美味いとはいえない氷をかみ砕き、臓腑に刺激を与えた。 ところで左隣の何事にも自慢げな年老いた「彼」は胸をはってバーテンに告げたスクリュードライバーがウオッカベースということが判明したからか、ちじこまって代わりにジントニックを注文していたぜ。